カナダのバンクーバーにあるPakit社が、
これまで開発が困難だった「生分解可能」なパッケージ素材を、
PepsiCo(ペプシコーラのメーカー)と共同で開発しました。
(ニュースはコチラ)
この新素材がどれほど画期的なものなのかについて、
今回のブログで解説していきたいと思います。
まず、パッケージが与える地球環境の影響は、ここ数年大きく取り上げられています。
ときには「過剰包装」とも言われる問題は、
現在の消費社会において、プラスチックなどの包装素材「パッケージ」が、
大量生産・大量消費され、省エネに向けての大きなテーマとなっていますし、
また、大量にゴミとして廃棄され、多くの国では深刻な衛生問題ともなっています。
さらに、プラスチックの素材は原油であり、原油枯渇化の面でも、
プラスチックの消費抑制、他の素材への代替化は地球規模の問題となっています。
このプラスチック問題に対しては、主に先進国において、
リサイクルシステムが確立され、無駄の少ない資源利用が追求されてきました。
例えば日本では、2000年代から、ゴミの分別回収や家電リサイクルなどが始まり、
さらに産業界では、プラスチックのゴミを焼却しエネルギーとして活用することが
法制度化され、プラスチックの有効利用を目指してきました。
例えば、日本で生産されているプラスチック製品約1,400万tのうち、
最終的に21%は再利用され、55%は熱エネルギーとして利用され、
残りの24%が埋め立てられたり、ゴミとして焼却されたりしています。
このリサイクル比率は世界の中でも優等生です。
課題もまだたくさんあります。
廃棄の12%を占める埋め立ては、埋立て地の土地確保問題として顕在化していますし、
リサイクルにかかる膨大な費用も企業の頭を悩ませる要因となっています。
また、このサイクルフローに現れないプラスチックの投棄(山にゴミを捨てるなど)
は、自然破壊の原因ともなっています。
プラスチックゴミの問題は、世界中で深刻になっています。
それは、投棄されたプラスチックは、自然分解されずに、いつまでたっても
ゴミとして残り、さらに有害物質を発生させる危険性があるからです。
この「土に帰らない」というプラスチックの特性が、
プラスチックが根本的に抱える課題です。
そして、特に発展途上国では、ゴミ回収フローが未整備なため、
生活ゴミが慢性的に道路や川や山に投棄され、
深刻な環境・衛生問題を呼び起こしています。
今回、Pakit社が開発した「生分解可能」なパッケージ素材(Patit100)とは、
このプラスチックが抱える「土に帰らない」という課題を、
根本的に解決するものとなっています。
このPakit100は、セルロースという植物素材を活用しているため、
例え投棄されたとしても、短期間で土に帰るのです。
そのため、世界のゴミ問題にとって大きな突破口となります。
また、この新素材はほかにも利点があります。
〇ゴミを素材として使える
この新素材は植物素材を原料に使っているため、
「原油消費量が減る一方で、グリーン資源の消費量が増える」という
懸念があります。
しかし、Pakit社は、素材の再利用を活用したり、
農業で生成された「緑のゴミ(枝や葉、皮など)」や枯れ木、
新聞などを原料として活用することを可能としました。
そのため、グリーン資源の消費量が増えるということはありません。
むしろ、緑のゴミを資源として再利用することを可能としています。
〇熱の変化に強い
従来のプラスチックに加え、セルロースの新素材は、
高熱や冷却に強いという特徴をもっています。
そのため、加工食品や医療器具など、幅広く対応できる力をもっています。
〇熱の変化に強い
従来のプラスチックに加え、セルロースの新素材は、
高熱や冷却に強いという特徴をもっています。
そのため、加工食品や医療器具など、幅広く対応できる力をもっています。
〇輸送費が安い
プラスチックの原料は原油のため、プラスチックを生産するためには、
産油国から原料をはるばる輸送してくる必要がありました。
しかし、このPakit100は、身近な「緑のゴミ」や新聞などを
原料とするため、原料調達のための輸送費やエネルギー消費が少なくて
すみます。
さらに、このPakit100は、実用面でも優れています。
〇プラスチックと同様のプリント力をもっている
これまでにもセルロースを用いた素材の開発は進んでいましたが、
実用化のために超えなければならない壁として、
「プラスチックのようにロゴやデザインなどを自由に印刷できない」
「プラスチックのように様々なな形をつくることができない」
という問題がありました。
しかし、Pakit100は、プラスチックと同様に、
様々なプリントを施したり、様々なかたちに加工したりすることが可能です。
この特徴を持つことで、素材面だけではなく、
実用的にもプラスチックを代替することができる力を持っているのです。
この実用的なエコ商品を開発するということは、今後の技術開発に重要となります。
それは、どれほど環境に優れた商品だとしても、
実際のユーザーがそれを使う気にさせることができなければ、
社会を変えることはできないからです。
その点で、Pakit社にとって、PepsiCoとの共同開発は優れた意志決定だといえます。
世界の有数食品メーカーのニーズを十分に把握することで、
実用的な商品を開発することができたからです。
さらに、具体的なユーザーを先に確保することで、
R&Dのための大胆な投資も可能になります。
エコ商品開発のために、開発者とユーザーが協力する枠組みは、
今後ますます増えてくるのでないでしょうか。