※僕の別ブログである「アメリカ・サンダーバードMBA留学ブログ」から転載しました。

「環境」「持続可能性(サステイナビリティ)」の必要性が増す中、
アメリカでのビジネススクール(MBA)の動きにも変化が出始めています。
今日は、「Green MBA」「Sustainable MBA」の動きを紹介します。

2年前にBusinessWeek紙は、
「Green MBA」「Sustainable MBA」が登場してきた背景について
このように報じました。

MBA Programs Go Green

At one time, business schools “greened” their MBA curriculums in response to a new wave of students for whom sustainability was more than just a catchphrase.

「かつて、ビジネススクールが、持続可能性を重視する学生の新たな波に
反応して、MBAカリキュラムを「グリーン化」しはじめた」

Today, business schools are continuing to ramp up their efforts for green curricula, but for a much different reason. In a world beset by economic woes as well as environmental problems, sustainability represents one of the few potential bright spots in an otherwise dismal recruiting environment.

「しかし今、ビジネススクールは、他の理由から「グリーン化」の動きを加速している。
経済不況と環境問題に悩む世界の中で、持続可能性は雇用が明るい数少ない領域
のひとつになっている。」

つまり、以前は、ただの「人気集め」だったGreen MBAが、
実利的な「就職」のためにも、重要性が増してきたというわけです。

そんな中、レベルの高低を問わず、様々なビジネススクールが、
カリキュラムの「グリーン化」に積極的に取り組み始めています。

この流れを受けて、MBA受験生が好きな「ランキング」にも、
「Sustainablily」や「CSR」という切り口のものが登場してきました。

Financial Times (2011):

1 University of Notre Dame (Mendoza)
2 University of California at Berkeley (Haas)
3 University of Virginia (Darden)
4 Ipade
5 Yale School of Management
6 University of North Carolina (Kenan-Flagler)
7 Thunderbird School of Global Management
8 University of Michigan (Ross)
9 Northwestern University (Kellogg)
10 York University (Schulich)

Beyond Grey Pinstripes (2009):

1 York University (Schulich)
2 University of Michigan (Ross)
3 Yale School of Management
4 Stanford Graduate School of Business
5 Notre Dame (Mendoza)
6 University of California at Berkeley (Haas)
7 RSM Erasmus MBA
8 New York University (Stern)
9 IE Business School
10 Columbia Business School

また、起業家教育(Entrepreneurship)に強いビジネススクールである

Massachusetts Institute of Technology (Sloan)
Stanford Graduate School of Business
Babson College (Olin)

は、カリキュラムの中に、理工学系の大学院とタイアップし、
技術ベースの起業を推進していったことで、
起業家教育の地位を盤石にしていきました。
ここからも、Greenという名の最先端技術が雇用やビジネスを生む
土台となってきていることがわかります。

さらに、Wikipediaでは、Sustainable MBAに特化した学校として、
以下の学校が紹介されています。

Anaheim University
Antioch University New England
Bainbridge Graduate Institute
BSL – Business School Lausanne
Colorado State University – Global Social & Sustainable Enterprise program
Dominican University of California – MBA in Sustainable Enterprise
Duquesne University – Donahue – Palumbo Schools of Business – MBA – Sustainability Program
Green Mountain College
Marlboro College Graduate School – MBA in Managing for Sustainability
Marylhurst University- MBA in Sustainable Business
National Institute of Industrial Engineering, Mumbai, India
Presidio School of Management of Alliant International University
University of East Anglia – MBA Strategic Carbon Management
University of Exeter – One Planet MBA
University of Michigan – Erb Institute for Global Sustainable Enterprise

このように、ビジネスがCSRやSustainablityが取り組んでいく流れには反対意見もあります。
一番の急先鋒は、ノーベル経済学賞も受賞している
ミルトン・フリードマン・シカゴ大学経済学教授です。

フリードマン教授は、2006年に亡くなっていますが、
1970年から一貫して、「企業の社会的責任」という考え方を否定し続けてました。

The Social Responsibility of Business is to Increase its Profits

彼の考え方は、

“There is one and only one social responsibility of business – to use its resources and engage in activities designed to increase its profits”

「唯一のビジネスの社会的責任は、資源と活動を利益の増加のために使うことだ」

というものです。

もちろん、フリードマン教授は、
倫理や社会への影響を考慮することは重要だと言っていますが、
「社会的責任」が広範囲の意味合いをもつことを退けました。
彼は、利己心や利益追求がもたらす社会の活力を重視していたためです。

フリードマン教授はシカゴ学派というマクロ経済のひとつの流行を作り出し、
国際金融の世界にも大きな影響を与えてきました。
そのフリーマン教授のアメリカは、「利益志向が強い」国だと言われてきました。

しかし、「企業の責任は利益の向上」という考え方に関する国際的な調査の中で、
この考えに賛同する人はアメリカよりも日本のほうが多く、
日本はアラブ首長国連邦に次いで、世界第2位(賛成 70%)でした。
ちなみにアメリカは9位(賛成 55%強)。

意外な結果かと思われるかもしれませんが、僕は、
以下のような、パナソニック創業者の松下幸之助氏の思想が
強く広く共有されているためではないかと考えています。

企業の利益というと
何か好ましくないもののように
考える傾向が一部にある。

しかし、そういう考え方は正しくない。
もちろん、利益追求をもって企業の至上の目的と
考えて、そのために本来の使命を見忘れ、
目的のためには手段を選ばないというような
姿勢があれば、それは許されないことである。

けれども、その事業を通じて社会に貢献すると
いう使命と適正な利益というものは
決して相反するものではない。

そうでなく、その使命を遂行し
社会に貢献した報酬として社会から
与えられるのが適正利益だと考えられるのである。

だから、利益なき経営は、それだけ社会に対する
貢献が少なく、その本来の使命を果たし得ていない
という見方もできるのである。

持続可能性を向上していこうとする際、企業という手法を、
どのように活用し連携していくかが大きなカギを握っていると思います。
ビジネススクールでもそれを模索する試みが始まっています。

※僕の別ブログである「アメリカ・サンダーバードMBA留学ブログ」から転載しました。

2010年10/28~30にミシガン州デトロイト近郊のミシガン大学キャンパスで、
Net Impact“という年に一度の盛大なイベントが開催されます。
同名のNet ImpactというNPOが開催しています。

名前についている”Net”は、インターネットのことではなく、
ヒューマンネットワークを意味しています。

このイベントは、
世界中のソーシャルビジネスプレーヤーが集結する世界最大級の
年に一度のネットワーキング舞台です。

ソーシャルビジネスは「社会企業」とも呼ばれています。
環境保護、代替エネルギー、貧困対策、国際協力、弱者救済、
途上国でのインフラ整備・医療介護整備、など「社会的」と呼称されている
ビジネスに関連しているプレーヤーが、2500名以上集まります。
具体的には、
社会起業家、投資家、財団、グローバル企業のCSR部門、NPO、コンサルタント、
エンジニア、学生(ビジネス、公共政策、環境など)などです。

イベントでは、300以上の講演、テーマごとのディスカッションが実施され、
関係者間での意見交換、アイデア入手、パートナー探索が行われます。

Net Impactは、1993年に
アメリカのビジネススクールの学生により創設されました。
当初は学生だけのNPOでしたが、1998年に卒業後のOB/OG同士が再度集まり、
学生だけの団体から社会人を含む団体へ組織の再構築が行われます。
そして、現在のかたちでの社会人を中心としたイベントが2001年に始まり、
年に一度のイベントは年々参加者を増やし続け、現在に至っています。

このような背景のため、このイベントでは「就職」も大きくフォーカスされています。
ソーシャルビジネスに興味のある学生は、
世界の主要なプレーヤーが一堂に会する場で、必死にネットワークを構築していきます。
学生を支援するため、イベント側も、キャリアカウンセリングブースを数多く設け、
無料で、ソーシャルビジネスへの就職を成功させるためのアドバイスを提供しています。

Net Impact は、現役のプレーヤーと未来のプレーヤーが、
互いに交流しあう一大イベントなのです。

アメリカでは、ここ数年で、ソーシャルビジネスが就職先として
大きな位置を占めるようになってきました。
背景として、ソーシャルビジネスプレーヤーが
「ビジネス」としての存立基盤を強固にしているということが挙げられます。

日本で「ソーシャルビジネス」というと、
ビジネスっぽい非営利活動というイメージがあるかもしれませんが、
世界的には、もともと営利組織として組織が運営され、
社会的側面の強い事業内容を営んでいるプレーヤーが、
「ソーシャルビジネス」と呼ばれています。
つまり、立派な企業なのです。

日本にも、Net Impactの支部、「ネットインパクト東京チャプター」があります。
※サイトをみてみたら、
日米学生会議で一緒に活動していた友人が事務局をやっていました(笑)

しかし、日本では、ソーシャルビジネスの労働市場は決して大きくありません。
原因として、年収や雇用の安定性が挙げられますが、
最大の原因は、労働市場の国際性が欠落し、市場が国内に閉じていることです。
ソーシャルビジネスの大半は、途上国に位置しており、
先進国のプレーヤーも彼らをサポートするため、現地駐在を頻繁にしています。
環境・エネルギー業界のプレーヤーも、人件費の安さを求めて、
積極的に海外に展開していっています。
国際的な労働市場を欠いている日本では、普及に時間がかかりそうです。

アメリカでは、「ソーシャルビジネス」の興隆を受け、大学院教育も変化しつつあります。

従来、ソーシャルビジネスという概念は、公共政策の分野から興りました。
1980年以降、政府が緊縮財政を始めたことを契機に、
これまで税金で維持してきたソーシャルサービスを
独立財源をもつビジネスへと衣替えをはかる必要性がでてきたためです。
そのため、ソーシャルサービス教育は公共政策大学院(MPA/MPP)が
中心となっていました。

しかし、ビジネスという名前がついている分野に、
ビジネススクールが黙っているわけはありません。
トップクラスのビジネススクールが、こぞってカリキュラムに
「ソーシャルビジネス Social Business」
「ソーシャルアントレプレナーシップ Social Entrepreneurship」
というラインナップを加え、一気にソーシャルビジネス教育を充実させていきます。

さらに、ソーシャルビジネスのビジネスとしての自立性や収益性が強調される
につれて、ビジネススクールの存在感がますますましていきます。
この流れに、NPOマネジメントという独自の教育を誇っていたイェール大学も屈し、
1998年に、授与単位を、MPPM (Master of Public and Private Management)から、
MBAに変更しています。

今では、公共政策教育の最高峰・ハーバード大学ケネディスクールの
ゴールドスミス教授も、著書『ネットワークによるガバナンス』の中で、
「公共政策大学院はビジネススクールの要素を取り入れていく必要がある」
という内容を書き記しています。

こうした状況の中で、
MBAとMPAのどちらにいくべきかと、悩む学生も増えてきました。
Yahoo! Answersでは、このような回答がされていましたので、
ご紹介しておきます。

MBA: マネジメント職(管理・実行部門)への就職に強い。ソーシャルビジネスに強い。
MPA: リサーチ職(分析部門)への就職に強い。NPOに強い。

参考にしてください。

最後に、ソーシャルビジネスを日本に紹介している第一人者であり、
僕の大学時代からの友人でもある、槌屋詩野さんのHPを紹介します。
このHPで彼女の雑誌投稿記事が閲覧できます。
世界のソーシャルビジネスやBOPビジネスの動きを把握できますので、
ぜひご覧ください。

まだまだ自分自身もラフな理解ですので、
引き続きいろいろ調べていこうと思います。