Marshal BusinessのWEB版で、社会企業する財団の記事がありました。

5 Foundations Supporting Social Good Entrepreneurship

記事の中では、社会企業の中でも、特にインターネットによるビジネスプレーヤー
に対する支援で名高い財団が5つ紹介されていました。

この業界の方であれば、どれもご存知の財団だと思います。

1. シュワブ社会起業財団(Schwab Foundation for Social Entrepreneurship
2. スコール財団(Skoll Foundation
3. アショーカ財団(Ashoka
4. オミダイア・ネットワーク(Omidyar Network
5. エコーイング・グリーン(Echoing Green

この記事では、アショーカ財団、オミダイア・ネットワーク、エコーイング・グリーンの、
紹介動画が掲載されていました。

とても素敵だったので、ぜひご覧下さい。

アショーカ財団

オミダイア・ネットワーク

エコーイング・グリーン

寄附の文化が浸透しているアメリカ・イギリス・カナダでは、
社会に大きな影響を与える財団があります。

もちろん、財団は「存在するだけで善」ということはなく、
限られた資金をより有効に活用していく役割が求められます。

日本にも社会的なことに資金を投じたいと思っている人は少なからずいるはずです。
資金を有効活用できる財団が今日本でも求められています。

ソーシャル・ビジネスや社会的セクターと呼ばれる企業や活動の多くは、
「平等な教育の機会を提供する」
「二酸化炭素の排出量を削減する」
など、持続可能な社会の実現を目指す崇高なミッションに基づいて、
運営されています。

一方で、崇高なミッションは、抽象的なフレーズとなりやすい。
方向性としては正しそうなのですが、どこまで前進しているのか、
言いかえると、社会に対してどのぐらい影響をもたらしているのか、
不明確になりがちです。
そのため、事業の社会的インパクトが小さくなってしまったり、
資金調達の際に事業の意義をうまく説明できなかったりすることが、
少なくありません。
これでは、せっかくの崇高なミッションも実現されず、
持続可能な社会には到達できなくなってしまいます。

社会に対して影響力をもっていくために、重要なことは何か。
アメリカのスコル財団はそのブログの中で、
成果を具体的に数値化することが重要であると、説きます。

How to evaluate social impact?

Consider after-school education. The federal government spends billions annually on after-school programs to assist young children who perform below grade level, especially in reading and math. Unfortunately, large-scale studies have found that most of these programs fail to boost student achievement.

「例えば、課外教育について。連邦政府は毎年何十億ドルもの予算を、成績が平均以下
の子供たちを支援するプログラムに費やしているが、残念なことに、子供たちの成績向
上をほとんど実現できていないことが研究によって明らかになっている。」

But not all of them do. (…) One such organization, BELL (Building Educated Leaders for Life), which uses a proven curriculum and has an award-winning training program for its instructors, has demonstrated substantial gains in students’ math and reading skills. Not only can BELL tell you how far its students have advanced during the school year, but it can tell you, week by week, how they are progressing. When a student falls off pace, red flags go up, and the organization does its best to remedy the situation. Most of BELL’s competitors could tell you how many students attended their programs and the number of hours each sat in class, but they can’t tell you what the children learned.

「しかし全部が成果をあげていないわけではない。例えば、低所得者層に対する
教育の分野で受賞実績を挙げているBELLという活動は、生徒の読書と数学能力
を具体的に向上していることが証明されている。BELLは生徒が具体的にどのぐら
い能力を向上させることができたかだけでなく、毎週生徒たちがどのぐらい成長し
ているかも把握している。生徒たちが学習ペースを落としたり、音を上げたときに、
BELLはその状況を打開するために全力をあげている。他の多くの教育機関は、
生徒数は何人か、授業時間は何時間という質問に答えることができても、子供
たちが何を学習したのかについては答えることができない。」

BELLは、自らのミッションの成果を数値化し、それを定期的に効果測定を
することで、社会への影響力を大きくすることに成功しているというです。

成果が具体的に可視化されると、以下のような効果が期待できます。
‐ 組織活動のゴールと現状の把握
‐ 株主、債権者に対する存在意義の説明
‐ 従業員やメンバーに対するモチベーションの向上
‐ 顧客に対する商品・サービス価値の説明

成果の可視化という考え方は、
ソーシャル・ビジネスの世界で最近重要視されつつあるようですが、
企業経営の世界では以前から広く採用され、いわば先輩にあたります。

しかし、このように従来の企業と、社会的セクターや政府を同一視することに、
反発する2種類の意見があります。

1つ目は、
「企業は利益という明確な数値目標があるが、社会的セクター(ソーシャル・ビジネ
ス)はミッションを中心にされており、そのミッションの数値化は容易ではない」

というもの。

2つ目は、
「企業は利益という短期的な目標を目指すのに対し、社会的セクターは長期的な社
会課題に取り組んでおり、長期的な目標は設定しづらい」

というもの。

どちらも、社会的セクターの目標設定は難易度が高いということに着目しています。

しかし、僕は、以下の2つの理由から、成果の数値化というマネジメント手法において、
企業経営と、政府や非営利組織との間には本質的な違いはないと考えています。

1. 企業は利益だけでマネジメントしてはいない

多くの企業が利益目標を設定していることは事実ですが、
実際の事業の場面では、利益でマネジメントをすることは多くはありません。

例えば、スーパーのレジのおばさんはいくら利益を挙げているのか。
コールセンターの担当者はいくら利益をあげているのか。
はたまた、人事部や経理部はいくら利益をあげているのか。
これを明確にすることは単純ではありません。
上記の部署の方々に、「利益をあげろ!」といったところで、
具体的な行動の改善につなげることは容易ではないのです。

そのため、多くの企業では、それぞれの部署や従業員の日々の業務に則した
目標を設定することで、組織の力を最大化しようとしています。
「レジ打ちのスピードをどれだけ向上できるか?」
「コールセンターのお客様満足度をどれだけ向上できるか?」
というように行動目標を具体化したり、
「人事部はコストを使う一方、何をもって部署の価値と呼ぶのか?」
ということをゼロから定める検討をしたりしています。

このように企業は、事業運営に際して、利益以外の成果を数値化しており、
ミッション遂行型のソーシャル・ビジネスと大きな違いはありません。

2. 企業も長期的目標の設定を行っている

企業は短期的な利益目標を追求していると称されがちですが、
従来の企業も、社会的なミッションを掲げてきました。

例えば、新たに事業を起業する際に、
純粋に「いくら儲かるか」だけでなく、「なぜその事業が社会にとって必要なのか」を
起業家たちは考えてきました。

また、既存企業の経営においても、
企業の幅広い利害関係者(株主、債権者、顧客、政府、社会全体)を考慮し、
利益目標だけでなく、理念やビジョンを明確に設定する企業が増えてきています。

ビジネススクールでは、理念やビジョンを数値化し、マネジメントに活用するという難題
に対し、「バランスト・スコア・カード」という解決手法が教えられています。

上記のスコル財団も、社会的セクターも、この「バランスト・ストア・カード」に基づくことで、
効果的な成果の数値化を実現できるのではないかとブログで呼び掛けています。

社会的セクターは、ときに存在しているだけで美談になってしまうことがあります。
しかし、具体的な成果として、社会に何をもたらしたのか、もたらしたいのか、
これらを明確にしないことには、
組織として成長することも、周囲の支援を得ることもできなくなってしまいます。

巧みな成果の数値化や目標設定は重要な経営力のひとつです。
数値化や目標設定の方法を変えることで、
さらに進化できる社会企業や政府はたくさんあると考えています。

※僕の別ブログである「アメリカ・サンダーバードMBA留学ブログ」から転載しました。

2010年10/28~30にミシガン州デトロイト近郊のミシガン大学キャンパスで、
Net Impact“という年に一度の盛大なイベントが開催されます。
同名のNet ImpactというNPOが開催しています。

名前についている”Net”は、インターネットのことではなく、
ヒューマンネットワークを意味しています。

このイベントは、
世界中のソーシャルビジネスプレーヤーが集結する世界最大級の
年に一度のネットワーキング舞台です。

ソーシャルビジネスは「社会企業」とも呼ばれています。
環境保護、代替エネルギー、貧困対策、国際協力、弱者救済、
途上国でのインフラ整備・医療介護整備、など「社会的」と呼称されている
ビジネスに関連しているプレーヤーが、2500名以上集まります。
具体的には、
社会起業家、投資家、財団、グローバル企業のCSR部門、NPO、コンサルタント、
エンジニア、学生(ビジネス、公共政策、環境など)などです。

イベントでは、300以上の講演、テーマごとのディスカッションが実施され、
関係者間での意見交換、アイデア入手、パートナー探索が行われます。

Net Impactは、1993年に
アメリカのビジネススクールの学生により創設されました。
当初は学生だけのNPOでしたが、1998年に卒業後のOB/OG同士が再度集まり、
学生だけの団体から社会人を含む団体へ組織の再構築が行われます。
そして、現在のかたちでの社会人を中心としたイベントが2001年に始まり、
年に一度のイベントは年々参加者を増やし続け、現在に至っています。

このような背景のため、このイベントでは「就職」も大きくフォーカスされています。
ソーシャルビジネスに興味のある学生は、
世界の主要なプレーヤーが一堂に会する場で、必死にネットワークを構築していきます。
学生を支援するため、イベント側も、キャリアカウンセリングブースを数多く設け、
無料で、ソーシャルビジネスへの就職を成功させるためのアドバイスを提供しています。

Net Impact は、現役のプレーヤーと未来のプレーヤーが、
互いに交流しあう一大イベントなのです。

アメリカでは、ここ数年で、ソーシャルビジネスが就職先として
大きな位置を占めるようになってきました。
背景として、ソーシャルビジネスプレーヤーが
「ビジネス」としての存立基盤を強固にしているということが挙げられます。

日本で「ソーシャルビジネス」というと、
ビジネスっぽい非営利活動というイメージがあるかもしれませんが、
世界的には、もともと営利組織として組織が運営され、
社会的側面の強い事業内容を営んでいるプレーヤーが、
「ソーシャルビジネス」と呼ばれています。
つまり、立派な企業なのです。

日本にも、Net Impactの支部、「ネットインパクト東京チャプター」があります。
※サイトをみてみたら、
日米学生会議で一緒に活動していた友人が事務局をやっていました(笑)

しかし、日本では、ソーシャルビジネスの労働市場は決して大きくありません。
原因として、年収や雇用の安定性が挙げられますが、
最大の原因は、労働市場の国際性が欠落し、市場が国内に閉じていることです。
ソーシャルビジネスの大半は、途上国に位置しており、
先進国のプレーヤーも彼らをサポートするため、現地駐在を頻繁にしています。
環境・エネルギー業界のプレーヤーも、人件費の安さを求めて、
積極的に海外に展開していっています。
国際的な労働市場を欠いている日本では、普及に時間がかかりそうです。

アメリカでは、「ソーシャルビジネス」の興隆を受け、大学院教育も変化しつつあります。

従来、ソーシャルビジネスという概念は、公共政策の分野から興りました。
1980年以降、政府が緊縮財政を始めたことを契機に、
これまで税金で維持してきたソーシャルサービスを
独立財源をもつビジネスへと衣替えをはかる必要性がでてきたためです。
そのため、ソーシャルサービス教育は公共政策大学院(MPA/MPP)が
中心となっていました。

しかし、ビジネスという名前がついている分野に、
ビジネススクールが黙っているわけはありません。
トップクラスのビジネススクールが、こぞってカリキュラムに
「ソーシャルビジネス Social Business」
「ソーシャルアントレプレナーシップ Social Entrepreneurship」
というラインナップを加え、一気にソーシャルビジネス教育を充実させていきます。

さらに、ソーシャルビジネスのビジネスとしての自立性や収益性が強調される
につれて、ビジネススクールの存在感がますますましていきます。
この流れに、NPOマネジメントという独自の教育を誇っていたイェール大学も屈し、
1998年に、授与単位を、MPPM (Master of Public and Private Management)から、
MBAに変更しています。

今では、公共政策教育の最高峰・ハーバード大学ケネディスクールの
ゴールドスミス教授も、著書『ネットワークによるガバナンス』の中で、
「公共政策大学院はビジネススクールの要素を取り入れていく必要がある」
という内容を書き記しています。

こうした状況の中で、
MBAとMPAのどちらにいくべきかと、悩む学生も増えてきました。
Yahoo! Answersでは、このような回答がされていましたので、
ご紹介しておきます。

MBA: マネジメント職(管理・実行部門)への就職に強い。ソーシャルビジネスに強い。
MPA: リサーチ職(分析部門)への就職に強い。NPOに強い。

参考にしてください。

最後に、ソーシャルビジネスを日本に紹介している第一人者であり、
僕の大学時代からの友人でもある、槌屋詩野さんのHPを紹介します。
このHPで彼女の雑誌投稿記事が閲覧できます。
世界のソーシャルビジネスやBOPビジネスの動きを把握できますので、
ぜひご覧ください。

まだまだ自分自身もラフな理解ですので、
引き続きいろいろ調べていこうと思います。