6月24日に公布・施行された東日本大震災復興基本法に基づき、東日本大震災復興対策本部が設置されました。

さらに、同日、東日本大震災復興対策本部令(政令182号、全文後述)が公布され、
具体的な組織運営の詳細が定められました。

震災復興を担う、政府の体制は以下の通りとなっています。(敬称略)

東日本大震災復興対策本部

本部長:  菅直人(内閣総理大臣)
副本部長: 枝野幸男(内閣官房長官)
      松本龍→平野達男(復興対策担当大臣)
本部員:  片山善博(総務大臣・内閣府特命担当大臣)
      江田五月(法務大臣・環境大臣)
      松本剛明(外務大臣)
      野田佳彦(財務大臣)
      髙木義明(文部科学大臣)
      細川律夫(厚生労働大臣)
      鹿野道彦(農林水産大臣)
      海江田万里(経済産業大臣)
      大畠章宏(国土交通大臣)
      北澤俊美(防衛大臣)
      中野寛成(国家公安委員会委員長)
      自見庄三郎(内閣府特命担当大臣)
      細野豪志(内閣府特命担当大臣)
      与謝野馨(内閣府特命担当大臣)
      玄葉光一郎(内閣府特命担当大臣)
      仙谷由人(内閣官房副長官)
      福山哲郎(内閣官房副長官)
      瀧野欣彌(内閣官房副長官)
      津川祥吾(岩手現地対策本部長・国土交通大臣政務官)
      末松義規(宮城現地対策本部長・内閣府副大臣)
      吉田泉(福島現地対策本部長・財務大臣政務官)
      山口壯(内閣府副大臣・対策本部本部長補佐)
      阿久津幸彦(内閣府大臣政務官・対策本部本部長補佐)
      松下忠洋(経済産業副大臣)
      浜田和幸(総務大臣政務官)
幹事:   山本庸幸(内閣法制次長)
      浜野潤(内閣府事務次官)
      安藤隆春(警察庁長官)
      三国谷勝範(金融庁長官)
      福嶋浩彦(消費者庁長官)
      岡本保(総務事務次官)
      大野恒太郎(法務事務次官)
      佐々江賢一郎(外務事務次官)
      勝栄二郎(財務事務次官)
      清水潔(文部科学事務次官)
      阿曽沼慎司(厚生労働事務次官)
      町田勝弘(農林水産事務次官)
      松永和夫(経済産業事務次官)
      竹歳誠(国土交通事務次官)
      南川秀樹(環境事務次官)
      中江公人(防衛事務次官)
事務局長: 峰久幸義(内閣官房内閣審議官・元国土交通事務次官)
事務局次長:岡本全勝(内閣官房内閣審議官・前内閣府大臣官房審議官)
      上田健(内閣官房内閣審議官・前国土交通省大臣官房審議官)
      佐川宣寿(内閣官房内閣審議官・前財務省大臣官房審議官)
事務局員: 参事官(25人以内)を含め62人

岩手現地対策本部

本部長:  津川祥吾(国土交通大臣政務官)
本部員:  関係地方行政機関の長
事務局長: 井上明(内閣官房内閣審議官・前水産庁資源管理部長)
事務局員: 常駐4人、非常勤20人

宮城現地対策本部

本部長:  末松義規(内閣府副大臣)
本部員:  関係地方行政機関の長
事務局長: 沢田和宏(内閣官房内閣審議官・前国土交通省東北地方整備局副局長)
事務局員: 常駐4人、非常勤20人

福島現地対策本部

本部長:  吉田泉(財務大臣政務官)
本部員:  関係地方行政機関の長
事務局長: 諸橋省明(内閣官房内閣審議官・前総務省自治財政局公営企業課長)
事務局員: 常駐4人、非常勤20人

東日本大震災復興構想会議

議長:   五百籏頭真(防衛大学校長、神戸大学名誉教授)
議長代理: 安藤忠雄(建築家、東京大学名誉教授)
      御厨貴(東京大学教授)
特別顧問: 梅原猛(哲学者)
委員:   赤坂憲雄(学習院大学教授、福島県立博物館館長)
      内館牧子(脚本家)
      大西隆(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授)
      河田恵昭(関西大学社会安全学部学部長・教授、阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター長)
      玄侑宗久(臨済宗福聚寺住職、作家)
      佐藤雄平(福島県知事)
      清家篤(慶應義塾塾長)
      高成田享(仙台大学教授)
      達増拓也(岩手県知事) 
      中鉢良治(ソニー株式会社代表執行役副会長)
      橋本五郎(読売新聞特別編集委員)
      村井嘉浩(宮城県知事)

東日本大震災復興構想会議・専門委員会

部会長:  飯尾潤(政策研究大学院大学教授))
部会長代理:森民夫(全国市長会会長、長岡市長)
専門委員: 五十嵐敬喜(法政大学法学部教授)
      池田昌弘(東北関東大震災・共同支援ネットワーク事務局長、
       特定非営利活動法人全国コミュニティライフサポートセンター理事長)
      今村文彦(東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センター教授)
      植田和弘(京都大学大学院経済学研究科教授)
      大武健一郎(大塚ホールディングス株式会社代表取締役副会長)
      玄田有史(東京大学社会科学研究所教授)
      河野龍太郎(BNPパリバ証券経済調査本部長・チーフエコノミスト)
      西郷真理子(都市計画家)
      佐々木経世(イーソリューションズ株式会社代表取締役社長)
      荘林幹太郎(学習院女子大学教授)
      白波瀬佐和子(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
      神成淳司(慶応義塾大学環境情報学部准教授)
      竹村真一(京都造形芸術大学教授)
      團野久茂(日本労働組合総連合会副事務局長)
      馬場治(東京海洋大学海洋科学部教授)
      広田純一(岩手大学農学部共生環境課程学系教授)
      藻谷浩介(株式会社日本政策投資銀行地域振興グループ参事役)

この東日本大震災復興対策本部のほかに、
政府のその他2つの対策本部、すなわち、
「緊急災害対策本部」「原子力災害対策本部」があり、
この3つの対策本部で政府の震災対策が実行されています。
(3つの対策本部の守備範囲についてはコチラ及びコチラ

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東日本大震災復興対策本部令(政令182号)

内閣は、東日本大震災復興基本法(平成23年法律第76号)第17条第2項及び第23条の規定に基づき、この政令を制定する。

(現地対策本部の名称、位置及び管轄区域)
第1条 東日本大震災復興対策本部(以下「本部」という。)に置かれる現地対策本部の名称、位置及び管轄区域は、次のとおりとする。
名称 位置 管轄区域
岩手現地対策本部 盛岡市 岩手県
宮城現地対策本部 仙台市 宮城県
福島現地対策本部 福島市 福島県

(東日本大震災復興対策本部長補佐)
第2条 本部に、東日本大震災復興対策本部長補佐(以下「本部長補佐」という。)2人を置く。
2 本部長補佐は、内閣官房副長官又は関係府省の副大臣若しくは大臣政務官たる東日本大震災復興対策本部員のうちから内閣総理大臣が任命する者をもって充てる。
3 本部長補佐は、東日本大震災復興対策本部長(以下「本部長」という。)の命を受け、本部の事務局(以下単に「事務局」という。)の事務の総括及び事務局の職員の指揮監督に係る本部長の職務について本部長を補佐する。

(東日本大震災復興構想会議の議長及び委員の任期等)
第3条 東日本大震災復興構想会議(以下「会議」という。)の議長及び委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の議長又は委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 議長及び委員は、再任されることができる。
3 議長は、会務を総理する。
4 議長及び委員は、非常勤とする。

(会議の議長代理)
第4条 会議に、議長代理2人以内を置き、委員のうちから内閣総理大臣が任命する者をもって充てる。
2 議長代理は、議長を補佐し、議長に事故があるときは、その職務を代理する。議長代理が2人置かれている場合にあっては、あらかじめ議長が定めた順序で、その職務を代理する。

(会議の特別顧問)
第5条 会議に、特別の事項について助言を求めるため必要があるときは、特別顧問1人を置くことができる。
2 特別顧問は、卓越した識見を有する者のうちから内閣総理大臣が任命する。
3 特別顧問は、非常勤とする。

(会議の専門委員会)
第6条 会議は、専門の事項を調査させるため必要があると認めるときは、その議決により、専門委員会を置くことができる。
2 専門委員会は、当該専門の事項に関して優れた識見を有する者のうちから内閣総理大臣が任命する委員20人以内をもって組織する。
3 委員は、非常勤とする。
4 専門委員会に委員長を置き、当該専門委員会の委員のうちから会議の議長が指名する。
5 委員長は、当該専門委員会の事務を掌理する。
6 専門委員会は、その設置に係る調査が終了したときは、廃止されるものとする。

(事務局次長)
第7条 事務局に、事務局次長3人以内を置く。
2 事務局次長は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
3 事務局次長は、事務局長を助け、局務を整理する。

(事務局の参事官)
第8条 事務局に、参事官25人以内を置く。
2 参事官は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
3 参事官は、命を受けて、局務を分掌し、又は局務に関する重要事項の審議に参画する。

(現地対策本部事務局長)
第9条 現地対策本部事務局に、現地対策本部事務局長を置く。
2 現地対策本部事務局長は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
3 現地対策本部事務局長は、当該現地対策本部に係る現地対策本部長の命を受け、当該現地対策本部事務局の局務を掌理する。

(事務局長等の勤務の形態)
第10条 事務局長、事務局次長及び参事官並びに現地対策本部事務局長は、その充てられる者の占める関係のある他の職が非常勤の職であるときは、非常勤とする。

(本部の組織の細目)
第11条 この政令に定めるもののほか、本部の組織に関し必要な細目は、内閣総理大臣が定める。

(本部の運営)
第12条 この政令に定めるもののほか、本部の運営に関し必要な事項は、本部長が本部に諮って定める。

附 則

(施行期日)
第1条 この政令は、公布の日から施行する。

(職員の退職管理に関する政令の一部改正)
第2条 職員の退職管理に関する政令(平成20年政令第389号)の一部を次のように改正する。
別表第1内閣の項中
「国家公務員制度改革推進本部に置かれる事務局」を
「国家公務員制度改革推進本部に置かれる事務局
 東日本大震災復興対策本部に置かれる事務局 」に改める。

6月10日、
「東日本大震災復興基本法案」が衆議院本会議で可決されたニュースが
相次いで報道されました。

そして、6月20日にも、同法案は参議院本会議でも可決され、
法律として成立するとの見通しが立てられています。

多くの報道機関は、この衆院通過について、
「復興庁、復興債、復興特区が盛り込まれた」「民主党が自民党・公明党案を丸のみした」
ということに力点を置いていましたが、
どのメディアの記事を読んでも、この法律で「何がどう変わるのか」がわかりづらかったため、
法案にまでさかのぼって内容を見てみました。

法案は、衆議院のホームページから閲覧することができます。
※このブログの最後に法案を全文を掲載しました。

この法案は、4章24条構成となっています。

◆ 第1章(第1条から第5条):総則

法案の趣旨を説明したものであり、具体的に「何が変わるか」に関する取極はありません。

◆ 第2章(第6条から第10条):基本的施策

ここで述べられている具体的な内容は、「財源」についてです。
長い文章ですが、要は、「特例の復興債」を発行して財源を確保するという内容です。
その代わり、その他の国家予算は切り詰めるように努力しようと補足しています。

この復興債は、その他の公債とは区別してモニタリングされるようです。
復興債の額や手法については、「別に法律で定める」と言っているので、
具体的な内容はまだ決まっていません。

第10条では、地方自治体が、
従来の法律に沿わない取組を実施することを可能とするための枠組みとして、
「復興特別区域制度」を検討するということが書かれていますが、
こちらも具体的な内容については、
「総合的に検討を加え、速やかに必要な法制上の措置を講ずる」としており、
具体的な検討はこれからのようです。

◆ 第3章(第11条から第23条):東日本大震災復興対策本部

この章では、新しく内閣に(組織的にはおそらく内閣官房に)新設される
「東日本大震災復興対策本部」の中身について書かれています。

3月11日の大震災発生以降、政府は沸き起こる様々な課題に対して、
次々と「対策チーム」を設置して、対応してきました。
原子力災害対策本部、被災者生活支援特別対策本部、原子力被災者生活支援チーム、
震災ボランティア連携室など、新設された政府の組織は20以上もあるようです。

内閣の中に新たな「チーム」を発動することはそれほど難しくはありません。
誰が「チーム長」で、誰が「副チーム長」なのかを決めればよいだけだからです。
しかし、そのチームを「機能させる」ことは容易ではありません。
具体的なチーム編成、予算、権限、活動範囲、活動内容、活動スケジュール、
意志決定の方法、チーム内や他の省庁との連絡ルートの確立、扱う法案の範囲
などなど、不明確なものがたくさんあるためです。

そのため、新設される「東日本大震災復興対策本部」の役割は、
全体の企画立案や意思決定をスムーズにしていくことにあります。

□ 東日本大震災復興対策本部
 〈意志決定機関〉
   本部長: 首相
   副本部長: 内閣官房長官と東日本大震災復興対策担当大臣(新設)の2名
   本部員: 全ての国務大臣と、首相が任命する副大臣・政務官・官僚トップ
 〈事務遂行機関〉
   幹事: 首相が任命する官僚
   現地対策本部: 本部長(首相が任命する副大臣・政務官など)
              本部員(首相が任命する官僚)
   事務局: 事務局長、事務局員、現地対策本部事務局
 〈ご意見番機関〉
   東日本大震災復興構想会議: 地方自治体の首長または有識者など25名以内
   原発事故対策用の合議制機関: 地方自治体の首長または有識者など
   ※双方とも、関係企業、団体、個人などに資料提出やヒアリングを要求できる。

◆ 第4章(第24条):復興庁の設置に関する基本方針

第3章で定められた「東日本大震災復興対策本部」は、
第4章で定められる「復興庁」が創設されると廃止されることになります。
そして、東日本大震災復興構想会議など、対策本部の下部組織は、
この復興庁に引き継がれることとされています。

これが、成立しようとしている「東日本大震災復興基本法」の内容です。

したがって、冒頭の「この法律によって何が変わるか?」の回答としては、

  新たな行政組織が誕生する。
  復興債や復興特別区域制度というものも誕生しそうだが、
  これらはまだ具体的には決まっていない。
  また、新設される行政組織が実施する新たな政策や取り組みについても、
  まだ決まってない。

ということとなります。
この法律で、復興支援の具体案が何か決まるわけではありません。

しかしながら、この法律は、行政組織を動かしていくためには必要な法律です。
行政組織は、基本的に「法律に基づいて」活動することが許されている組織であり、
人員数、予算額、部署の新設・統廃合等を決めるためには、
すべて国会で法律を新設または修正する必要があるからです。

東日本大震災という通常の行政手続だけでは対応できない大きな問題に対し、
行政組織のリソース(人的資源、予算、資産)を活用するには、
その活用方法に関するルール(基本法)がどうしても必要となります。
この基本法があることで、官僚機構が持てる力を発揮できるようになり、
具体的な施策の検討をスムーズに開始できるのです。

もちろん、この基本法が成立するのが震災発生の3か月後という、
スピードの遅さは極めて大きな問題です。
官僚機構リソースの活用方法を決めるためだけに3か月を費やしては、
国民の支持を得ることはできません。

もちろん、この3か月、国は何も議論をしてこなかったわけではありません。
例えば、東日本大震災復興基本法で規定されている
東日本大震災復興構想会議」は、既に4月15日から活動を始めています。
構想会議の下には、長期ビジョンを検討する「検討部会」も設置され、
様々な有識者による意見交換が開始されています。
他にも、それぞれの省庁において短期的な復興への取組が始まっています。

しかしながら、復興に向けて大がかりな仕掛けについては、
いまだ目指す方向性は固まっておらず、
構想会議で検討されている内容が実際の政策にどう反映されるかについても、
はっきりしないのが実状です。

官僚機構は、巨大な権限、資源、予算を持ち、強大な影響力を持つ一方、
「大組織」として運営効率やスピード、柔軟性を書く性格を本質的に帯びています。

国民は「日本の政治はスピードが遅い」と嘆くだけでなく、
この官僚機構の負の性格を理解した上で、
政府に対する付き合い方や期待の度合いを考えていく必要があると考えています。

===東日本大震災復興基本法案の本文===

目次

 第一章 総則(第一条―第五条)
 第二章 基本的施策(第六条―第十条)
 第三章 東日本大震災復興対策本部(第十一条―第二十三条)
 第四章 復興庁の設置に関する基本方針(第二十四条)
 附則

   第一章 総則

 (目的)
第一条 この法律は、東日本大震災が、その被害が甚大であり、かつ、その被災地域が広範にわたる等極めて大規模なものであるとともに、地震及び津波並びにこれらに伴う原子力発電施設の事故による複合的なものであるという点において我が国にとって未曽有の国難であることに鑑み、東日本大震災からの復興についての基本理念を定め、並びに現在及び将来の国民が安心して豊かな生活を営むことができる経済社会の実現に向けて、東日本大震災からの復興のための資金の確保、復興特別区域制度の整備その他の基本となる事項を定めるとともに、東日本大震災復興対策本部の設置及び復興庁の設置に関する基本方針を定めること等により、東日本大震災からの復興の円滑かつ迅速な推進と活力ある日本の再生を図ることを目的とする。

 (基本理念)
第二条 東日本大震災からの復興は、次に掲げる事項を基本理念として行うものとする。
 一 未曽有の災害により、多数の人命が失われるとともに、多数の被災者がその生活基盤を奪われ、被災地域内外での避難生活を余儀なくされる等甚大な被害が生じており、かつ、被災地域における経済活動の停滞が連鎖的に全国各地における企業活動や国民生活に支障を及ぼしている等その影響が広く全国に及んでいることを踏まえ、国民一般の理解と協力の下に、被害を受けた施設を原形に復旧すること等の単なる災害復旧にとどまらない活力ある日本の再生を視野に入れた抜本的な対策及び一人一人の人間が災害を乗り越えて豊かな人生を送ることができるようにすることを旨として行われる復興のための施策の推進により、新たな地域社会の構築がなされるとともに、二十一世紀半ばにおける日本のあるべき姿を目指して行われるべきこと。この場合において、行政の内外の知見が集約され、その活用がされるべきこと。
 二 国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の連携協力並びに全国各地の地方公共団体の相互の連携協力が確保されるとともに、被災地域の住民の意向が尊重され、あわせて女性、子ども、障害者等を含めた多様な国民の意見が反映されるべきこと。この場合において、被災により本来果たすべき機能を十全に発揮することができない地方公共団体があることへの配慮がされるべきこと。
 三 被災者を含む国民一人一人が相互に連帯し、かつ、協力することを基本とし、国民、事業者その他民間における多様な主体が、自発的に協働するとともに、適切に役割を分担すべきこと。
 四 少子高齢化、人口の減少及び国境を越えた社会経済活動の進展への対応等の我が国が直面する課題や、食料問題、電力その他のエネルギーの利用の制約、環境への負荷及び地球温暖化問題等の人類共通の課題の解決に資するための先導的な施策への取組が行われるべきこと。
 五 次に掲げる施策が推進されるべきこと。
  イ 地震その他の天災地変による災害の防止の効果が高く、何人も将来にわたって安心して暮らすことのできる安全な地域づくりを進めるための施策
  ロ 被災地域における雇用機会の創出と持続可能で活力ある社会経済の再生を図るための施策
  ハ 地域の特色ある文化を振興し、地域社会の絆(きずな)の維持及び強化を図り、並びに共生社会の実現に資するための施策
 六 原子力発電施設の事故による災害を受けた地域の復興については、当該災害の復旧の状況等を勘案しつつ、前各号に掲げる事項が行われるべきこと。

 (国の責務)
第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、二十一世紀半ばにおける日本のあるべき姿を示すとともに、東日本大震災からの復興のための施策に関する基本的な方針(以下「東日本大震災復興基本方針」という。)を定め、これに基づき、東日本大震災からの復興に必要な別に法律で定める措置その他の措置を講ずる責務を有する。
 (地方公共団体の責務)
第四条 地方公共団体は、第二条の基本理念にのっとり、かつ、東日本大震災復興基本方針を踏まえ、計画的かつ総合的に、東日本大震災からの復興に必要な措置を講ずる責務を有する。

 (国民の努力)
第五条 国民は、第二条の基本理念にのっとり、相互扶助と連帯の精神に基づいて、被災者への支援その他の助け合いに努めるものとする。

   第二章 基本的施策

 (復興に関する施策の迅速な実施)
第六条 国は、東日本大震災からの復興に関する施策を迅速に実施するため、第三条の規定により講ずる措置について、その円滑かつ弾力的な執行に努めなければならない。

 (資金の確保のための措置)
第七条 国は、次に掲げる措置その他の措置を講ずることにより、東日本大震災からの復興のための資金の確保に努めるものとする。
 一 復興及びこれに関連する施策以外の施策に係る予算を徹底的に見直し、当該施策に係る歳出の削減を図ること。
 二 財政投融資に係る資金及び民間の資金の積極的な活用を図ること。

 (復興債の発行等)
第八条 国は、東日本大震災からの復興に必要な資金を確保するため、別に法律で定めるところにより、公債(次項において「復興債」という。)を発行するものとする。
2 国は、復興債については、その他の公債と区分して管理するとともに、別に法律で定める措置その他の措置を講ずることにより、あらかじめ、その償還の道筋を明らかにするものとする。

 (復興に係る国の資金の流れの透明化)
第九条 国は、被災者を含めた国民一人一人が東日本大震災からの復興の担い手であることを踏まえて、その復興に係る国の資金の流れについては、国の財政と地方公共団体の財政との関係を含めてその透明化を図るものとする。

 (復興特別区域制度の整備)
第十条 政府は、被災地域の地方公共団体の申出により、区域を限って、規制の特例措置その他の特別措置を適用する制度(以下「復興特別区域制度」という。)を活用し、地域における創意工夫を生かして行われる東日本大震災からの復興に向けた取組の推進を図るものとし、このために必要な復興特別区域制度について総合的に検討を加え、速やかに必要な法制上の措置を講ずるものとする。

   第三章 東日本大震災復興対策本部

 (設置)
第十一条 内閣に、東日本大震災復興対策本部(以下「本部」という。)を置く。

 (所掌事務)
第十二条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
 一 東日本大震災復興基本方針に関する企画及び立案並びに総合調整に関する事務
 二 関係地方公共団体が行う復興事業への国の支援その他関係行政機関が講ずる東日本大震災からの復興のための施策の実施の推進及びこれに関する総合調整に関する事務
 三 前二号に掲げるもののほか、法令の規定により本部に属させられた事務

 (東日本大震災復興対策本部長)
第十三条 本部の長は、東日本大震災復興対策本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。
2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

 (東日本大震災復興対策副本部長)
第十四条 本部に、東日本大震災復興対策副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官及び東日本大震災復興対策担当大臣(内閣総理大臣の命を受けて、東日本大震災からの復興のための施策の推進に関し内閣総理大臣を助けることをその職務とする国務大臣をいう。)をもって充てる。
2 副本部長は、本部長の職務を助ける。

 (東日本大震災復興対策本部員)
第十五条 本部に、東日本大震災復興対策本部員(以下「本部員」という。)を置く。
2 本部員は、次に掲げる者をもって充てる。
 一 本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣
 二 内閣官房副長官、関係府省の副大臣若しくは大臣政務官又は国務大臣以外の関係行政機関の長のうちから、内閣総理大臣が任命する者

 (幹事)
第十六条 本部に、幹事を置く。
2 幹事は、関係行政機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。
3 幹事は、本部の所掌事務について、本部長、副本部長及び本部員を助ける。

 (現地対策本部)
第十七条 本部に、第十二条(第一号を除く。)に規定する事務の一部を分掌させるため、地方機関として、所要の地に現地対策本部を置く。
2 現地対策本部の名称、位置及び管轄区域は、政令で定める。
3 現地対策本部に現地対策本部長を置き、関係府省の副大臣、大臣政務官その他の職を占める者のうちから内閣総理大臣が任命する者をもって充てる。
4 現地対策本部長は、本部長の命を受け、現地対策本部の事務を掌理する。
5 現地対策本部に現地対策本部員を置き、国の関係地方行政機関の長その他の職員のうちから内閣総理大臣が任命する者をもって充てる。

 (東日本大震災復興構想会議の設置等)
第十八条 本部に、東日本大震災復興構想会議を置く。
2 東日本大震災復興構想会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
 一 本部長の諮問に応じて、東日本大震災からの復興に関する重要事項を調査審議し、及びこれに関し必要と認める事項を本部長に建議すること。
 二 東日本大震災からの復興のための施策の実施状況を調査審議し、必要があると認める場合に本部長に意見を述べること。
3 東日本大震災復興構想会議は、議長及び委員二十五人以内をもって組織する。
4 議長及び委員は、関係地方公共団体の長及び優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。

 (原子力発電施設の事故による災害を受けた地域の復興に関する合議制の機関)
第十九条 前条第一項に定めるもののほか、原子力発電施設の事故による災害を受けた地域の復興に関する重要事項について、当該災害の復旧の状況等を踏まえ、特別に調査審議を行わせるため必要があると認められるときは、政令で定めるところにより、本部に、関係地方公共団体の長及び原子力関連技術、当該災害を受けた地域の経済事情等に関し優れた識見を有する者で構成される合議制の機関を置くことができる。この場合において、当該機関による調査審議は、東日本大震災復興構想会議による調査審議の結果を踏まえて行われなければならない。

 (資料の提出その他の協力の要請)
第二十条 東日本大震災復興構想会議及び前条に規定する合議制の機関(以下「東日本大震災復興構想会議等」という。)は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関又は関係のある公私の団体に対し、資料の提出、意見の表明、説明その他の必要な協力を求めることができる。
2 東日本大震災復興構想会議等は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者であって調査審議の対象となる事項に関し識見を有する者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

 (事務局)
第二十一条 本部に、その事務を処理させるため、事務局を置く。
2 事務局に、事務局長その他の職員を置く。
3 事務局長は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
4 事務局長は、本部長の命を受け、局務を掌理する。
5 事務局に、現地対策本部に対応して、事務局の所掌事務のうち当該現地対策本部に係るものを処理させるため、現地対策本部事務局を置く。

 (主任の大臣)
第二十二条 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

 (政令への委任)
第二十三条 この章に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。

   第四章 復興庁の設置に関する基本方針

第二十四条 別に法律で定めるところにより、内閣に、復興庁(第三項に規定する事務を行う行政組織をいう。以下同じ。)を設置するものとする。
2 復興庁は、期間を限って、置かれるものとする。
3 復興庁は、主体的かつ一体的に行うべき東日本大震災からの復興に関する国の施策に関し、次に掲げる事務をつかさどるものとし、当該事務の効率的かつ円滑な遂行が確保されるよう編成するものとする。
 一 東日本大震災からの復興に関する施策の企画及び立案並びに総合調整に関する事務
 二 東日本大震災からの復興に関する施策の実施に係る事務
 三 その他東日本大震災からの復興に関し必要な事務
4 本部は、復興庁の設置の際に廃止するものとし、本部並びに現地対策本部、東日本大震災復興構想会議等及びその他の本部に置かれる組織の機能は、復興庁及びこれに置かれる組織に引き継がれるものとする。
5 復興庁は、できるだけ早期に設置することとし、政府は、前各項に定めるところにより、復興庁を設置するために必要な措置について検討を行い、可能な限り早い時期に法制上の措置を講ずるものとする。

   附 則
 この法律は、公布の日から施行する。

     理 由
 東日本大震災が、その被害が甚大であり、かつ、その被災地域が広範にわたる等極めて大規模なものであるとともに、地震及び津波並びにこれらに伴う原子力発電施設の事故による複合的なものであるという点において我が国にとって未曽有の国難であることに鑑み、東日本大震災からの復興の円滑かつ迅速な推進と活力ある日本の再生を図るため、東日本大震災からの復興についての基本理念を定め、並びに現在及び将来の国民が安心して豊かな生活を営むことができる経済社会の実現に向けて、東日本大震災からの復興のための資金の確保、復興特別区域制度の整備その他の基本となる事項を定めるとともに、東日本大震災復興対策本部の設置及び復興庁の設置に関する基本方針を定めること等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。