日本で最近話題になり始めた、
「メガソーラー」と呼ばれるような大規模太陽光発電プラント。

日本の電力企業10社が加盟する電気事業連合会は、
2020年度までに全国約30地点(電力会社10社合計)で、
約140MWの太陽光発電設備を設置する「メガソーラー発電」計画を公表しています。

その中でも、最大の規模を計画しているのが東京電力。
東日本大震災より以前、2008年10月に、20MWのメガソーラーを川崎市と
協働で推進することに合意。
そして、2011年8月12日に、第1号となる「浮島太陽光発電所」(7MW)の運転開始
を開始しました。(ニュースはコチラ

また、ソフトバンク社は、2011年の5月に、
日本全国約10か所に2MW規模のメガソーラーを建設する構想を発表。
7月には全国の知事が参加する「自然エネルギー協議会」を発足。
今日現在で、北海道、岩手県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、
埼玉県、神奈川県、富山県、山梨県、長野県、静岡県、愛知県、三重県、
滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、徳島県、奈良県、
島根県、岡山県、広島県、山口県、香川県、愛媛県、高知県、佐賀県、
長崎県、熊本県、大分県、宮崎県の計34道府県が参加しています。

一方で、太陽光発電の高コスト体質を理由に、
メガソーラー計画に批判的な意見もあります。

そこで、今回、世界のメガソーラーの現状を見ていきたいと思います。

Solar Plazaという団体が、
世界の太陽光発電プラント(Solar Photovoltaic Plant)の
ランキングを発表してくれています。

太陽光発電所名 最大出力(MW) 発電所所有者 発電所所有者の業態 発電所建設企業 太陽光発電パネルメーカー パネルタイプ 完成年
1 カナダ Sarnia 92 Enbridge エネルギー企業 First Solar First Solar CdTe 2010
2 イタリア Montalto di Castro 84 Sunpower 太陽光発電パネルメーカー Sunpower, Sunray Sunpower c-Si 2011
3 ドイツ Finsterwalde I, II & III 83 Q-Cells 太陽光発電パネルメーカー Q-Cells Q-Cells c-Si 2010
4 イタリア Rovigo 70 First Reserve プライベート・エクイティ企業 SunEdison Canadian Solar a.o. c-Si 2010
5 スペイン Olmedilla de Alarcón 60 Nobesol Levante 太陽光発電プラント建設・売電企業 Nobesol Levante Siliken a.o. c-Si 2008
6 米国 Boulder City (Copper Mountain) 55 Sempra Generation エネルギー企業 First Solar First Solar CdTe 2010
7 ドイツ Strasskirchen 53 Q-Cells 太陽光発電パネルメーカー Q-Cells Q-Cells c-Si 2009
8 ドイツ Lieberose 53 Juwi Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 Juwi Solar First Solar CdTe 2009
9 スペイン Puertollano I 52 Renovalia Energy 太陽光・風力発電売電企業 Renovalia Energy Suntech, Solaria c-Si 2008
10 ポルトガル Moura (Amareleja) 46 Acciona Solar 持続可能(再生可能エネルギー、インフラ、水)施設デベロッパー Acciona Solar Yingli Solar c-Si 2008
11 ドイツ Köthen 45 Deutsche Eco 太陽光発電プラント建設・売電企業 Deutsche Eco BP Solar c-Si 2011
12 イタリア Cellino San Marco 43 AES Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 AES Solar First Solar CdTe 2010
13 ドイツ Waldpolenz 40 Juwi Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 Juwi Solar First Solar CdTe 2008
14 チェコ Ralsko 38 CEZ Group エネルギー企業 CEZ Group c-Si 2010
15 イタリア Alfonsine 36 Reno Solar, Tozzi Holding 太陽光発電プラント建設・売電企業 Reno Solar, Tozzi Holding
16 チェコ Vepřek Solar Park 35 Decci 不明 Decci PhonoSolar c-Si 2010
17 スペイン La Magascona & Magasquilla 35 Fotowatio Renewable Ventures 太陽光発電プラント建設・売電企業 Fotowatio Renewable Ventures Suntech c-Si 2008
18 スペイン Arnedo 34 T-Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 T-Solar 2008
19 ドイツ Reckahn 32 Belectric 太陽光発電プラント建設・売電企業 Belectric First Solar CdTe 2010
20 フランス Le Gabardan 26 EDF Energies Nouvelles 太陽光・風力発電プラント建設・売電企業 EDF Energies Nouvelles
21 ドイツ Ernsthof 34 Relatio 太陽光発電プラント建設・売電企業 Relatio LDK Solar c-Si 2010
22 スペイン Dulcinea 32 Avanzalia 太陽光・風力発電プラント建設・売電企業 Avanzalia Kyocera, Suntech c-Si 2010
23 イタリア Sant’ Alberto 35
24 スペイン Alamo (I, II, III, IV) 34 Gestamp 太陽光発電プラント建設・売電企業 Gestamp Trina Solar c-Si 2010
25 ドイツ Tutow I, II 31 Juwi Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 Juwi Solar, RIO Energie First Solar CdTe 2010
26 米国 Cimarron Solar Facility 30 Tri-State エネルギー企業 First Solar First Solar CdTe 2010
27 スペイン SPEX Merida/Don Alvaro 30 Deutsche Bank, ecoEnergías 銀行, 太陽光発電プラント建設・売電企業 Deutsche Bank, ecoEnergías Solarworld c-Si 2008
28 チェコ Ševětín 30 CEZ Group 太陽光発電プラント建設・売電企業 CEZ Group c-Si 2010
29 ドイツ Helmeringen 26 Gehrlicher Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 Gehrlicher Solar First Solar CdTe 2010
30 米国 DeSoto 25 Floride Power & Light エネルギー企業 Floride Power & Light Sunpower c-Si 2009

メガソーラー・トップ30の場所


より大きな地図で 世界の太陽光発電プラント最大出力ランキングトップ30 を表示

ここから、読み取れるものを、いくつかまとめていきたいと思います。

1. メガソーラーは、ヨーロッパ諸国に集中。

上記の30メガソーラーを国別にまとめてみると、

ドイツ  9
スペイン 7
イタリア 5
チェコ 3
米国 3
フランス 1
ポルトガル 1
カナダ 1

となり、ヨーロッパ諸国が86.7%を占めています。

実際に、ドイツ、イタリア、スペイン、チェコでは、
2007年前後から急速に太陽光発電での発電量が上昇しています。


※出所:”Photovoltaic Power Systems Programme”, IEA-PVPS, 2010
     and “Top 30 Solar PV Markets”, Solar Plaza, 2011

この背景には、
固定価格買取り制度」(Feed-in-Tariff)の存在が挙げられます。
ドイツでは2000年、チェコとイタリアでは2005年、スペインでは2007年から開始された、
固定価格買い取り制度により、太陽光発電所で発電された電力の販売価格が上昇し、
太陽光発電所運営の収益性が良くなりました。

その結果、メガソーラーの建設も進んできています。

日本でも、2011年8月26日に固定価格買い取り制度を定めた、
「再生可能エネルギー特別措置法」が成立しました。
この法律による影響については、あらためてブログでとりあげたいと思っています。
 

2. 専業者中心のヨーロッパとエネルギー会社主導の北米

ヨーロッパでは、「太陽光発電プラント建設・売電企業」が
メガソーラーの事業者となる傾向があるのに対し、
北米では、「エネルギー企業」がメガソーラー事業を牽引しています。

これは、大規模な固定価格買い取り制度や、再生可能エネルギー比率を高める
法律が整備されているヨーロッパでは、
太陽光や再生可能エネルギーを専業とした新興企業の設立を後押ししているのに対し、
まだ整備が進んでいない北米では、
資本力のある既存のエネルギー企業が、将来に向けての事業多角化や、
社会に対するブランド戦略の意味合いで、太陽光発電に取り組んでいるという違いが、
挙げられます。

また、ヨーロッパ、北米双方で、太陽光発電パネルメーカーによる、
メガソーラー運営も最近の大きな流れの一つです。
こちらについては、パネルメーカーが、製造、建設、運営までの、
一連のサプライチェーンを、垂直統合し、
利益率の上昇や、PDCAサイクルの高速回転を目指すという、
戦略上の要因が挙げられます。
 

3. 農地や荒れ地を中心とした立地

メガソーラーの立地については、
地方都市近郊の農地や荒れ地での建設が中心です。
洋上や山間部に設置されているケースは、
トップ30の中にはありません。

また、既存の地方空港の空き地を利用したメガソーラーの建設も、
ヨーロッパを中心に見られます。
 

4. 金融関係資本の投資が加速

ランキング18位のT-Solarに対し、
プライベートエクイティ世界大手のKKRがドイツの再保険会社Munich Reと共同で
49%の株式を買収したり、(ニュースはコチラ
ランキング30位のFPLが、2億5000万ドルの社債発行に成功したりと、
金融関連の資本が、メガソーラーにも集まってきています。(ニュースはコチラ
 

冒頭で紹介した、日本の電気事業連合会の14MWメガソーラー構想は、
これらの世界レベルのメガソーラーを見ると、規模が霞んで見えます。

また、ソフトバンクが打ち出している約200MW規模の構想については、
すでに、ヨーロッパ諸国では、専業メーカーにより実現されている規模であり、
規模の観点では、決して「絵空事」ではありません。

日本の太陽光発電については、
再生可能エネルギーを推進するという考えでは一致していても、
各論の推進の場面で、高コストを理由に反対する声があります。

であるならば、ポイントは、
「高コストだからダメ」で終わらせるのではなく、
いかに発電コストを削減していけるかにあるのではないでしょうか。

そのための、太陽光パネルのエネルギー変換効率の向上、
太陽光パネルおよびその部品の製造技術の向上、
低コストオペレーションのための取組の推進、
そして、その技術革新を支えるための官民資金の呼び込み。

こうした会話や取組こそが今、必要なんだと思います。

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