6/17~20にかけて、各紙・メディアが一斉に、
「餃子の王将が電気を使わない自動ドアの導入を決めた」
という内容を報道しました。

産経新聞 「王将フードサービス、電気使わない自動ドア設置へ
日経新聞 「自動ドア、電気使わず開閉 餃子の王将が導入
読売新聞 「餃子の王将に足で動かす自動ドア…電気代も節約

報道によると、餃子の王将の今回の導入背景は、

関西電力が15%の節電要請を行うなど、近畿でも電力不足が深刻化していることから、節電の秘策とする考えだ。手始めに7月に開店する吹田春日店(大阪府吹田市)と金沢東店(金沢市)に設置し、順次拡大する。

ということのようです。

この報道で、僕が一番気になったのは、
「電気を使わない自動ドアとは一体なんなのか?」
「どこのメーカーが開発したのか?」という点です。

そこで、開発メーカーについて調べてみました。

今回報じられている、電気不要の自動ドアを開発したのは、
会津若松市にある株式会社有紀という建材メーカーです。

資本金は4000万円とメーカーとしては小規模で、
従業員はパートの方も含めて全部で8名。
現在も社長である橋本保さんが、2001年に創業しました。

株式会社有紀は、自動ドア専業メーカーではありません。
事業の柱は、地元の資源である「会津桐」「会津吉祥杉」を活用した
建材の設計・製造・販売。
「電気を使わない自動ドア」は有紀社にとっての新商品です。
商品名は「オートドア・ゼロ」と言います。
日本で特許を取得した後、今年の2月にはアメリカの特許も獲得。

また、餃子の王将は、「オートドア・ゼロ」の最初の導入企業ではありません。
すでに、会津若松市立北会津中学校(保健室)、
常磐自動車道 湯ノ岳PA、名神高速道路 大津SAに導入されています。
しかし、今回は、日本有数の飲食店への導入が決定したということで、
大々的に報道されたようです。

「オートドア・ゼロ」の仕組みは、ホームページでも多くは紹介されていませんが、
ドアの手間に「踏み台」を置き、その踏み台が体重で下に押されることで、
歯車が回り、ドアを開けることができるようです。

電気を使わないため、節電効果が期待できるだけでなく、
電磁場などを発生せず、音も静かというメリットや、
停電時にも稼働するというメリットがあります。

今回の導入の話には、いくつかの素敵な点があります。
・地方の小規模メーカーの技術が注目を集めている
・震災で大きなダメージを受けた福島県の企業の朗報となる
・エネルギー不足が今後懸念される中で、節電にとっての一助となる
・大企業が導入を決めたことで、将来の技術開発にとってのテストケースにできる

餃子の王将において、今後他店にも導入を拡大するかどうかについては、
いくつかの基準があると考えられます。

・子供や大柄な人などの個々の体重差にスムーズに対応できるか
・ゆっくりと入ってくる人、急いで入ってくる人などにスムーズに対応できるか
・出口と入口で一斉に踏み台を踏んだ時、混乱しないか
・街の振動などの他の影響によって誤作動を起こさないか
・頻繁な開閉に耐えられる耐久性はあるか
・冷暖房効率などを考えた場合に、スムーズにドアが閉まるか
・故障時のメンテナンスや修理は迅速に対応できるか

これらは、他の商用施設等に導入される際には重要な確認ポイントです。
有紀社にとっては、実導入の結果を踏まえ、商品の向上が見込めます。
また、ここでの実証事例を基に、他の企業でも導入の検討が進むと思われます。

また、将来の大規模受注に備え、有紀社の製造能力の拡大も注目されます。
現在の従業員8名体制では、おそらく大規模受注には対応できません。
有紀社が特許をもっているため、自社工場への大規模設備投資を行うか、
他社へのライセンス供与をするのか等々です。

餃子の王将の試みは、電力不足に対する事業リスクを軽減するという、
サステイナブルビジネス戦略ととらえることができます。
「オートドア・ゼロ」のように、企業の持続可能ビジネス戦略を推進する技術は、
大企業だけでなく、様々な企業が今後支えていくのだと思います。