8月30日、米国カリフォルニア州に本社を置く、
太陽光発電パネルメーカーのSolyndra社が、連邦倒産法第11章に基づく
申請を行い、倒産しました。
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Solyndra社は、CIGS型薄膜太陽光パネルメーカーとして2005年に創業。
クリーンエネルギーの担い手として、オバマ大統領からも絶賛されていました。

ベンチャー・キャピタルから10億ドル以上の資金を調達。
さらに米国エネルギー省からも「債務保証」を受け、
仮に債務不履行となった場合に、エネルギー省が負担をする契約も
とりつけていました。

2009年には、1億ドルの売上を記録しましたが、巨額の債務は山積みのままで、
エネルギー省より「債務保証」に基づき、5億3500万ドルの支払いを受けます。

しかしながら、新たな産業促進を目指したエネルギー省の政策もむなしく、
2年後に倒産。1000人以上の従業員が職を失いました。
また、血税5億3500万ドルも返済はされず、ベンチャー・キャピタルも
10億ドル以上の損失を蒙りました。

このため、アメリカでは、太陽光発電に対する政府補助に対して、
批判的な意見が巻き起こり始めました。

その中で、サステイナビリティ関連のニュースを報道するメディア、
TriplePunditは、面白い議論を展開しています。
 

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未来への教訓

Q. 太陽光発電関連企業は落ち目にあるのか?
A. ノー。世界を見渡せば、この業界は激しい競争にある。太陽光発電パネルの価格は
 著しく下がってきている。今回の問題は、Sokyndraが競争に生き残れなかったという
 だけだ。

Q. ベンチャー・キャピタルはクリーンテクノロジー新興企業への投資をやめるべきか?
A. ノー。むしろ逆で、試行錯誤プロセスは市場メカニズムだ。新興企業は失敗確率の
 高い高リスクビジネスだ。ベンチャー・キャピタルはそのリスクを心得ておくべきだ。

Q. 米国連邦政府はクリーンテクノロジー新興企業への投資をやめるべきか?
A. イエス。政府は債務をどんどん膨らましている。適切な歳出を維持することすら
 できていない。政府は、ベンチャー・キャピタルのような高いリスクをとる余裕は
 ない。これが今回の真の教訓だ。
 

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新しい技術は、競争原理の中で育ってきます。
競争原理の中では、勝者も生まれれば、敗者も生まれます。
上記のTriplePunditの教訓には、僕は合点がいきます。

6/17~20にかけて、各紙・メディアが一斉に、
「餃子の王将が電気を使わない自動ドアの導入を決めた」
という内容を報道しました。

産経新聞 「王将フードサービス、電気使わない自動ドア設置へ
日経新聞 「自動ドア、電気使わず開閉 餃子の王将が導入
読売新聞 「餃子の王将に足で動かす自動ドア…電気代も節約

報道によると、餃子の王将の今回の導入背景は、

関西電力が15%の節電要請を行うなど、近畿でも電力不足が深刻化していることから、節電の秘策とする考えだ。手始めに7月に開店する吹田春日店(大阪府吹田市)と金沢東店(金沢市)に設置し、順次拡大する。

ということのようです。

この報道で、僕が一番気になったのは、
「電気を使わない自動ドアとは一体なんなのか?」
「どこのメーカーが開発したのか?」という点です。

そこで、開発メーカーについて調べてみました。

今回報じられている、電気不要の自動ドアを開発したのは、
会津若松市にある株式会社有紀という建材メーカーです。

資本金は4000万円とメーカーとしては小規模で、
従業員はパートの方も含めて全部で8名。
現在も社長である橋本保さんが、2001年に創業しました。

株式会社有紀は、自動ドア専業メーカーではありません。
事業の柱は、地元の資源である「会津桐」「会津吉祥杉」を活用した
建材の設計・製造・販売。
「電気を使わない自動ドア」は有紀社にとっての新商品です。
商品名は「オートドア・ゼロ」と言います。
日本で特許を取得した後、今年の2月にはアメリカの特許も獲得。

また、餃子の王将は、「オートドア・ゼロ」の最初の導入企業ではありません。
すでに、会津若松市立北会津中学校(保健室)、
常磐自動車道 湯ノ岳PA、名神高速道路 大津SAに導入されています。
しかし、今回は、日本有数の飲食店への導入が決定したということで、
大々的に報道されたようです。

「オートドア・ゼロ」の仕組みは、ホームページでも多くは紹介されていませんが、
ドアの手間に「踏み台」を置き、その踏み台が体重で下に押されることで、
歯車が回り、ドアを開けることができるようです。

電気を使わないため、節電効果が期待できるだけでなく、
電磁場などを発生せず、音も静かというメリットや、
停電時にも稼働するというメリットがあります。

今回の導入の話には、いくつかの素敵な点があります。
・地方の小規模メーカーの技術が注目を集めている
・震災で大きなダメージを受けた福島県の企業の朗報となる
・エネルギー不足が今後懸念される中で、節電にとっての一助となる
・大企業が導入を決めたことで、将来の技術開発にとってのテストケースにできる

餃子の王将において、今後他店にも導入を拡大するかどうかについては、
いくつかの基準があると考えられます。

・子供や大柄な人などの個々の体重差にスムーズに対応できるか
・ゆっくりと入ってくる人、急いで入ってくる人などにスムーズに対応できるか
・出口と入口で一斉に踏み台を踏んだ時、混乱しないか
・街の振動などの他の影響によって誤作動を起こさないか
・頻繁な開閉に耐えられる耐久性はあるか
・冷暖房効率などを考えた場合に、スムーズにドアが閉まるか
・故障時のメンテナンスや修理は迅速に対応できるか

これらは、他の商用施設等に導入される際には重要な確認ポイントです。
有紀社にとっては、実導入の結果を踏まえ、商品の向上が見込めます。
また、ここでの実証事例を基に、他の企業でも導入の検討が進むと思われます。

また、将来の大規模受注に備え、有紀社の製造能力の拡大も注目されます。
現在の従業員8名体制では、おそらく大規模受注には対応できません。
有紀社が特許をもっているため、自社工場への大規模設備投資を行うか、
他社へのライセンス供与をするのか等々です。

餃子の王将の試みは、電力不足に対する事業リスクを軽減するという、
サステイナブルビジネス戦略ととらえることができます。
「オートドア・ゼロ」のように、企業の持続可能ビジネス戦略を推進する技術は、
大企業だけでなく、様々な企業が今後支えていくのだと思います。