※僕の別ブログである「アメリカ・サンダーバードMBA留学ブログ」から転載しました。

留学中のサンダーバード国際経営大学院で、
環境コンサルタント企業 Global Ideas社
創業者のひとりMark D. Wilhelm氏の講演を聴くことができました。

彼らが環境コンサルタントとして取り組んでいるのは、「建設」の分野です。
現在、CO2をもっとも排出している分野は、交通輸送ではなく、建設です。
日本でも、全CO2排出量における建設(資材、施工、運用)が占める割合は43%。

CO2排出量を削減するためには、「建設」のエネルギー効率をあげることが
とても重要なのです。

Global Ideas社が取り組んでいるのは、以下の内容です。

‐ エネルギー効率の高い建設素材、部材、機器の選定
‐ 無駄の少ないエネルギー循環、水循環のデザイン
‐ 都市環境の改善に寄与する外観や土地利用のデザイン
‐ 建築物寿命の長い建設設計、運用の提案
‐ 廃棄物の少ない施工プロセスの設計
‐ 企業等への環境ポリシー策定コンサルティング

現在のメイン顧客は、大学、高校、州政府、市政府、ビジネスセンター等
大型施設の運用者。
彼らのコンサルティングを通じて、
建築費用や運用費用が50%以上削減できています。

彼らは、環境保護の大切さを訴えるだけでなく、それをコスト削減という
実利に結び付けることで、クライアントの獲得に成功しています。
その中で、Mark氏が強調していたのは、
今後のファイシリティー管理者は、年単位の購買コストの削減だけでなく、
‐ 施設寿命をいかに長くするか
‐ 運用コスト(人件費も含めて)をいかに削減するか
を真剣に考えることで、より多くのコスト削減が可能となる、
ということです。

Global Ideas社は、この動きを少しでも社会に普及させるため、
同時に環境保護教育にも力を入れています。
具体的には、オンラインで教育プログラムを提供したり、
セミナーの開催、書籍の出版なども行っています。

彼らの行動の源泉は、CO2排出量をなんとか早く減らしたい、という使命感です。
環境ビジネスは、産業廃棄物処理業以外、ビジネスになりにくいと言われていますが、
ビジネスの実利と結び付けることで、チャンスはたくさんありそうです。

ここ数年、中央政府も地方政府も大きく税収が落ち込んでいます。
これは日本だけでなく、アメリカでも同様です。

昨日、Alliance of Arizona Non-Profitというアリゾナ州のNPO連合会から
届いたメールニュースに、アリゾナ州の苦境が報じられていました。

アリゾナ州では、全米の中でも大きく税収が落ち込み、
来年に、今年度と同様の行政サービスを提供しようとすると、
約14億ドル(約1200億円)不足してしまうということです。

アリゾナ州知事は不足分を支出の削減で乗り切る案を示し、
特に、NPOなどへの支援を削減する姿勢を示しました。

さらに、今後の税収不足を補うため、
これまで税優遇されていたNPOなどに対し、
課税を検討していることも報じられていました。

政府がNPOへの支援を削減することは、社会保障の観点からみて、
喜ばしくない方針のようにも見えますが、そうともいえません。
NPOへの支援を削減しなければ、
政府は他の行政サービスを削減せざるをえず、
結果的に社会的なサービスが削られることになるからです。

この状況に対してアリゾナNPO連合会が示した姿勢は、素晴らしいものでした。
政府からの支援削減に対して抗議をしてもよさそうなものですが、
そうではなく、加盟NPOに対して冷静に、
財政とNPOの持続可能性が密接に結びついていること、
自分たちの活動を継続していくためには、
自分たちが変わらなくてはいけないこと、を呼び掛け、
来る集会では活動の持続可能性を高めていく道を模索していくことを
議題にすることを発表していました。

NPOなど社会的セクターの多くは、現在政府からの財源に頼っています。
しかし、政府自体が資金難に陥っていく中で、
政府とともにNPOの経営自体も変わっていかなくてはいけません。

このような状況に迫られているのは、アリゾナ州以外にも世界にたくさんあります。
自立した社会的セクターの構築を一緒に目指していきたいと思います。