毎年1月末にスイスのダボスで開催される世界経済フォーラムの年次会合、
通称「ダボス会議」。

この会議の中で、カナダを拠点とするメディア企業のCorporate Knights社
から、毎年「世界で最も持続可能性のある企業100社」
“Global 100 Most Sustainable Corporations in the World” (Global 100)
が発表されています。

選定企業は上場企業に限られますが、
持続可能性という新たな指標を作り出そうとしているのが特徴的です。

そして、今日、2011年の100社が発表されました。

http://www.global100.org/

■企業ランキング

1位 スタットオイル(ノルウェー)
2位 ジョンソン・アンド・ジョンソン(アメリカ)
3位 ノボザイムズ(デンマーク)
4位 ノキア(フィンランド)
5位 ユミコア(ベルギー)
6位 インテル(アメリカ)
7位 アストラゼネカ(イギリス)
8位 クレディ・アグリコル(フランス)
9位 ストアブランド(ノルウェー)
10位 ダンスク・バンク(デンマーク)

国別の社数ランキングは、

1位 日本 (19社)
2位 アメリカ (13社)
3位 イギリス (11社)
4位 カナダ (8社)
5位 オーストラリア (6社)
6位 スイス (5社)
6位 フランス (5社)
8位 デンマーク (4社)
8位 フィンランド (4社)
10位 ブラジル (3社)

日本がダントツ1位を飾りました。

ちなみに、日本でランクインした企業は、

14位 日東電工
23位 イオン
24位 T&Dホールディングス
30位 ソニー
32位 商船三井
35位 三菱重工業
49位 東京ガス
53位 大和ハウス工業
54位 日本郵船
59位 ヤマハ発動機
69位 NTTドコモ
70位 コニカミノルタ
71位 リコー
72位 東京エレクトロン
74位 大正製薬
79位 NEC
80位 パナソニック
81位 日産自動車
82位 トヨタ自動車

製造業を中心に、多様な業界から選ばれています。

■評価基準

この「世界で最も持続可能な企業100社」はとてもユニークな評価基準で
ランキングをつけています。

エネルギー生産性: 売上 ÷ 直接的および間接的なエネルギー消費量
炭素生産性: 売上 ÷ 二酸化炭素排出量
水生産性: 売上 ÷ 水使用量
ゴミ生産性: 売上 ÷ ゴミ排出量
リーダーシップ多様性: 女性の役員割合
CEO報酬-従業員平均報酬比率
安全生産性: 売上 ÷ 従業員傷害事故×5万ドル+死亡者数×100万ドル
持続可能性関与: 持続可能性に責任を持つ役員がいるか否か
イノベーション能力: R&D投資 ÷ 売上
透明性: 持続可能性に関連するデータの公開度合い

持続可能性を定量的に「正しく」表現することを求めて、
これらの指標は年々変化しています。
上記の指標だけでは、とても環境社会の持続可能性を網羅できているとは
言えませんし、経済の持続可能性が追求されていないことも難点です。

しかしながら、企業が今後取り組んでいく持続可能性向上施策にとって、
このようなランキングが後押ししてくることはプラスに作用します。

持続可能性という観点から、ダボス会議への批判は多くありますし、
ランキング発表だけでは決して十分ではありませんが、
こうしたひとつひとつの積み重ねが持続可能性を高めていくのだと信じています。

※僕の別ブログである「アメリカ・サンダーバードMBA留学ブログ」から転載しました。

留学中のサンダーバード国際経営大学院で、
環境コンサルタント企業 Global Ideas社
創業者のひとりMark D. Wilhelm氏の講演を聴くことができました。

彼らが環境コンサルタントとして取り組んでいるのは、「建設」の分野です。
現在、CO2をもっとも排出している分野は、交通輸送ではなく、建設です。
日本でも、全CO2排出量における建設(資材、施工、運用)が占める割合は43%。

CO2排出量を削減するためには、「建設」のエネルギー効率をあげることが
とても重要なのです。

Global Ideas社が取り組んでいるのは、以下の内容です。

‐ エネルギー効率の高い建設素材、部材、機器の選定
‐ 無駄の少ないエネルギー循環、水循環のデザイン
‐ 都市環境の改善に寄与する外観や土地利用のデザイン
‐ 建築物寿命の長い建設設計、運用の提案
‐ 廃棄物の少ない施工プロセスの設計
‐ 企業等への環境ポリシー策定コンサルティング

現在のメイン顧客は、大学、高校、州政府、市政府、ビジネスセンター等
大型施設の運用者。
彼らのコンサルティングを通じて、
建築費用や運用費用が50%以上削減できています。

彼らは、環境保護の大切さを訴えるだけでなく、それをコスト削減という
実利に結び付けることで、クライアントの獲得に成功しています。
その中で、Mark氏が強調していたのは、
今後のファイシリティー管理者は、年単位の購買コストの削減だけでなく、
‐ 施設寿命をいかに長くするか
‐ 運用コスト(人件費も含めて)をいかに削減するか
を真剣に考えることで、より多くのコスト削減が可能となる、
ということです。

Global Ideas社は、この動きを少しでも社会に普及させるため、
同時に環境保護教育にも力を入れています。
具体的には、オンラインで教育プログラムを提供したり、
セミナーの開催、書籍の出版なども行っています。

彼らの行動の源泉は、CO2排出量をなんとか早く減らしたい、という使命感です。
環境ビジネスは、産業廃棄物処理業以外、ビジネスになりにくいと言われていますが、
ビジネスの実利と結び付けることで、チャンスはたくさんありそうです。

火力、水力、原子力。日本でおなじみのフレーズです。
世界では今、再生可能エネルギーの生産量を増やす動きが急ピッチで進んでいます。

世界でのエネルギー消費量を見てみると、
依然として化石燃料に頼っていることがわかります。

Renewables 2010 Global Status Report

円グラフ上では、再生可能エネルギーは19%を占めているように見えますが、
この中には、伝統的バイオマスと呼ばれる焚き木や薪、糞尿による発電や
水力発電なども含まれています。

風力や太陽光発電など狭義の再生可能エネルギーが占める割合は、
棒グラフの上から3つ目での合計たったの3%。

今後、インドや中国でのエネルギー需要が爆発的に高まっていく中、
再生可能エネルギーや原子力発電の需要は急速に高まっています。
実際、化石燃料の価格は昨今の経済不況にかかわらず、
1バレル$80という高水準を記録しています。

そこで昨今相次いでいるのが、太陽光や風力発電の大プラント建設です。
日本の感覚だと、風力発電や太陽光発電というと、
ときどき見かける数台の風車や、屋根の上のソーラーパネルを想像しがちですが、
世界で今推進されているものは、規模が全く異なります。

例えば、太陽光発電は、こんな規模です。

Largest Solar Plant in Europe Set to Open in Italy

これはヨーロッパ最大の太陽光発電プラントでイタリアに2010年に建設されました。

アメリカのファースト・ソーラー社は、今年に入った1/5に、
中国の原子力発電事業大手の中国広東核電集団(China Guangdong Nuclear
Power Corp、CGNPC)と共同で、モンゴルの砂漠に30メガワットの大型太陽光
発電プラントを建設する計画を発表しています。

2010年に入って太陽光発電事業が相次ぐ理由は大きく2つあります。
 1.莫大な政府補助金
 2.ソーラーパネルの価格の下落

まず、莫大な政府補助金については、
アメリカのオバマ政権のグリーン・ニューディール政策が有名です。
現在、アメリカでは太陽光発電を建設した事業者に、
連邦政府や州などから補助金が得られ、
その額はなんと初期投資の半分以上にも達することがあります。

中国などエネルギー需要が増加する新興国でも、資源高の高騰に備え、
積極的に再生可能エネルギーへの投資に力を入れています。
太陽光発電は、従来「不毛地帯」とし厄介者であった砂漠地帯が、
エネルギーを生む土地に変えることができ、
21世紀の新たな錬金術として注目が集まっています。

ソーラーパネルの価格下落は、アメリカのアリゾナ州テンピ市に本社を置く、
ファースト・ソーラー社の貢献が大きいです。

ファースト・ソーラー社は、従来のシリコン結晶を素材としたソーラーパネル
ではなく、薄型フィルムを用いる新しい技術開発に成功しました。
この薄型フィルム(Thin Flim)タイプのものは、発電効率は以前より低いの
ですが、製造コストが格段に安く、原子力や火力にも対抗できる安さで、
世界の注目を集めました。

2010年10月にアメリカとベトナムに合計500万メガワット分の需要に対応できる
ソーラーパネルの大型生産工場の建設を発表しています。
こうして、ソーラーパネルの需要が高まる中、規模の経済も働き、
さらにソーラーパネルの価格は下がり続けているのです。

風力発電のプラントも大規模です。

これは、アメリカのカリフォルニア州にある風力発電プラントです。
このような大規模なプラントがアメリカにはいくつもあります。
広大な土地が資源となり、新たなエネルギー工場となっています。

世界のエネルギー需要が伸びていく中、
新たなエネルギー生産の動きは加速しつつあります。

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