※僕の別ブログである「アメリカ・サンダーバードMBA留学ブログ」から転載しました。

今回は、最近、日本でも注目が集まりつつある「社会起業家」と
MBAの関係について、トレンドをお伝えしていきたいと思います。

以前は、「資本主義社会の士官学校」と呼ばれたビジネススクールも
最近はプログラムの種類を増やす動きをとりつつあります。

そして、その中でも一番力を入れているといっても過言ではないのが、
「社会起業家(Social Entrepreneurship)」プログラムの拡充です。

主要な欧米のビジネススクールでは、
プログラムの中に、社会起業家関連の授業を開講したり、
実際に社会起業家のもとでの実務を行う特別プラグラムを開設したり、
社会起業家に関連するカリキュラムを次々と用意をしていっています。

この動きの背景には、学生側と企業側のそれぞれのニーズの変化が、
影響していると考えられます。

まず、学生側のニーズについて考えていきましょう。

以前は、「ビジネススクールを出たら、コンサルティング企業が投資銀行へ」
と言われた時代も大きく変化をしつつあります。

最近では欧米の主要なビジネススクールの卒業生の中には、
NPOや社会的企業と言われる「社会的役割に重視をおいた企業」へ就職したり、
このような企業や組織を卒業後起業する学生が増えてきました。

また、こちらのUS Newsの記事でも紹介さているように、
卒業後の就職先を選ぶ際の軸として、
「社会的貢献性の強い」という要素を挙げる学生も増えてきています。

さらに、多くの学生は、
「環境や社会を意識している企業は高収益である」と考えるように、
なってきているということも併せて報じられています。

このような学生の関心の変化に対応するため、
各ビジネススクールは、
環境や社会などサステイナビリティに関連する履修科目や
開発支援、社会変革などに関するプログラムを拡充しているようです。

さらに、企業側のニーズも変化してきました。

以前、ビジネススクールに期待を寄せてきたのはいわゆる「大手企業」
だったのですが、
最近では、NPOや社会的セクターからの期待もたくさん集まるように
なってきました。

それは、従来は政府やコミュニティーからの財政的支援によって
支えられていたNPOや社会的セクターが、
昨今の政府の財政難を前に、財政的な自立を迫られ、
これまでMBAが提供してきた、マネジメントスキル、財務分析スキル、
組織運営スキル、ITスキルなどを必要とするようになってきたためです。

このような社会起業家教育を求める方々に向けて、
US Newsが全米のビジネススクールの社会起業家教育ランキングと
そのプログラムの内容を発表しています。

1. Yale University (School of Management)

2. University of California-Berkeley (Haas School)

3. Stanford University (Graduate School of Business)

4. Northwestern University (Kellogg School of Management)

5. Harvard Business School

6. University of Michigan (Ross School of Business)

7. Duke University (Fuqua School of Business)

8. University of Pennsylvania (Wharton School)

9. Columbia University (School of Business)

10. New York University (Stern School of Business)

11. Case Western Reserve University (Weatherhead School of Business)

また、アメリカ以外のビジネススクールでは、
University of Oxford (Saïd Business School)の
Skoll Centre for Social Entrepreneurship
が有名です。

このように大きなトレンドになりつつある「社会起業家プログラム」ですが、
個人的には、まだまだ2つの大きな課題があると感じています。

(1) 理論な確立が未整備

多くの日本人の多くは、大学に「理論教育」を求めているように感じています。
しかしながら、社会起業家(Social Entrepreneurship)の分野は、
まだ理論的な裏付けがほとんどなされておらず、
ソーシャルビジネスのマネジメントは、
通常の企業マネジメントとほぼ同様に扱われています。
※同様に扱われていることそのものに大きな問題はないと思います。

ビジネススクールが新たに開設したプログラムの多くは、
「ケーススタディのケースとして、社会的企業を扱う」
「オフキャンパスプログラムとして、社会的企業への訪問を行う」
「社会的企業へのインターンシップ斡旋を行う」
というもので、理論教育ではなく、「自分で体験して学ぶ」ものとなっています。

そのため、何か「理論的に特殊なことを学びたい」と考えている方にとっては、
これらのプログラムは多少物足りないかもしれません。
しかしながら、「そもそも実務家スキルは体験して学ぶものだ」という側面から
考えると、上記のプログラムは実践を体験する良い機会になると思います。

(2) コストパフォーマンス

もう一つの課題は、MBAの高い学費と将来の報酬をいかにペイさせるかという点です。
従来は、MBA取得に多額の資金を投資したとしても、
コンサルティング企業や投資銀行、大手メーカー等への就職から得られる報酬増を
考えると、MBA投資は十分にペイすると言われてきました。

ですが、今回紹介したNPOやソーシャルビジネスの分野は、
一般的にはさほど給与水準の高い「業界」ではありません。

誤解を恐れずに言うと、
資金的にゆとりのある家庭で生まれ育ったり、
なんらか組織的な財政援助を受けられる人でない限り、
社会起業家教育のためにMBAを取得することには大きな覚悟がいります。

ビジネススクール側には、
「顧客(学生)への付加価値をいくらと見積もるのか?」
「教育機会提供のための収益源は授業料だけでよいのか?」
という新たな課題がつきつけられているように感じます。

「資本主義の士官学校」の姿は、徐々に変わりつつあります。

「震災後の日本がどのように変化を遂げていくのか。」

持続可能性の観点からも、世界からも多くの関心が寄せられています。

その中で、企業の持続可能性向上を推進する世界的なNPOのひとつBSR
CEOであるAron Cramer氏が、同社のブログにて、
Japan: Tragedy to Turning Point? “と題する記事を発表しています。

非常に示唆に富む内容でしたので、今回はその記事を日本語訳してみました。

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私が今回、ミーティングに参加するために日本を訪れて一週間。
東京は今までにないぐらい人の気配がなく閑散としていた。
おそらく、日本経済は、地震、津波、福島原発事故の三重の波を前に
激しくダメージを受けてしまった。

しかしながら、BSRの会員企業との一週間の会合の中で、
私はより重層的な日本の状況を感じ取った。
日本は明らかに、この悲劇を将来のための転換点として昇華させ、
日本を、安全で、豊かで、持続可能な将来へと導く、
力強い道のりを歩み始めている。

会合の中で、
たくさんの日本の会員企業の代表たちは、自省の念を表明していた。

ある経営者は、日本がこの数十年間謳歌してきた
エネルギー依存の消費型経済モデルから転換していけるのかどうかという
問題提起をしていた。
例えば、「ここでもどこでも」という日本の消費文化のシンボルであり、
大量のエネルギーを消費する自動販売機なしで日本人がやっていけるのかどうか。
彼はこの点について問題を投げかけていた。

別の経営者は、日本企業は、政府と経団連が求めた25%の自発的節電を
「容易に達成することができる」と語った。
そして、彼は続けて、もしこの節電が可能であるならば、
なぜもっと以前からこれに取り組んでこなかったのか、と振り返っていた。
(もちろん、私自身は、エネルギーが非効率で暴飲暴食しているアメリカ国民の
一人として、他国の節電についてあまりとやかく語る筋ではない)

日本は現在、30%のエネルギーを原子力発電で調達している。
この状況を一夜にして転換することはできないし、
もし原子力発電所を削減するとしても、諸外国と同様に、
短期的には二酸化炭素排出量を削減することがより難しくなる。
しかし、多くの日本の人々は、1973年のオイルショック時に日本が
エネルギー効率を国是として推進していったように、
この2011年のできごとを機に、日本が再生可能エネルギーを
さらに促進していってほしいと願っている。

日本の経営者たちは、日本経済は臨機応変に対応できるという自信を見せるとともに、
今回の地震や津波の結果、これまで長い間活動が目立たなかった日本のNPOが、
今後さらに重要になっていくという見通しも示していた。
多くの企業は、震災の救援、復旧、復興においてNPOと共働している。
このような協働はCAREや赤十字などの世界的組織の日本支部が
中心的な役割を果たしているが、NPOとの共働に急速に関心が高まったことで、
今後、日本のNPOが日本社会で果たす役割はますます大きくなっていくだろう。

また、このような企業とNPOの共働が促進された背景には、
政府への信頼が大きく失墜してしまったということがある。
多くの企業経営者は、
今回の災害に対して政府のリーダーシップが欠如していることに大いに失望していた。
自衛隊より迅速に災害に対して救援活動を展開した米軍を称賛している人もいた。
(もちろん米軍は自衛隊より規模も資金も豊富なのだが、この米軍への称賛は、
政府の対応能力とコミットメントの欠如を意味している)

日本は、現在、正念場だ。
かつて、アメリカでは、多くのコメンテーターが、
アメリカは9.11を機に何もかも大きく変わり、
新たな価値観が提起されたり、
社会の共通目的が刷新されるだろうと語っていた。
しかし、残念ながら、これらは実際には実現しなかった。
だが、おそらく日本では、アメリカが成し遂げることができなかったような
前進への転換点を、3.11はもたらしていくだろう。

日本のこの正念場をバネに、将来の世代は再生可能エネルギーと
エネルギー効率の向上にますます拍車をかけていくだろう。
もしそれが実現すれば、日本は世界に対して、かつてのように再び、
プレッシャー下での優雅な対応力、明確な解決策、イノベーション力を
教えていく立場になっていく。

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東日本大震災(東北関東大震災)で大きく被災した東北・関東地方。

テレビ等で避難所生活の様子が放映されており、
食料不足やガソリン不足の窮状が報じられています。

一方、ネット等では、
「個人ボランティアの抑制」「個人での救援物資送付の抑制」
なども同時に発信されています。

現場で実際に何が起こっているのか知りたいと思い、
現地での救援・支援活動の状況や支援参加方法について情報をまとめました。

■ 現地での救済・支援の主な活動

現地でボランティア等により実施されている主な活動は、

・避難所での食糧・水・身の回りのもの・毛布等の支給
・各地から届く救援物資の仕分けや各避難所への送付
・医療支援
・携帯電話の充電サービスやインターネット環境の提供
・浴場の提供
・安否確認や家族再会の支援

などのようです。

このような最初の対応が落ち着いた後に、復興支援として、

・被災した住宅の復旧・清掃の手伝い
・地域復興活動の手伝い

などが始まるようですが、まだ現状ではこのレベルまで進めている自治体は
多くはないようです。

■ 現地での救援・支援活動機関・団体

社会福祉協議会

社会福祉協議会は社団法人という民間団体ですが、
その役割が国の「社会福祉法」によって定められている公的な存在です。

社会福祉協議会は、国、都道府県、政令都市、市町村の、
それぞれのレベルで組織されており、災害時に支援救援活動の拠点となることが、
社会福祉法で定められています。

東日本大震災後の救援活動も、
各県や市町村の社会福祉協議会(通称、社協)が中心となって行われています。

社協の災害時の主な役割には、
「ボランティアセンターを通じたボランティアの募集および組織化」があります。

現地で活動するボランティアの大半は、被災地の現地の人々です。
学生や若者など、活動ができる担い手が社協により組織化され、
それぞれの被災地で活動をしています。

そのような現地の人々の活動を、
被災地外のNPOやボランティア組織が、
コーディネートのサポートや物資の調達提供、医療支援などの面で支援しています。

それでもまだ人手が足りない場合にのみ、
被災地外の個人ボランティアの募集が始まります。

◎ 現地ボランティアのニーズの確認方法

個人でのボランティア活動を希望する方々は、
まず、各県や政令都市の社協のHPを確認し、
求められている活動内容や参加条件を知らなければなりません。

直接の大きな被災地である青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉以外でも、
秋田、山形は多くに避難者を抱え、支援を必要としています。

青森県福祉救援ボランティア活動本部
岩手県災害ボランティアセンター 
秋田県社会福祉協議会
宮城県災害ボランティアセンター 
仙台市災害ボランティアセンター 
山形県社会福祉協議会
福島県災害ボランティアセンター 
茨城県災害ボランティア支援本部 
千葉県災害ボランティアセンター 

◎ 現地ボランティアの条件

現地ボランティアが一番してはいけないことは、
現地で不足している食糧や寝場所などについて、
ボランティア自身が負担をかけてしまうことです。
ボランティア後に現地を去る際にガソリンを補給することですら、
現地のガソリンという貴重な資源を奪う行為となってしまいます。

そのため、社協の全国レベル組織「全国社会福祉協議会」は、
災害時のボランティア活動について、HP上で参加条件をまとめています。

特に、以下の3点は非常に重要な点です。

・被災地での宿所の事前確保。
・水、食料、その他身の回りのものの事前用意・携行。
・ボランティアセンター等、現地受け入れ機関の指示のもとでの活動。

そのため、善意だけで、手ぶらで現地へ行くことは避けなければなりません。

県・市町村

災害時の基本法律である「災害対策基本法」や、
災害発生時の応急対策を定めた「災害救助法」「被災者生活再建支援法」では、
国民への支援を行う主体者は国ではなく、市町村と都道府県と定められています。
被災した市町村や都道府県は、法律の定めるところにより、
被災していない市町村や都道府県に支援を要請することができます。
また、国は都道府県に対して財政補助をすることが定められています。
今回の大地震のように被害が著しい場合には、
激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」に基づき、
激甚災害に認定され、国から都道府県への財政補助が増額されます。

※別途、福島第一および第二原子力発電所に関する避難等については、
原子力災害対策特別措置法」により国(経済産業省)に責任があります。

そこで現在、県や市町村は、社協と連携して支援活動を展開しています。
社協自体が大きく被災をした場合には、
代わりに県や市町村が、ボランティアを集めることもあるようです。

さらに、今回は、法律上は災害救助の主体者ではない国も、
例外措置として予備費302億円を使い、岩手、宮城、福島の3県に対する、
救援物資支援を開始。
→例外措置の詳細はコチラ

その上、さらに国は、被災地でない都道府県が、避難所や応急仮設住宅を設置したり、
旅館やホテルを借り上げたりした場合の費用について、
災害救助法で定められた国の負担金額分だけでなく、
さらに地方交付税を上積みして、ほぼ全額国が負担することを発表しています。。
→情報元はコチラ

※災害対策関連法案の原文はコチラ

◎ 救援物資への協力

県の大きな役割は、必要としている救援物資を表明することです。
現在も県のHP上で、必要としている救援物資が発表されています。

青森県
岩手県
秋田県 
宮城県
山形県
福島県
茨城県
千葉県

基本的にどの県においても、個人による救援物資は求められていません。
仕分けや流通で多くの混乱を生み、現地の支援の妨げとなってしまうからです。
現状では、企業などからの大口の救援物資のみ求められています。
また大口物資についても、直接県が指定する場所へ送付することが前提と
なっていることもあります。

その他、個人や小口での救援物資を希望する場合には、
他の都道府県に送り、その都道府県が被災した県へ送付するというルートが可能です。
個人や小口の救援物資を受けつけている都道府県や市町村は以下の通りです。
その場合も、梱包方法等、各自治体の指示に必ず従ってください。

※受付状況は刻々と変わりますので、必ず各自治体のHPをご確認ください。
※下記以外の自治体でも受け付けている場合がありますので、ご自身の
 都道府県や市町村のHPも合わせてご確認ください。

秋田県
群馬県
埼玉県
埼玉県さいたま市
東京都
長野県
新潟市
石川県金沢市
福井県
三重県津市
和歌山県
兵庫県
岡山県
広島市
鳥取県
山口県
愛媛県
香川県
高知県
福岡県
佐賀県
長崎県
大分県

◎ 各県への義援金

各県では個別に県内被災者への義援金を募集しています。

青森県への義援金
岩手県への義援金
宮城県への義援金
福島県への義援金
茨城県への義援金
千葉県への義援金

日本赤十字社

多くの募金の送金先となっている日本赤十字社は、
主に被災者の救護、医療支援、こころのケア、毛布配布、医療機関への救急セットの配布
などを手がけています。(詳細はコチラ

このように災害発生時に、日本赤十字社が救助協力をすることについても、
災害救助法で定められており、日本赤十字社は法的な義務を負っています。
都道府県が救助サービスを日本赤十字社に委託することもできます。

日本赤十字社への義援金はコチラです。

また、募金(義援金)は、後日、被災者自身や市町村に対して配分支給されるようです。

その他の活動団体

その他のNPOや公益社団法人も現地入りして、直接的な支援を実施しています。
それぞれの団体で、ボランティア募集、義援金受付、救援物資受付を
行っている場合もあります。
積極的に何か支援できることを探している方は、ぜひそれぞれのHPをご確認ください。

ボランティア募集については、震災情報の集合サイトsinsai.infoでも
情報収集できます。

特定非営利活動法人AMDA
[活動内容] 医療支援、生活・物資支援
[活動場所] 宮城県仙台市、岩手県釜石市・上閉伊郡大槌町の地域
[寄付受付] コチラ

国境なき医師団(MSF)
[活動内容] 医療支援、生活・物資支援
[活動場所] 宮城県南三陸町周辺・気仙沼市周辺
[寄付受付] コチラ

公益社団法人日本国際民間協力会(NICCO)
[活動内容] 医療支援、生活・物資支援、ボランティアコーディネート
[活動場所] 宮城県名取市・岩沼市
[寄付受付] コチラ

公益社団法人Civic Force
[活動内容] 避難場所提供、生活・物資支援
[活動場所] 宮城県気仙沼市
[寄付受付] コチラ

特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン
[活動内容] 避難場所提供、生活・物資支援
[活動場所] 宮城県気仙沼市、岩手県大船渡市・陸前高田市
[寄付受付] コチラ

特定非営利活動法人ADRA Japan
[活動内容] 生活・物資支援
[活動場所] 宮城県仙台市・東松島市
[寄付受付] コチラ

特定非営利活動法人ジェン(JEN)
[活動内容] 生活・物資支援
[活動場所] 宮城県仙台市
[寄付受付] コチラ

特定非営利活動法人難民を助ける会
[活動内容] 生活・物資支援
[活動場所] 宮城県仙台市・石巻市
[寄付受付] コチラ

その他、被災地内外の多くの団体・機関が先遣隊の派遣や救済・救援活動を始めています。

防衛省・自衛隊

救済という枠にとどまりませんが、自衛隊も現地での活動を大規模に展開しています。
主な活動は、
航空機による情報収集、被害者の救助、人員、物資等輸送、給食・給水支援、
ヘリコプター映像伝送による官邸及び報道機関等への提供等です。
アメリカ軍も「トモダチ作戦」で自衛隊を支援し、これまでに約19,400名が救助されました。
 

このように、ボランティアや救援物資という手法で個人が貢献できる内容は、
残念ながら限られています。
そのため、個人の方ができることは「募金・義援金・寄付」や「節電」です。
また、企業の担当者の方々には、ぜひとも救援物資による支援をお願いいたします。

今日、日本におけるCSRやサステイナビリティに対して、
以下のようにとらえる方が数多くいらっしゃいます。

「企業利益を、社会貢献として社会に還元するためのコスト」
「途上国や環境分野に対する支援のためのコスト」
「ブランドイメージをあげるためのコスト」

特に、好景気下で、企業利益が増加しているときは、CSRが強調されますが、
不景気になると、CSR予算がカットされることも多く、
CSR活動そのものの持続可能性が疑われることがよくあります。

また、NPOというと、

「補助金や寄付金に依存する慈善活動」
「専門的スキルやマネジメント力に欠け、継続性に難あり」

と、特にビジネスパーソンの中に、NPOという存在そのものに
懐疑的な方が多くいらっしゃいます。

しかし、上記とは異なる考え方をし、
積極的にCSRやサステイナビリティに取り組むムーブメントが、
サンフランシスコの企業やNPOを中心に巻き起こってきています。

先週、学校の特別プログラムに参加し、サンフランシスコとシリコンバレーに本部を置く、
8つの企業・NPOを実際に訪問することができました。

1. As you sow: 社会的責任投資(SRI)を手掛けているNPO
2. GAP: 世界有数のアパレルメーカーのCSR関連部門
3. BSR: サステイナビリティ構築コンサルティングをしているNPO
4. SAP: ITベンダーの世界大手のCSR関連部門
5. IDEO: デザインコンサルティング会社
6. Taproot Foundation: プロボノサービスを提供しているNPO
7. TechSoup: IT商品を格安で世界のNPOに提供しているNPO
8. Clorox: 消費財メーカー大手のCSR関連部門

この中で、純粋なバックオフィス機能として
CSRやサステイナビリティに関わっているのは、GAPのみ。

その他の企業やNPOは、
CSRやサステイナビリティの分野を事業として営み、売上と利益をあげています。

1. As you sow: 企業に対するSRI商品やアドバイザリーサービスの販売
3. BSR: 企業に対するサステイナビリティ向上コンサルティングサービスの販売
4. SAP: 企業に対するCSR・サステイナビリティ支援システムの販売
5. IDEO: 企業に対するデザインコンサルティングサービスの販売
6. Taproot Foundation: NPOに対する事業コンサルティング・プロボノサービスの販売
7. TechSoup: NPOに対するIT商品の格安販売
8. Clorox: エコ商品「Green Works」の販売

彼らに共通するCSRやサステイナビリティに関する考え方は、

・企業CSR部門はCSRの目的を、社会貢献だけではなく、企業利益の向上ととらえている
・訪問したNPOはみんな収益源がきっちりしていて補助金や寄付金に頼っていない
・有名コンサル企業出身の人たちが実際のNPOの現場で活動している
・NPOには企業経営と同様のスタンスが必要だとみんな思っている

というもの。

CSRやサステイナビリティを、何か神聖なものとして特別扱いすることはなく、
社会のニーズに対する「新たなビジネス・市場」として、捉えています。

さらに、CSRの範囲も、従来は「環境」だけにフォーカスされていたものが、
最近では、社会・環境・ガバナンス・人権(SEG+HR)全体に及んできています。

企業をCSRに駆り立てる動機は何なのでしょうか。

訪問した企業からは、以下のような共通する思惑がみえてきました。

・エコに対する関心の高い層に対する新市場からの売上増
・企業・商品ブランド向上によるプレミアムマージンの獲得
・エネルギーや原材料効率を改善することでのコスト削減
・地域社会との共存を実現することでの原材料の安定供給の実現
・従業員満足度を高めることでの人的関連費の削減
・労働環境改善による製品の質の向上
・訴訟、罰金、ボイコットなど利益減を招くリスクの低減

このように、CSRやサステイナビリティを、企業利益に貢献するものととらえており、
投資対効果の測定も行われています。

そして、企業が利益向上のためにCSRを推進したいというニーズに対応し、
他の企業やNPOがサービスを販売し、市場が形成されているという構造です。
もちろん、ビジネスを継続させるために、それぞれのプレーヤーは、
「より少ない投資でより大きな成果をあげる」ためのイノベーションに取り組んでいます。

一方で、各プレーヤーが抱える課題は大きく2点です。

①CSR活動が果たす財務パフォーマンスへの影響測定の可視化、精緻化
②オペレーションレベルでのモニタリング・効果測定の向上

この課題をニーズと捉え、SAPがいち早く事業として取り組み始めています。

従来、「コストセンター」として見られてきたCSRやサステイナビリティ活動は、
現在、その姿を大きく変えつつあります。

世界に冠たるアパレルメーカー、GAP.Inc

「GAP」「BANANA REPUBLIC」「OLD NAVY」「PIPER RIME」等の
ブランド有し、世界各国に合計3200以上の店舗を持っています。

このGAP本社のCSR部門の方からレクチャーを受ける機会があったので、
その内容をもとに、アメリカの大手企業のCSR活動の実状を紹介したいと思います。

GAPは、CSR活動が高く評価されているアメリカの大手企業の中の1社です。
Dan Henkle常務(社会的責任担当)率いるCSR担当のメンバーは現在、総勢70名。
GAPの全ブランドを横断的に担当しているコーポレート組織です。
そのうち、サンフランシスコのベイアリアの本社にいるのは10名ほど。
残りのメンバーは、世界中に散らばり業務を遂行しています。

この部署のメンバーの多くは、物流部門や製造部門、デザイン部門など、
社内のそれぞれの部署から異動してきた人が多く、
それぞれの部署での専門知識をいかして、業務に取り組んでいます。
NPOなどの出身者は極めて少数派です。

部署は大きく4つのセクションから構成されています。

■モニタリング/販売店開発

世の中の関心の高い「児童労働」「有毒物質」などに対し、
GAPの全ブランドのサプライヤー(供給者)が、これらの活動に抵触していないかどうか、
モニタリングし、調達から販売まで一貫した「CSR的なサプライチェーン」の構築に
責任を持っています。
担当範囲は自社だけでなく、無数の協力企業や、協力企業の協力企業に及びます。

■パートナーシップ

外部の環境団体や政治団体、人権団体などとパートナーシップを組み、
GAP本体や協力会社の改善をしていくのが役割です。
CSR活動の多くは、このような外部団体からの持込み案件が多く、
一歩関係構築を間違えると、GAPのブランドを大きく傷つけることにもなってしまうため、
非常に重要な役割を担っています。

■環境

ゴミ削減や省エネ、廃棄物削減など、社内の環境改善活動に責任を負っています。
「省エネ電気の導入」「デスク周辺のゴミ箱設置廃止」など地道な活動もありますが、
リサイクルを推進するため、行政当局に働きかけていく大がかりなものもあります。
ニューヨークに新たなデザインセンターを開設した際には、
リサイクルシステムのなかったニューヨーク市と粘り強く交渉し、
市としてのリサイクル活動開始に大きな影響力を発揮しました。

■戦略企画/コミュニケーション

CSRレポート作成や重大テーマの設定などを担当しています。
最大の課題は、CSR活動の効果測定や利益インパクトの算出。
効果の量的分析については、GAP以外の企業も悩んでいるテーマです。
※実際のレポートをコチラからダウンロードできます。

このように、CSR活動の担当範囲は、
人事、総務、調達、店舗管理、法務、政府交渉など多岐にわたり、
部署をまたぐ案件をプロジェクトマネジメントをして推進していくことが中心となっています。

活動テーマの多くは、外部の団体(NPOなど)からの指摘や提言によるもので、
その中で重要で解決できそうなテーマから着手をしていきます。
持ちかけのある代表的な外部団体は、
As You Sow Foundation
Domini Social Investments
Calvert Asset Management Company
Center for Reflection, Education and Action
Interfaith Center on Corporate Responsibility
などです。

これらの団体は、GAPが抱える潜在的な「リスク」を教えてくれる頼もしい存在ですが、
同時に、無理難題を持ちかけてくる「厄介な」存在でもあります。
彼らは、指摘とともに解決方法を提示してくれることもありますが、
「原料のトレーサビリティ」など、GAPだけでは手に負えるものでもないものが多く、
頭を悩ませています。

そこで、NPOが持ちかけてきた案件を、ソリューションをともに考えてくれるNPOに相談し、
状況を改善していくことが多くなります。
このソリューション担当NPOの代表格が、BSRです。
BSRは世界の大手企業や、ソーシャルエンタープライズ、NPOとネットワークを持っており、
一社単独では解決しにくいテーマに対し、
業界全体で手を打っていくソリューションや、
他のソーシャルエンタープライズを巻き込んで、
効率的・効果的に解決していくソリューションを強みとしています。

こうした中で、GAPはCSR活動、または社会的貢献活動の財務的メリットを、
「企業ブランドの維持・向上」「製品の質の向上」に置いています。
すなわち、企業ブランドを維持することで、製品ボイコットなどのリスクを減らすとともに、
労働環境の改善や、原料の改善から、製品の質そのものが向上することを、
全社利益への貢献と定義しています。
また、省エネによるコスト削減効果も意識されています。

社会的責任部門と、ファイナンス部門との関係も良好で、
CEOのリーダーシップのもと、昨今の不景気の中でも、社会的貢献部門の予算は
一切削減されなかったという事実を、彼ら自身も誇りにしているようです。

今後の大きなテーマは、
① オペレーションレベルでの行動モニタリングと効果測定
② サプライチェーンの省エネを徹底したコスト削減
が2大テーマとされていました。

上記のようなGAPの取り組みから、

・「エコ推進派」の企業による、「エコ消極派」行政の改革
・NPOによる課題発見とソリューション構築
・オペレーションレベルのモニタリングの仕組みの必要性増加

というアメリカの動きが見てとれます。

※僕の別ブログである「アメリカ・サンダーバードMBA留学ブログ」から転載しました。

今回のテーマは、奴隷です。
サンフランシスコ大学神学・宗教学部のDavid Batstone教授が、
ご自身が創立したNPO Not For Saleキャンペーンについて
説明してくれました。

この時代に奴隷や人身売買と言われても、
最初は正直ピンとこないかもしれません。

しかし、人身売買は現在でも行われており、
アメリカでは大きな問題になっています。

Not For Saleは、Batstone教授ご自身の体験談を機に
発足されました。

彼が大好きだったインド料理レストランで、ある日火災が発生。
アルバイトの女性が焼死。
事故究明の過程で、なんと彼女はインドで人身売買で売られ、
アメリカに連れてこられていたことが判明。
この事実を知った、Batstone教授は、
自分の身近に人身売買が行われていたことにショックを受けます。

その後、彼は世界の人身売買状況について調査をし、
人身売買が頻繁に行われているタイ、ラオス、中国南西部、ミャンマー、
カンボジア、インドなどに、
自分の足で赴き、実態を把握していきました。

そこで判明したのは、
生活苦にあえぐ貧しい人々が、自分の子供を売り、
嫌がる子供を、業者が力づくで拘束し、連れ去り、
その「奴隷」は、アメリカなどでも「販売」されているということ。

そこで、彼はNot For Saleを立ち上げます。
このNPOは複合的なアプローチをとっています。

まず、アメリカ国内で人身売買を撲滅するため、
アメリカ全土で、人身売買の調査を継続して行い、
人身売買フローについての、膨大なデータベースを構築します。
「何をするにも、データがないとはじまらない」
彼はそう語ります。
そのデータベースをもとに、警察・検察当局と協議を行い、
現在は、当局とともに取締を強化しています。

同時に、人身売買についての認知を高めるため、
プロスポーツ選手等とタイアップし、
メディアミックス手法によるキャンペーンを展開しています。

これらが、デマンドサイドの対策です。

サプライサイドの対策も実施されています。
人身売買の発生源である、東南アジア地域で、
親が面倒をみれなくなった人々を救う、
学校兼生活支援施設を建設。

同時に、その資金源を獲得するため、
年長者には雇用も提供します。
主に、服飾関連のビジネスを立ち上げ、
基本的に、寄付に頼らない財務体質を作り上げています。
彼は、倫理学の教授でありながら、
自身でベンチャーキャピタルを営んだりもしています。
彼の信念は、「寄付や援助に頼る組織は、継続できない」。
Net For Saleは、今では、毎月利益を出し続けています。

最後の質疑応答の時間で、学生の一人がこう質問しました。

「人身売買を扱う社会的機関は今はほかにもいろいろある。
どのようにそれらの競合と差別化しようとしているのか?」
ビジネススクールらしい質問です。

彼はこう答えます。

「自組織で全部を実施しようとすると、他の全員が競合になる。
 自組織の役割やポジションの詳細を定めると、他の全員が協働者になる。
 Not For Saleは様々な機関と協働して成り立っている。」

とても素敵な言葉でした。

「企業は、社会問題の何を解決しようとしているのかを、まず考える必要がある。
 それを見据えてから、自分たちのビジネスを定めることができる。」

彼は、このようにも語ります。

環境問題、高齢化問題、食糧問題、雇用問題、格差社会問題。
問題が山積している21世紀の企業のあり方について、
ひとつの指針を、Batstone教授は与えてくれているように思います。

Net Impact(ソーシャルビジネスやCSRを推進するアメリカのNPO)が、
この分野での就職を希望する人々へのアドバイスをまとめたレポートを発表しました。

Corporate Careers That Make a Difference

CSRやソーシャルビジネス、持続可能性に興味のある人向けに、
企業の具体的なニーズやキャリアパスの進め方などが
まとめられています。英語です。

Net Impactへのメンバー登録(無料)をしないと閲覧できないのですが、
この分野に関心のある方や、雇用関連を研究している方は、
ご覧頂くと、最近のアメリカでの動きを理解していただける思います。

ここ数年、中央政府も地方政府も大きく税収が落ち込んでいます。
これは日本だけでなく、アメリカでも同様です。

昨日、Alliance of Arizona Non-Profitというアリゾナ州のNPO連合会から
届いたメールニュースに、アリゾナ州の苦境が報じられていました。

アリゾナ州では、全米の中でも大きく税収が落ち込み、
来年に、今年度と同様の行政サービスを提供しようとすると、
約14億ドル(約1200億円)不足してしまうということです。

アリゾナ州知事は不足分を支出の削減で乗り切る案を示し、
特に、NPOなどへの支援を削減する姿勢を示しました。

さらに、今後の税収不足を補うため、
これまで税優遇されていたNPOなどに対し、
課税を検討していることも報じられていました。

政府がNPOへの支援を削減することは、社会保障の観点からみて、
喜ばしくない方針のようにも見えますが、そうともいえません。
NPOへの支援を削減しなければ、
政府は他の行政サービスを削減せざるをえず、
結果的に社会的なサービスが削られることになるからです。

この状況に対してアリゾナNPO連合会が示した姿勢は、素晴らしいものでした。
政府からの支援削減に対して抗議をしてもよさそうなものですが、
そうではなく、加盟NPOに対して冷静に、
財政とNPOの持続可能性が密接に結びついていること、
自分たちの活動を継続していくためには、
自分たちが変わらなくてはいけないこと、を呼び掛け、
来る集会では活動の持続可能性を高めていく道を模索していくことを
議題にすることを発表していました。

NPOなど社会的セクターの多くは、現在政府からの財源に頼っています。
しかし、政府自体が資金難に陥っていく中で、
政府とともにNPOの経営自体も変わっていかなくてはいけません。

このような状況に迫られているのは、アリゾナ州以外にも世界にたくさんあります。
自立した社会的セクターの構築を一緒に目指していきたいと思います。