前回、地熱発電の仕組みを紹介しました。
地熱発電所とは何か?~仕組みと可能性~

地熱発電は、地球が発する熱を利用した環境に優しい発電方法です。

しかしながら、太陽光や風力発電が昨今注目される中、
地熱発電は、ここ近年日本で進展はしていません。

日本の地熱発電の推移
※出所:資源エネルギー庁

日本で初めて地熱発電所が実用化されたのは1966年。
岩手県八幡平市の松川地熱発電所が日本第1号です。
最大出力量は23,500kw。
現在も稼働している現役の発電所です。

もともとは、日本重化学工業社が建設・所有していましたが、
現在は、東北電力のグループ会社、東北水力地熱が所有しています。

その後、東北地方と九州地方を中心に、合計18か所に地熱発電所が建設されます。


※図:国立環境研究所

そして、最後に建設された地熱発電所は1999年に運転を開始した八丈島地熱発電所。
現在まで、東京電力が保有する最初にして唯一の地熱発電所です。
最大出力は3,300kwと小規模ですが、八丈島で消費される電力の1/3を賄っています。

この八丈島での運転開始から今日まで12年間、日本で地熱発電所は建設されていません。
その背景については、後日、解説していきたいと思います。

さて、現在、全国18の地熱発電所で生産されている電力量は、年間2,750GWh。
数が大きいように言えますが、日本の総電力消費量1,083,142GWh(2008年)の、
わずか0.025%を占めているにすぎません。

この日本の状況を他の国と比較してみましょう。

〇 日本と世界各国の地熱発電量

世界の地熱発電量推移

世界の地熱発電量推移


※出所:EIA

〇 地熱発電各国における地熱発電の割合

地熱発電は世界全体の発電量の0.3%(2008年)。
ちなみに、再生可能エネルギーの分野では、
水力16.2%、風力1.1%、バイオマス1.0%、太陽光0.06%、
バイオマス0.04%という状況です。


※出所:IEA

世界の地熱発電量が限られている理由のひとつに、
地熱を活用できるエリアが世界で限られているという点が挙げられます。

今日、上記の図で赤くなっているところを中心に、地熱発電が推進されています。

地熱発電の設備容量(2008年)をみても、発電量とほぼ同様の順位が得られます。


※出所:EIA

■ 世界の地熱発電大国アメリカ

世界のトップは30年前からアメリカです。
西部の火山地帯にある広大な土地を中心に、77の地熱発電所が現在稼働しています。

アメリカの地熱発電所での発電量(赤)と熱源利用量(緑)

アメリカの潜在的な地熱資源量

1970年代の石油危機を機にアメリカでは、エネルギー源の分散が図られ、
その中で注目されたもののひとつが地熱発電です。
アメリカ政府は、地熱発電の研究開発に資金を投じると同時に、
Geothermal Energy Research, Development and Demonstration (RD&D) Act
(地熱エネルギー研究開発実証法)を1974年に施行し、
巨額の資金が必要な地熱発電所建設に対する政府のローン保証プログラムを開始。
低リスクとなった地熱発電に対する電力会社等の投資が促進されていきます。

さらに、地熱発電の加速要因となったのが、バイナリーサイクル技術の誕生です。
※バイナリーサイクル技術については前回ブログを参照ください。
従来では発電に必要な熱エネルギーを持たなかったエリアでも、
地熱発電が可能となり、さらに投資が進みました。

その流れで1980年に相次いで地熱発電所が稼働を開始、一気に世界をリードしました。
しかし、1990年以降、地熱発電量は横ばいです。
原因としては、ローンプログラムの欠乏、連邦政府管理地の使用許可規制などが、
挙げられており、現在、地熱発電促進の阻害要因を取り除く検討が、
連邦政府及び州政府にて進められています。

そして、2005年に制定されたエネルギー政策法により、
地熱発電が米国政府の再生可能エネルギー生産税控除を受けられるようになったため、
米国西部の多くの市場で は現在、
地熱資源で発電される電力のコストが化石燃料による電力コストと等しくなり、。
経済情勢が追い風となり、地熱産業は急速に活性化しています。(コチラを参照)

■ 原子力発電を中止し、地熱発電に注力したフィリピン

世界の第2位の地熱発電量を誇るのがフィリピンです。
1972年に制定された地熱発電開発に関する大統領令(PD1442)で、
地熱発電事業者に対する大幅減税や減価償却期間引き伸ばし、専門家招致など、
インセンティブ施策が整備されました。

さらに、1976年に原子力発電所が着工し、1985年工事がほぼ終了したものの、
1986年に発足したアキノ政権は、同発電所の安全性および経済性を疑問視し、
運転認可が見送った結果、さらに地熱発電の重要性が増していきました。
結果、1990年代にフィリピンの地熱発電量は大きく増加しました。

フィリピンでは発電量の17.6%が地熱発電で賄われています。

現在でも政府は地熱発電をさらに推進していく姿勢を示しており、
現在の地熱発電設備容量195.8万kWhを、2013年までに313.0万kWhにまで
高める計画を掲げています。

■ 地熱発電の新たなリーダーになるインドネシア

インドネシアは、2000年代に入ってから急速に地熱発電量を増加させてきています。

インドネシアにおける地熱発電の魅力は、その資源量の豊富さです。


※出所:NEDO

インドネシアは地熱資源量において世界でダントツのトップです。
地熱発電量2位のフィリピンを大きく上回る地熱資源量を有しています。

2005年に当時のユドヨノ政権は、2025年までの地熱発電量目標を設定。
2008年時点で93.3万kWhの地熱発電設備容量を、
2025年に950.0万kWhにまで増加させるとしています。
ちなみに、福島第一原子力発電所の発電容量は約500.0万kWh。
その約2倍もの地熱発電を行うという計画です。(コチラを参照)

しかしながら、現在、この計画はスケジュールが大幅に遅れている状況です。
原因は、地熱発電への設備投資を民間設備投資に大きく依存している状況です。
政府政策の不安定性、政府からの財政支援の欠如、発電建設所投資の不確実性リスクなど
から民間企業の設備投資が思うように進んでいないことが、
インドネシアの現在の大きな課題です。

■ 急速に地熱発電の開発が進むアイスランド

アイスランドはほぼすべての全力を、再生可能エネルギーで賄っている国です。
そのうち75.5%を水力、残りの24.5%を地熱発電で調達している、地熱先進国です。

アイスランドの特異な点は、その立地にあります。
その他の地熱発電がマグマ溜りを熱エネルギーの供給源にしているのに対し、
アイスランドだけは、ホットプルームを熱供給源としています。
アイスランドは、ホットプルームの上に位置している特異な島なのです。
※マグマ溜りとホットプルームについては前回ブログをご覧ください。

そのため、アイスランドでは他のエリアより高温の熱エネルギーが得られ、
効率的な地熱発電が可能となっています。
2000年入ってから、大型の地熱発電所が次々と操業を開始し、
地熱発電の電力が急速に伸びています。

さらに、アイスランドでは地熱を発電目的だけでなく、
熱エネルギー目的でも使用しています。
具体的には、冬期の路上凍結を防ぐための路面温度上昇のための熱、
商業用・家庭用の温水生成のための熱などが挙げられます。

■ 新たな発電所建設が進まず年々発電量が衰える日本

一方、日本は1997年をピークに、年々地熱発電量が減少しています。
理由は、新たな発電所の建設が1999年以降進んでいないことと、
既存の発電所の発電量が、地下熱の低下により、落ちてきていることです。
そこで、2006年に地下熱の低下でも発電を可能にするためのバイナリーサイクル方式が、
八丁原発電所に導入されました。

それでも、日本は世界第3位の地熱資源量を誇る国です。
他の地熱資源保有国が地熱発電への投資を加速させる中、日本は出遅れています。

この日本における地熱発電はなぜ停滞しているのか。
その原因については、あらためてこのブログでお伝えしていきたいます。

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電力・エネルギー等サステナビリティに関する最新トピックスは、Sustainable Japanに掲載しています。御覧ください!

※2015年の時点の最新データを含めてコチラにアップデートしましたので御覧ください。

前回、日本のエネルギー・発電供給状況についてレポートしました。
日本のエネルギー・発電力の供給量割合

今回は世界各国の状況をお伝えしていきます。

はじめに、2008年の世界主要各国の発電電力の電源割合をまとめました。


※出所:IEA

ヨーロッパ諸国は原子力発電に対する依存度が高い

ヨーロッパは原子力発電を大いに活用した発電をこれまで実施してきています。
原子力発電の割合は、フランス(76.4%)、ベルギー(53.7%)、スウェーデン(42.6%)、
スイス(40.2%)、フィンランド(29.6%)。
これらの国は日本の原子力割合23.9%を上回っています。
さらに、ドイツ(23.3%)、スペイン(18.8%)、イギリス(13.5%)と続きます。

背景には、エネルギー自給率を高めようという狙いがあります。
例えば、フランスは国内に天然資源が少なく、火力発電を行うためには、
化石燃料を国外より調達する必要があります。
天然ガスパイプラインが高度に整備されているヨーロッパ諸国では、
ロシアやカスピ海周辺からの天然ガスの供給も技術的には可能です。
しかし、安全保障上の観点から海外依存度を高めたくないフランスは、
原子力発電所強化によるエネルギー自給率向上の道を選んでいます。

一方、石炭の産地であるドイツや、北海に油田やガス田を有するイギリス、デンマークでは、
国内産の化石燃料を使った火力発電が可能ですが、
他の先進国と同様、原子力発電を「経済的な新技術」として迎え入れ、
1950年以降建設を進めてきました。

しかしながら、国内外での原発事故を機に、脱原発の機運がいくつかの国で高まっています。
結果、ドイツ、ベルギー、スイスでは、原子力発電所を全廃する方針が決まっています。
その他の原子力発電所依存度の高い、イギリス、スペイン、スウェーデンでも、
脱原発を求める社会運動が活発化しています。

原子力発電所依存度ゼロのイタリア、デンマーク、ノルウェー

原子力発電所の安全性に懐疑的なイタリア、デンマークでは、
早くから原子力発電所を放棄する選択をし、現在、原子力発電所は稼働していません。
※放棄を決めた年は、イタリア(1987年)、デンマーク(1985年)。
国内での発電能力が乏しくフランスからの電力輸入に依存しているイタリアは、
原発再開を政権目標としていましたが、福島第一原子力発電所事故後の国民投票で、
原発再開に94%が反対し、再開計画を見送りとなっています。

再生可能エネルギーに力を入れるデンマーク、ドイツ、スペイン、イタリア、イギリス

エネルギー自給率の向上、原子力発電所への懸念という大きな流れ、
さらには、環境に対する関心の高まりを受け、
デンマーク、ドイツ、スペイン、イタリア、イギリスでは、
風力や太陽光などの再生可能エネルギーが大々的に促進されています。

ドイツ、スペイン、イタリアでは2005年から大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設が活発になっています。
※詳細は「メガソーラーの可能性 ~世界の太陽光発電プラント・トップ30~
2008年時点で、太陽光発電の占める割合は、
ドイツ(0.7%)、スペイン(0.8%)、イタリア(0.1%)ですが、
2009年、2010年にこの割合は、2倍前後に拡大していると推測されます。

一方、風力発電が促進されている国は、デンマーク、スペイン、ドイツ、イタリア、イギリスです。
太陽光発電と同様2005年前後から建設は進み、2008年時点で、風力発電が占める割合は、
デンマーク(19.0%)、スペイン(10.3%)、ドイツ(6.4%)、
イタリア(1.5%)、イギリス(1.8%)。
こららの国では、2009年、2010年ともに風力発電はさらに拡大を続け、
特に最近では、イギリス、デンマークでの洋上風力発電(オフショア風力)の建設が進んでいます。
※詳細は「世界の風力発電動向~各国発電量と洋上・陸上風力発電所ランキング~

ヨーロッパにおける再生可能エネルギー促進の背景となっているのが、EU目標設定です。
1997年にEUは、
「2010年までに最終エネルギー消費の12%を再生可能エネルギーで賄う」という
政策目標を掲げ、さらに2004年に、
「2020年までに20%」という長期目標を掲げました。
このEU目標は、各加盟国に対する目標設定を義務付けることにつながり、
結果として、国を挙げての再生可能エネルギー大号令が始まっています。
EUが定義している再生可能エネルギーには、水力発電も含んでいるため、
各国の目標設定には、水力発電の状況を鑑み、大きな開きがあります。
※EU加盟国ごとの目標数値はコチラ

海外からの化石燃料輸入に依存する日本・韓国・台湾

国内に化石燃料資源の乏しい日本・韓国・台湾は、
石炭・石油・天然ガスを輸入することで電力需要を賄っています。

その結果、この3か国の化石燃料輸入量は世界でもトップレベルです。
========================================
石炭:日本1位(187Mt)、韓国3位(119Mt)、台湾5位(63Mt)
石油:日本3位(179Mt)、韓国5位(115Mt)
天然ガス:日本1位(99bcm)、韓国6位(43bcm)
========================================

化石燃料の海外依存度は、「資源枯渇時の脆弱性」「安全保障上の脆弱性」
「資源逼迫時の価格高騰」という3つの脆弱性を内包します。
エネルギー自給率の向上は3か国それぞれの戦略課題となっています。

また、非資源国であるという同じ理由で、原子力発電の割合も多いのが特徴です。

国内産石炭に大きく依存する中国・インド・オーストラリア・南アフリカ

世界の石炭産出国ランキングは、2010年時点で以下となっています。
============================
1位 中国(3,162Mt)
2位 アメリカ(997Mt)
3位 インド(571Mt)
4位 オーストラリア(420Mt)
5位 インドネシア(336Mt)
6位 ロシア(324Mt)
7位 南アフリカ(255Mt)
=============================

この上位7か国で世界全体の石炭産出量の84%に達します。
そして、この産出国は国内の発電における石炭依存度が非常に高い状況になっています。
中国(79.1%)、インド(68.6%)、オーストラリア(76.8%)、南アフリカ(93.2%)。
その他のアメリカ、インドネシア、ロシアでは石油や天然ガスも産出できるため、
石炭単独の依存度は50%を下回っていますが、化石燃料全体の割合はやはり高いです。

今後、上記の中国、インド、南アフリカなどの新興国が経済発展するにつれ、
同国内での電力需要は飛躍的に向上していくことが予想されます。
その際、世界の石炭価格はさらに高騰し、石炭だけで電力需要を賄いきれなくなった
国々は、他のエネルギー源を用いた発電に着手をしていくと考えられます。
例えば、昨年、世界の半数近くの石炭を算出している中国が、
さらに海外産の石炭を輸入し始めるという石炭の純輸入国に転じています。
インドもすでに石炭の純輸入国となっています。
中国やインドでは、風力発電、太陽光発電などの建設が進んでいますが、
この流れをどこまで加速できるかに、世界の化石燃料価格の趨勢がかかっています。

さらに、石炭は、石油や天然ガスに比べ、発電1kWあたりの温室効果ガス発生量が多く、
環境面から問題視されている燃料源です。

石炭を効率的に電気エネルギーに転換する技術においては日本企業が優れています。
日本の技術を他国に導入していくことで、世界の石炭消費量の増加を抑制することも可能です。

拡大する先進国・新興国での天然ガスの活用

多くの先進国、新興国では、天然ガスに対する依存度が非常に大きい状態となっています。

特に、原子力発電所をもたない新興国(東南アジア、西アジア、アフリカ、南米)では、
この天然ガスからの発電割合がとても大きいのが目立ちます。

天然ガスは、石炭や石油に比べ、温室効果ガス排出量が少ないですが、
温室効果ガスそのものを排出することには変わりはなく、
天然ガス火力発電の伸長は、地球温暖化に悪影響を与えます。

多くの国では、原子力発電所の設置を検討して言いますが、
福島第一原子力発電所事故の経験もあり、どこまで浸透するかは不透明な状況です。
その状況下で、新興国でも再生可能エネルギーの建設が促進されています。
再生可能エネルギーの発電コストが高いことが注目されていますが、
天然ガス価格の高騰は、既存の火力発電コストを押し上げることも意味します。
火力と再生可能エネルギーとの相対的な発電コストの差は縮まっています。

フィリピンとインドネシアで進む地熱発電

再生可能エネルギー全体の中でも、フィリピンの地熱発電割合(14.4%)は目立ちます。
また、インドネシアでも3.2%をマークしています。
フィリピンとインドネシアは環太平洋造山帯に位置する火山地帯。
豊富な地熱を重要なエネルギー源として位置付けています。

フィリピンでは、1976年に原子力発電所が着工し、1985年工事がほぼ終了したものの、
1986年に発足したアキノ政権によって同発電所の安全性および経済性が疑問視され、
運転認可が見送られた経緯があり、その後、地熱発電を大きく促進しています。
インドネシアでも、一時検討されていた原子力発電所計画が、福島第一原子力発電所事故を契機に頓挫し、
その後、大規模な地熱発電の拡大計画を政府が打ち出しています。
こうして、フィリピン、インドネシアともに、地熱発電プロジェクトには、
海外の金融機関や商社も大規模に出資を行い、開発が進んでいます。
※詳細は「世界と日本の地熱発電の状況~日本、アメリカ、フィリピン、インドネシア、アイスランドを中心に~

水力発電の割合が大きいブラジル、スイス、ノルウェー、カナダ、スウェーデン、ベトナム

水色の水力発電の割合が大きいのがこの6か国。
豊富な水資源と勾配の激しい山地により、大規模な水力発電所が設置されています。
特に顕著なのがノルウェーとブラジルで、
それぞれの発電全体の98.5%、79.8%を占めています。

水力発電も再生可能エネルギーのひとつとみなされ、注目を集めていますが、
多くの先進国では、大規模ダムの建設は一通り終了しており、
水力発電所の数は横ばいとなっています。
一方、発展途上国では今後の発電の柱として、水力発電を位置付けており、
世界銀行などが建設を支援しています。

水力は温室効果ガス排出量が最も少なく、維持コストも小さいエネルギー源である一方、
堆砂によるダム寿命の縮小、魚類生態系への影響、水質の変化など負の側面も有しています。
さらに、近隣居住地や歴史的文化物の水没など社会的な損失ももたらします。
そのため、大規模水力発電を再生可能エネルギーから除外して考える考え方もあります。
 

ここまで、発電割合から各国の状況を見てきましたが、
最後に、2008年の各国の電力消費量の状況もみておきたいと思います。


※出所:IEA

ここから3つのポイントを指摘できます。

北欧諸国は一人あたりの電力消費量が多い

電力消費量が突出しているのが、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、そしてカナダ。
背景にあるのは、厳しい冬場の暖房費です。
寒冷地域の暖房性能の改善や、家全体の断熱効果の改善は、
これらの国の電力消費量を下げることにつながります。

アメリカ・オーストラリアは電力浪費が多い

一方、寒冷地域でないのにかかわらず、電力消費量が多いのがアメリカ、オーストラリア。
この2か国は、一人あたりの電力「浪費」が多い、電力浪費大国社会であるといえます。
世界全体のエネルギー効率改善のために、
浪費生活の見直しと、発電、配電、エネルギー転換のそれぞれの効率を
さらに向上することが求められます。

新興国の電力消費量は今後上がる可能性大

ヨーロッパ諸国と日本の電力消費量が6000~8000kWhであるのに対し、
新興国の水準は500~2000kWh。
すなわち、今後の経済発展により、電力消費量は10倍程度まで増加すると見込まれます。
そのため、世界全体の見地から見た、エネルギーの最適化が今後必要となります。
改善できるものを素早く見極め、企業・政府・家庭が一体となって減らせるものを減らすという
努力が必要になっていきます。
 

原子力発電に関する懸念が高まる中、発電拡大に対するスピードが遅くなるのであれば、
消費を効率化することを考えなければなりません。
東日本大震災後に展開された「節電」を一時的なものと考えず、むしろチャンスととらえ、
「何を減らせるか?」「どうしたら効率をあげられるか?」という知恵が今求められています。

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ここ数年、企業に対して、ESG(環境・社会・ガバナンス)分野に関する法規制が、
欧米諸国を中心に強化しつつあります。

今回は、その中でも特に重要だとされているものをご紹介します。
BSRのレポートを参考にしました。

〇 U.K. Bribery Act 2010(2010年イギリス贈収賄防止法)

イギリスで2010年4月に制定された贈収賄防止法が、2011年4月に施行されます。
この法律は、過去になく適用範囲が大幅に拡大されているのが特徴です。
通常の贈収賄防止法は、国内に上場または登記している企業が対象なのですが、
この法律は、適用範囲が国境を超える、域外適用を認めています。

例えば、登記していなくても、イギリス国内の企業や個人と販売・調達の取引がある、
イギリス国内を通過する物流を行っているなど、なんらかの事業活動のつながりが、
イギリス国内にあれば、その企業は適用範囲となります。

また、イギリス国民に対しては、国外にいても適用されます。

そのため、日本に登記をしている企業が、インドで贈収賄行為を行ったとしても、
その企業がイギリス国内でも事業をすれば、その贈収賄行為にもこのイギリス法が
適用され裁かれます。

また、「贈収賄行為」の範囲も例のないほど拡大され、
いかなる「便宜行為」も例外として認められません。
企業や個人が、自分の利益のために、他者・他社に対して金品を渡す行為は、
すべて「贈収賄行為」として認識されます。
間に代理人等を介して行う場合でも、訴追されます。

この法を犯した場合は、個人に対し10年以下の懲役または禁錮が課せられます。
刑期の長さでも他に例を見ません。
例えこの法律に対する認識がなかったとしても、同法律は適用されます。
 

〇 U.S. Dodd-Frank Act(ドッド・フランク法)

この法律そのものは、リーマンショック後の金融規制強化のために制定されましたが、
同法1502条に、コンゴ民主共和国の紛争資源に関わる条文が盛り込まれています。

同法自体は2010年夏に制定されていますが、紛争資源に関わる詳細は、
SEC(アメリカ証券取引委員会)に審議に委ねられており、
SECは2011年4月に最終ルールを施行する予定としています。

紛争資源として定められているのは、錫、タンタル、タングステン、金の4種類。
そのほか、SECが必要と定めた場合には、他の鉱物も追加されます。

この法律の適用対象者は、アメリカで株式上場をし、さらに、上記の4種類の鉱物を
原料として必要とするすべての製造業者。
これらの企業は、この4種類の鉱物の原産国が、
コンゴ民主共和国および周辺諸国(スーダン、中央アフリカ、コンゴ共和国、アンゴラ、
ザンビア、マラウィ、タンザニア、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジ、タンザニア)であるかどうかを
開示しなければなりません。
原料の直接の購入者でなくとも、調達先をたどり原産国を特定する必要があるため、
サプライチェーンの途中にいる企業に対しても事実上同様の努力が課せられることとなります。

ルールとして定められている要求事項は、
・原産国がコンゴ民主共和国および周辺諸国であるかどうかを開示しなければならない。
・原産国が当該諸国でない場合は、それを第三者機関などが認証しなければならない。
・原産国が当該諸国である場合や判断できない場合は、「紛争鉱物報告書」を作成しなければならない。

罰則については現在、SECにて検討されています。
 

〇 California Transparency in Supply Chains Act(カリフォルニア州サプライチェーン透明法)

カリフォルニア州で2010年9月に制定された州法です。
米国で社会問題となっている人身売買の防止を強化するために定められました。

カリフォルニア州内のすべての企業は、人身売買を防止するための取組につして、
ホームページ上などで公開することが義務付けられています。
また、国際人権規約を順守することも、同様に義務付けられています。
 

〇 EU Flegt Law(EU木材規制)

2010年にEU域内27か国に適用される木材規制が制定されました。

これは、違法な方法で伐採・生産された木材製品の取引を禁じるものです。

同法は2013年3月3日に施行され、以後、EU域内の木材取引企業には以下の義務が課されます。
・違法な方法で伐採・生産された木材製品の取引の禁止
・全ての木材製品がEU域内に持ち込まれた時点で、違法性有無のデューデリジェンスを実施。
・トレーサビリティ確立のため、全ての木材製品取引において買い手と売り手の記録。
 

〇 OECD Guidelines on multinational enterprises(OECD多国籍企業ガイドライン)

2011年5月に制定されたガイドラインで、環境、労働環境、人権、賄賂などについて、
多国籍企業が守るべき事項が書かれています。

こちらは法律ではありませんが、42か国が同ガイドラインに採択しており、
企業が自主的に守るべき規制として、今後認識されていく可能性が非常に高いです。

〇 UN Guiding Principles on Business and Human Rights(国連ビジネスおよび人権原則)

こちらも人権について書かれた国連のガイドラインで、2011年6月に制定されました。

企業経営において守るべき人権項目が説明されています。

OECDガイドラインと同様、法律ではありませんが、国連の人権委員会で採択されたものであり、
国内法の規制強化へと方向づけるものになる可能性があります。

 

企業のグローバル化とは、海外の法規制に対してもアンテナを張り、
順守していく努力を必然的に伴います。
今回紹介したものは、ぜひ日本のグローバル企業の皆さんにも知っておいて頂きたいと思う
ものたちばかりです。

先日、世界のメガソーラー(大規模太陽光発電)の世界の状況についてレポートしたのに続き、
今回は、世界の風力発電の状況をご紹介したいと思います。

世界の風力発電の大規模化は、太陽光発電を大きく凌駕する勢いで進んでいます。
例えば、現在の世界最大規模の太陽光発電所は、カナダのSarnia で92MW。
一方、現在の世界で最大規模の風力発電所は、アメリカのRoscoe で781.5MW。
8倍以上の開きがあります。
さらに、風力発電所の大規模化は今後も大きく進むと予想され、
中国は5000MWを超える超巨大風力発電所を2020年に甘肃省にオープンする
ことを発表しています。
※世界の風力発電所ランキングについては後述します。

世界の風力発電は、2006年あたりから、急速に造塊しています。
世界風力エネルギー協議会(Global Wind Energy Council: 通称GWEC)が
発表している、世界の風力発電トップ12か国を見てみましょう。


※出所:GWECレポート Global Wind Report 2010, 2009, 2008

ご覧いただくと、中国、アメリカ、ドイツ、スペイン、インドが
世界の風力発電を大きくリードしていることがわかります。

ドイツ、スペインは太陽光発電の分野でも世界をリードしており、
再生可能エネルギー全般にを政府が全面的に後押ししていますが、
その両国を超えるスピードで、中国、アメリカ、インドでは、
風力発電の建設が進んでいます。
中国は2010年ついに累積風力発電量で世界トップとなりました。

続いて、大規模風力発電所の状況を紹介します。
風力発電所はその立地により、オンショア風力発電(陸上風力発電)と
オンショア風力発電(洋上風力発電)に大きく分けられます。

大規模化が著しく進んでいるのは、建設コストが少ないオンショア風力発電です。

オンショア風力発電出力量の世界ランキングトップ35>

オフショア風力発電出力量の世界ランキングトップ35>

オンショア風力発電の分野では、アメリカ、特にテキサス州での建設が目立ちます。
理由としては、テキサス州政府が発令している送電網の電力会社(風力発電電気の買い手)
負担政策が挙げられます。
この政策により、
風力の強いテキサス州の荒地から都市部などの電力消費エリアに送電するコストが軽減され、
風力発電の発電事業者が積極的に大規模風力発電所を建設できるようになりました。

オフショア風力発電の分野では、イギリスとデンマークの存在が目立ちます。
両国ともに、風力発電量全体としては、それぞれランキング8位、11位ですが、
オフショア風力発電の分野では、世界を牽引しています。
特にデンマークは、国営企業Vattenfallと、国営色の濃いエネルギー企業DONG Energyが、
自国内だけの発電量増加だけでなく、積極的に近隣諸国に展開し、
発電プラントを積極的に建設しています。

一方、イギリスは、オフショア風力発電の一層の促進を計画しています。
2010年1月イギリス政府は、オフショア風力発電のライセンスを大規模に発行。
世界最大となる9,000MW規模の発電所をはじめ、
超巨大風力発電所が複数誕生する予定となっています。


※出所:BBC News

今回はデータを中心に紹介しましたが、各国の事情については、
今後紹介していきたいと思います。

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日本で最近話題になり始めた、
「メガソーラー」と呼ばれるような大規模太陽光発電プラント。

日本の電力企業10社が加盟する電気事業連合会は、
2020年度までに全国約30地点(電力会社10社合計)で、
約140MWの太陽光発電設備を設置する「メガソーラー発電」計画を公表しています。

その中でも、最大の規模を計画しているのが東京電力。
東日本大震災より以前、2008年10月に、20MWのメガソーラーを川崎市と
協働で推進することに合意。
そして、2011年8月12日に、第1号となる「浮島太陽光発電所」(7MW)の運転開始
を開始しました。(ニュースはコチラ

また、ソフトバンク社は、2011年の5月に、
日本全国約10か所に2MW規模のメガソーラーを建設する構想を発表。
7月には全国の知事が参加する「自然エネルギー協議会」を発足。
今日現在で、北海道、岩手県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、
埼玉県、神奈川県、富山県、山梨県、長野県、静岡県、愛知県、三重県、
滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、徳島県、奈良県、
島根県、岡山県、広島県、山口県、香川県、愛媛県、高知県、佐賀県、
長崎県、熊本県、大分県、宮崎県の計34道府県が参加しています。

一方で、太陽光発電の高コスト体質を理由に、
メガソーラー計画に批判的な意見もあります。

そこで、今回、世界のメガソーラーの現状を見ていきたいと思います。

Solar Plazaという団体が、
世界の太陽光発電プラント(Solar Photovoltaic Plant)の
ランキングを発表してくれています。

太陽光発電所名 最大出力(MW) 発電所所有者 発電所所有者の業態 発電所建設企業 太陽光発電パネルメーカー パネルタイプ 完成年
1 カナダ Sarnia 92 Enbridge エネルギー企業 First Solar First Solar CdTe 2010
2 イタリア Montalto di Castro 84 Sunpower 太陽光発電パネルメーカー Sunpower, Sunray Sunpower c-Si 2011
3 ドイツ Finsterwalde I, II & III 83 Q-Cells 太陽光発電パネルメーカー Q-Cells Q-Cells c-Si 2010
4 イタリア Rovigo 70 First Reserve プライベート・エクイティ企業 SunEdison Canadian Solar a.o. c-Si 2010
5 スペイン Olmedilla de Alarcón 60 Nobesol Levante 太陽光発電プラント建設・売電企業 Nobesol Levante Siliken a.o. c-Si 2008
6 米国 Boulder City (Copper Mountain) 55 Sempra Generation エネルギー企業 First Solar First Solar CdTe 2010
7 ドイツ Strasskirchen 53 Q-Cells 太陽光発電パネルメーカー Q-Cells Q-Cells c-Si 2009
8 ドイツ Lieberose 53 Juwi Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 Juwi Solar First Solar CdTe 2009
9 スペイン Puertollano I 52 Renovalia Energy 太陽光・風力発電売電企業 Renovalia Energy Suntech, Solaria c-Si 2008
10 ポルトガル Moura (Amareleja) 46 Acciona Solar 持続可能(再生可能エネルギー、インフラ、水)施設デベロッパー Acciona Solar Yingli Solar c-Si 2008
11 ドイツ Köthen 45 Deutsche Eco 太陽光発電プラント建設・売電企業 Deutsche Eco BP Solar c-Si 2011
12 イタリア Cellino San Marco 43 AES Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 AES Solar First Solar CdTe 2010
13 ドイツ Waldpolenz 40 Juwi Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 Juwi Solar First Solar CdTe 2008
14 チェコ Ralsko 38 CEZ Group エネルギー企業 CEZ Group c-Si 2010
15 イタリア Alfonsine 36 Reno Solar, Tozzi Holding 太陽光発電プラント建設・売電企業 Reno Solar, Tozzi Holding
16 チェコ Vepřek Solar Park 35 Decci 不明 Decci PhonoSolar c-Si 2010
17 スペイン La Magascona & Magasquilla 35 Fotowatio Renewable Ventures 太陽光発電プラント建設・売電企業 Fotowatio Renewable Ventures Suntech c-Si 2008
18 スペイン Arnedo 34 T-Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 T-Solar 2008
19 ドイツ Reckahn 32 Belectric 太陽光発電プラント建設・売電企業 Belectric First Solar CdTe 2010
20 フランス Le Gabardan 26 EDF Energies Nouvelles 太陽光・風力発電プラント建設・売電企業 EDF Energies Nouvelles
21 ドイツ Ernsthof 34 Relatio 太陽光発電プラント建設・売電企業 Relatio LDK Solar c-Si 2010
22 スペイン Dulcinea 32 Avanzalia 太陽光・風力発電プラント建設・売電企業 Avanzalia Kyocera, Suntech c-Si 2010
23 イタリア Sant’ Alberto 35
24 スペイン Alamo (I, II, III, IV) 34 Gestamp 太陽光発電プラント建設・売電企業 Gestamp Trina Solar c-Si 2010
25 ドイツ Tutow I, II 31 Juwi Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 Juwi Solar, RIO Energie First Solar CdTe 2010
26 米国 Cimarron Solar Facility 30 Tri-State エネルギー企業 First Solar First Solar CdTe 2010
27 スペイン SPEX Merida/Don Alvaro 30 Deutsche Bank, ecoEnergías 銀行, 太陽光発電プラント建設・売電企業 Deutsche Bank, ecoEnergías Solarworld c-Si 2008
28 チェコ Ševětín 30 CEZ Group 太陽光発電プラント建設・売電企業 CEZ Group c-Si 2010
29 ドイツ Helmeringen 26 Gehrlicher Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 Gehrlicher Solar First Solar CdTe 2010
30 米国 DeSoto 25 Floride Power & Light エネルギー企業 Floride Power & Light Sunpower c-Si 2009

メガソーラー・トップ30の場所


より大きな地図で 世界の太陽光発電プラント最大出力ランキングトップ30 を表示

ここから、読み取れるものを、いくつかまとめていきたいと思います。

1. メガソーラーは、ヨーロッパ諸国に集中。

上記の30メガソーラーを国別にまとめてみると、

ドイツ  9
スペイン 7
イタリア 5
チェコ 3
米国 3
フランス 1
ポルトガル 1
カナダ 1

となり、ヨーロッパ諸国が86.7%を占めています。

実際に、ドイツ、イタリア、スペイン、チェコでは、
2007年前後から急速に太陽光発電での発電量が上昇しています。


※出所:”Photovoltaic Power Systems Programme”, IEA-PVPS, 2010
     and “Top 30 Solar PV Markets”, Solar Plaza, 2011

この背景には、
固定価格買取り制度」(Feed-in-Tariff)の存在が挙げられます。
ドイツでは2000年、チェコとイタリアでは2005年、スペインでは2007年から開始された、
固定価格買い取り制度により、太陽光発電所で発電された電力の販売価格が上昇し、
太陽光発電所運営の収益性が良くなりました。

その結果、メガソーラーの建設も進んできています。

日本でも、2011年8月26日に固定価格買い取り制度を定めた、
「再生可能エネルギー特別措置法」が成立しました。
この法律による影響については、あらためてブログでとりあげたいと思っています。
 

2. 専業者中心のヨーロッパとエネルギー会社主導の北米

ヨーロッパでは、「太陽光発電プラント建設・売電企業」が
メガソーラーの事業者となる傾向があるのに対し、
北米では、「エネルギー企業」がメガソーラー事業を牽引しています。

これは、大規模な固定価格買い取り制度や、再生可能エネルギー比率を高める
法律が整備されているヨーロッパでは、
太陽光や再生可能エネルギーを専業とした新興企業の設立を後押ししているのに対し、
まだ整備が進んでいない北米では、
資本力のある既存のエネルギー企業が、将来に向けての事業多角化や、
社会に対するブランド戦略の意味合いで、太陽光発電に取り組んでいるという違いが、
挙げられます。

また、ヨーロッパ、北米双方で、太陽光発電パネルメーカーによる、
メガソーラー運営も最近の大きな流れの一つです。
こちらについては、パネルメーカーが、製造、建設、運営までの、
一連のサプライチェーンを、垂直統合し、
利益率の上昇や、PDCAサイクルの高速回転を目指すという、
戦略上の要因が挙げられます。
 

3. 農地や荒れ地を中心とした立地

メガソーラーの立地については、
地方都市近郊の農地や荒れ地での建設が中心です。
洋上や山間部に設置されているケースは、
トップ30の中にはありません。

また、既存の地方空港の空き地を利用したメガソーラーの建設も、
ヨーロッパを中心に見られます。
 

4. 金融関係資本の投資が加速

ランキング18位のT-Solarに対し、
プライベートエクイティ世界大手のKKRがドイツの再保険会社Munich Reと共同で
49%の株式を買収したり、(ニュースはコチラ
ランキング30位のFPLが、2億5000万ドルの社債発行に成功したりと、
金融関連の資本が、メガソーラーにも集まってきています。(ニュースはコチラ
 

冒頭で紹介した、日本の電気事業連合会の14MWメガソーラー構想は、
これらの世界レベルのメガソーラーを見ると、規模が霞んで見えます。

また、ソフトバンクが打ち出している約200MW規模の構想については、
すでに、ヨーロッパ諸国では、専業メーカーにより実現されている規模であり、
規模の観点では、決して「絵空事」ではありません。

日本の太陽光発電については、
再生可能エネルギーを推進するという考えでは一致していても、
各論の推進の場面で、高コストを理由に反対する声があります。

であるならば、ポイントは、
「高コストだからダメ」で終わらせるのではなく、
いかに発電コストを削減していけるかにあるのではないでしょうか。

そのための、太陽光パネルのエネルギー変換効率の向上、
太陽光パネルおよびその部品の製造技術の向上、
低コストオペレーションのための取組の推進、
そして、その技術革新を支えるための官民資金の呼び込み。

こうした会話や取組こそが今、必要なんだと思います。

sustainable japan

電力・エネルギー等サステナビリティに関する最新トピックスは、Sustainable Japanに掲載しています。御覧ください!

前回に続き、ウォルマートの活動を紹介したいと思います。

今回のテーマは、サステイナビリティの「測定」(Measure)。

ウォルマートでは、サステイナビリティ分野での
テーマ設定、目標設定、効果測定(モニタリング)を効果的に行うため、
数多くの指標の効果測定を行っています。

とりわけ強化しているのが、「食料」「農作物」分野の測定です。
ウォルマートが提供する食料品を作るのに、
どれだけの環境、社会的な負荷をかけているのか、
どれだけ効率的(経済的な効率性だけではない)に
食料品を生産できているのかを測定しているのです。

ウォルマートは、この測定をするにあたり、
カリフォルニア州を中心に導入が進んでいる”Stewardship Index for Specialty Crops
を採用しています。

Stewardship Index for Specialty Cropsとは、
社会や環境の持続可能性強化を目指すNPOや企業の集合プロジェクトである
Stewardship Index for Specialty Cropsが生み出した
食料品に特化した持続可能性測定モデルです。
※参加団体の一覧はコチラ

この測定モデルが測定しようとしている項目は、以下です。
※出所はコチラ

1. 人的要素
 - 人的資源(労働者の健康・安全、労働条件等)
 - コミュニティ(地域雇用の実施等)

2. 環境要素
 - 大気の質
 - 生物多様性・生態系
 - エネルギー消費
 - 温室効果ガス排出量
 - 栄養素
 - パッケージング
 - 殺虫剤使用
 - 土壌
 - 廃棄物
 - 水質
 - 水消費量

2. 経済要素
 - 環境に配慮した生産・流通された製品の購買
 - 公平な価格設定

このプロジェクトでは、各測定項目の具体的な測定指標について
検討を進めています。

このウォルマートが進めている測定の取組は、決して実現が容易ではありません。
一般的に企業が進めている「サステイナビリティ」測定は、
電気消費量、エネルギー消費量、水消費量、温室効果ガス排出量など、
自社で測定が完結できるものがほとんどです。
しかしながら、ウォルマートでは、その測定を、自社だけでなく、
生産者・加工者・流通者などサプライチェーン全体に広げようとしています。
ウォルマートが販売する食料品にかかわるすべてのフットプリントを、
測定しようとしているのです。

このように食料品のサプライチェーン全体を測定していく試みは、
今後重要性を増していきます。
なぜなら、世界の食料問題への解決に寄与していくからです。
例えば、世界食糧機関(FAO)は、世界で生産された食料品の1/3は、
「無駄」「ゴミ」として廃棄されていると発表しています。
※出所はコチラ

サプライチェーン全体の「無駄」を削減していくことは、
食料品の増産ではない、もうひとつの食糧問題解決の道となりえます。

Stweardship Indexが進めているサプライチェーン全体の及ぶ測定の枠組みは、
他の業界にも展開されようとしています。
例えば、Sustainability Consortiumという同様のNPO・企業・大学連合は、

「消費者科学」「測定科学」「電化製品」「食料・飲料品」「紙製品」
「ホームケア」「ヘルスケア」「IT製品」「パッケージ」「小売」「おもちゃ」

のそれぞれの分野でワーキンググループを形成し、
測定手法の検討を進めています。

このコンソーシアムを組成している大学・企業・NPOは、

〇 大学(主催者)
アリゾナ州立大学のサステイナビリティ研究所(Arizona State University)
アーカンソー州立大学の応用サステイナビリティセンター(University of Arkansas)

〇 企業
アルコア
BASF
ベストバイ
カーギル
クロロックス
コカ・コーラ
デル
ディズニー
ダウ
ケロッグ
ロレアル
マクドナルド
ペプシコ
P&G
パナソニック
サムソン
SAP
ユニリーバ
ウォルマート
東芝 など

〇 NPO
BSR
世界自然保護基金(WWF)
チリ基金
アメリカ環境保護庁
イギリス環境食糧省

Sustainability Consortiumに参加している日本企業は、
現在、パナソニックと東芝の2社のみです。

今後の企業経営において大きな影響を与えていくと思われるサステイナビリティ。
この大きな世界の動きに、日本企業も積極的に参加していく必要があります。

2010年1月のチュニジアでのジャスミン革命に端を発したアラブや中東での政治動乱。
この原因のひとつは「食料価格の高騰」だと言われています。

どれだけ、世界の食料価格は昨今、高騰しているのでしょうか。

図を見ていただくとわかるように、2011年の赤線は非常に高い位置をマークしています。

ちなみに、ここ数年で食料価格の高騰が大きく話題になったのは、2007~2008年です。
エネルギー価格の高騰や旱魃と相まって、2006年の初めと比較して、
世界のコメの価格は217%上昇し、小麦は136%、トウモロコシは125%、大豆は107%増加しました。
※出所:Wikipedia
日本でも多くのメディアでこの問題が取り上げられました。

上記のグラフによると、高騰した食料価格は2008年後半には沈静化。
しかし、その価格は2009年から再び上昇に転じ、
なんと、2011年には2008年の世界食糧価格危機の水準を上回るまでに至りました。
現在は、未曽有の食料価格高騰時代なのです。

この食料価格には、以下の要因があると考えられています。

1. 世界人口の増加 (食料需要の増加)
2. 食料のバイオ燃料への転換 (食料供給の減少)
3. 途上国の発展 (高カロリーー食品の需要の増加)
4. 原油価格の上昇 (肥料や輸送コストの増加)
5. 金融投機 (価格上昇差益を狙った投機により、価格がさらなる上昇)
6. 耕作面積の減少 (食料供給の減少)

すなわち、食料需要の増加に供給増が追い付かず、需要供給のバランスが崩れ、
価格が高騰。さらに、食糧生産コストが増加し、価格をさらに押し上げているのです。

こうして、世界規模での食糧不足がさらに深刻化すると予想される中で、
富裕国の政府や企業を中心に、発展途上国の農地の買占め行動が頻発しています。
この買占め行動を英語では、”Land Grab” と呼ばれています。

このLand Grabを活発に展開してるのは、中国、韓国、サウジアラビア、UAE。
そして、日本も小規模ですが、この動きをとっています。


※出所:Global Dash Board

ただし、このLand Grabは、既存の農作物を取り合う行為であって、
食料不足の根本的な解決とはなりません。
また、このLand Grabは「持てる国」が「持たざる国」を支配する新たな植民地主義だとの
批判も招いています。(コチラを参考)

そうして中で、食糧問題のひとつの解決策として注目を集めているのが、
「植物工場」 (英語ではPlant Factory)です。

植物工場とは、人工的に栽培に適した環境を室内に作り上げ、
安定的・効率的・計画的に農作物を生産する施設のことです。

この分野では、僕の友人でもあるNPO法人イノプレックス代表理事の
藤本真狩くんが、世界をまたに植物工場の推進に奔走してくれています。
ホームページには、最新の情報が満載ですので、ぜひご覧ください。

一方で、栽培できる農作物の種類に限りがあったり、
施設の設立に莫大な費用を要するという課題もたくさんある分野です。

また、「自然」なものを「人工的」に管理するということに対して、
「人間の傲慢だ」というような思想的な拒否反応を示す人もいます。

しかしながら、慢性的な食料不足という状況を前に、
以下に「限られた空間の中で」、食料生産を最大化させていくという取組を
避けることはできません。

再生可能エネルギーと同様に、植物工場も現在、補助金に頼る構造にあります。
いかにして、設備投資の額を最小化していくかに、知恵を絞っていく必要があります。

特に、ジャスミン革命に代表されるように、この食糧危機が顕在化している地域も
現前としてありますし、
中国やインドでも、食料価格の高騰をはじめとしたインフレーションが続いています。

植物工場の推進を応援したいと思っています。

風力、太陽光などの再生可能エネルギーへの関心が高まっていますが、
果てして、再生可能エネルギーのみを活用して、
社会に必要なエネルギーを供給することは可能なのでしょうか?

国際エネルギー機関(IEA: International Energy Agency)が発表している
World Energy Outlook (2008)“では、悲観的な結果となっています。

※”World Energy Outlook”の最新版は2010年のものですが、2010年、2009年の
 ものは有料のため、無料で入手できる最新のものは2008年でした。


2030年までに、発展途上国の経済発展に伴い、
世界のエネルギー需要が急増するのに対し、
再生可能エネルギーによるエネルギー供給は、
2030年時点でもわずか2%にすぎません。

上記のものはガソリンなどの動力エネルギーも含んでいますので、
再生可能エネルギーが活用される電力に絞って見てみるとどうでしょうか。


電力エネルギーも2030年までに需要が大きく増加していきます。

やはり、ここでも再生可能エネルギーの割合は、
風力、地熱、太陽光・太陽熱、潮力を足しても、約6%にすぎません。

石油が枯渇するピーク・オイル説が叫ばれたり、
石油・石炭・天然ガスという化石燃料が与える環境への悪影響の観点からも、
再生可能エネルギーの必要性が唱えられていますが、
世界のエネルギーの権威は悲観的な見方をしています。
再生可能エネルギーの可能性はこんなにも小さいのでしょうか。

僕はそうは思っていません。
上記の国際エネルギー機関のデータの統計手法を考慮すると、
予測が悲観的となるのは当然なのです。

国際エネルギー機関のデータは、過去30年ほどのデータをもとに、
人口変動や交通量推移、GDPなど複数の変数をもとに、
計量経済学の手法で、供給源ごとのエネルギー需要を予測をしています。
ポイントは、過去のデータに依存しているということです。
ある程度の技術革新は変数に加えているようですが、
大規模な技術革新は予測データには反映されないのです。

今後、再生可能エネルギーの技術開発に大きく投資がされていく中、
過去の推移の延長線上に未来があると考えることは適切ではありません。

では、再生可能エネルギーにはどれほどの可能性が将来展望されるのでしょうか。

2011年1月27日のScienceDailyというインターネットメディアは、
スタンフォード大学のジャコブソン教授(市民・環境工学)と
カリフォルニア大学デービス校のデルッチ教授が、
学術論文の中でこのように発言したことを報じました。

「20年~40年後には今日の技術を用いれば、
すべてのエネルギーを再生可能エネルギーで供給できる」

彼らの計画によると、
90%の電力を風力、太陽光・太陽熱、水力でまかない、
残りの10%のうち、4%を地熱、同じく4%を水素燃料、残りの2%を潮力で
調達することが可能だということです。

また、飛行機や船舶、車に使われる流体燃料として、
電気または水素燃料で代替が可能で、
さらに、水素燃料をつくるのに必要な電力も、
再生可能エネルギーで作り出すことができるということです。

2030年までには新たなエネルギー需要をすべて再生可能エネルギーで供給し、
2050年には、全エネルギーを再生可能エネルギーに代替可能となるようです。

再生可能エネルギーについて懸念される課題については、
それぞれ以下のように回答しています。

「風力、太陽光は天候に左右され、安定的な電力供給源にはならない」
⇒ 昼に強い太陽光、夜に強い風力を組み合わせて補完させ、
  それでも不足する電力は、水素燃料で充当すればいい。
⇒ スマートグリッドで長距離電力網を構築すれば、どこかの地域で発電できた
  電力を他の地域に回し、全体的として安定供給は可能となる。
⇒ 消費量の多い時間と、少ない時間の差を活用し、少ない時には蓄積し、
  多い時には放出することも可能。

「発電設備に必要なプラチナやレアアースなど希少資源は足りるのか?」
⇒ 資源量は今でも十分にあり、さらにリサイクルをすれば不足はしない。
⇒ 不足した資源を他の資源でも代替することも可能で問題はない。

「風力や太陽光の発電プラントに必要な土地は十分あるのか?」
⇒ 100%の電力供給をまかなうのに必要な土地専有面積は
  わずか世界の土地の0.4%。設備間のスペースに必要な面積を
  いれても、それでも世界の土地の1.0%にすぎない。

彼らは、今後の展開に対し、
「技術は今でも十分にある。あとはやるかやらないかだ。」と締めくくっています。

個人的には、彼らが認識されていない問題がいくつもあるのだと思います。
しかしながら、IEAが2030年にわずか全体の2%しか供給できないと言っていたところに、
2050年には100%供給できるという意見が登場したことは、
新たな可能性を感じさせてくれます。

再生可能エネルギーの将来や可能性を、低く見積もる必要はないと考えています。