東日本大震災後に、再生可能エネルギーに対する世論や政治機運が、一気に高まりました。

その後、これまで電気行政を管轄してきた経済産業省において、
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が計画され、衆参両議院で可決され、
再生可能エネルギーに対する投資・事業面での環境も改善されました。

では、実際に、震災後に、
再生可能エネルギー、特に、太陽光発電、風力発電、地熱発電は、
どのように進展してきているでしょうか。
今日は、そのあたりをまとめました。

■ 太陽光発電

震災後、一般電気事業者10社(北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、
関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力)は、
太陽光発電の運転を開始したり、新たな建設計画を発表したりしました。

東北電力:
八戸太陽光発電所(青森県八戸市)  1.5MW [2011/12/20 運転開始]
仙台太陽光発電所(宮城県宮城郡)  2MW [2012/5/25 運転開始]
原町太陽光発電所(福島県南相馬市) 1MW [2015年度運転開始予定]

東京電力:
浮島太陽光発電所(神奈川県川崎市) 7MW [2011/8/10 運転開始]
扇島太陽光発電所(神奈川県川崎市) 13MW [2011/12/19 運転開始]
米倉山太陽光発電所(山梨県甲府市) 10MW [2012/1/27 運転開始]

中部電力:
メガソーラーたけとよ(愛知県知多郡)7.5MW [2011/10/31 運転開始]
メガソーラーしみず(静岡県静岡市) 8MW [2014年度運転開始予定]

北陸電力:
三国太陽光発電所(福井県坂井市)  1MW [2012年9月運転開始予定]
珠洲太陽光発電所(石川県珠洲市)  1MW [2012年11月運転開始予定]

関西電力:
堺太陽光発電所(大阪府堺市)    10MW [2011/9/7 運転開始]

中国電力:
福山太陽光発電所(広島県福山市)  3MW [2011/12 運転開始]

上記のように、震災後、54MW分の太陽光発電所が運転を開始し、
11MW分が今後の運転開始に向けて、建設計画が進行しています。

しかしながら、これらの太陽光発電所は、震災後に計画されたものではなく、
震災前に政府主導で進められた「エネルギー大綱」によって、計画されたものです。
震災後の再生可能エネルギーの盛り上がりによるものではありません。
これら電力会社から、震災後に、新たな大規模太陽光発電所の建設計画は発表されていません。

一方で、震災後に、太陽光発電所建設を発表したのが、ソフトバンクの孫正義社長が主導する、
SBエナジー社です。

ソフトバンク京都ソーラーパーク(京都府京都市) 4.2MW [2012/7/1 運転開始]
ソフトバンク榛東ソーラーパーク(群馬県北群馬郡)2.1MW [2012/7/1 運転開始]
ソフトバンク徳島ソーラーパーク(徳島県板野郡) 5.6MW [近年中に運転開始予定]
ソフトバンク矢板ソーラーパーク(栃木県矢板市) 2MW [近年中に運転開始予定]

また、2012年7月1日に、SBエナジーは、
北海道苫小牧市で111MW、鳥取県米子市で39.5MW、長崎県長崎市で2.5MW、
熊本県で14MWの太陽光発電所の建設計画を発表しました。

SBエナジー社は、上記を含め、全国で合計200MWの太陽光発電所の計画を検討しています。

また、新たなプレーヤーとして登場したのが、
JA(全国農業共同組合連合会)が三菱商事と合弁でつくる「JAMCソーラーエナジー合同会社」です。
大型の畜舎や選果場、物流関連施設など400~600か所を対象に、主に屋根の上に太陽光パネルを設置する
という計画で、2014年度末までに合計で200MWの発電を達成させる計画です。

また、ソフトバンク京都ソーラーパークでの、太陽光発電モジュール納品と施行を担当した
京セラも、東京センチュリーリースと合弁で「京セラTCLソーラー合同会社」を2012年7月設立し、
今後3年間で合計60~70MWの太陽光発電所を稼働させる計画を発表しています。
すでに、大分県、香川県、福岡県、山口県で合計9か所、発電能力で16MWの建設計画が内定。
2012年度中に合計15~20か所で30~35MWの太陽光発電所を建設する見込みとなっています。
また、京セラ単独でも、鹿児島県で国内最大の発電能力をもつ70MWの太陽光発電所を2012年9月から
建設を開始することとなっています。

その他、長崎県松浦市で、市主導でメガソーラーの建設(1.2MW)が決まるなど、
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」のもとで、地方自治体が新たな収入源を探る
動きも出て来ています。

一方で、発電事業者ではなく、住宅での太陽光発電も2011年度には大きく進みました。
太陽光発電協会の調べでは、
2011年度に、発電事業者で53.6MWが新たに運転を開始したのに比べ、
住宅用では1205.9MWの太陽光発電が開始されました。

■ 風力発電

風力発電は、太陽光発電よりも発電コストが低く、世界で大きな注目を集めていますが、
震災後の日本の風力発電の伸び率はあまり芳しくはありません。

上記は、日本風力発電協会がまとめているデータです。
2011年度は、単年度の新規導入量が85MWと低迷し、過去に比べ新規導入が著しく落ち込みました。

電力界社別に見ると、東北電力と九州電力が、累積の導入量では数が多いことがわかります。
最近では、北陸電力や四国電力、中国電力が、
関西電力圏内の電力不足を補うための送電を強化しており(風力発電系統連携)、
その手段として、風力発電を300MW~600MW強化する計画が進行しています。

メーカー別では、世界での風力発電のビッグプレーヤーである、
Vestas、GEの2社が、日本国内勢を抑え、日本国内の風力発電を牽引しています。

一方で、世界各国で注目を集めている洋上風力発電に関する大規模実証実験が、
日本でも始まろうとしています。
環境省、NEDO、及び資源エネルギー庁の国家プロジェクトとして、
着床式あるいは浮体式の洋上風力発電に係る実証研究計画が次々と始まっていきます。

しかしながら、まだまだ諸外国の洋上風力に比べ、実証実験レベルに留まっており、
大きな発電力をもたらすまでには、まだまだ時間がかかりそうです。
また、表の中で、国が管轄するプロジェクトは、全て日本のメーカーが受託しており、
国産の風力発電に対するR&D強化および、低迷する日本企業への投資支援の様子も伺えます。

洋上風力発電については、国土交通省海事局も、2012年8月1日に、
浮体式洋上風力発電施設の建築基準法適用除外を発表し、規制が緩和されたことで、
開発に対する環境面での整備は一部進みました。

また、太陽光発電に力を入れるSBエナジー社も、2012年7月1日、
島根県で48MWの風力発電所建設計画も発表しています。

このように、風力発電分野では、電力会社による推進が一部進むものの、
住宅用も進まない中、政府主導での研究開発色が強くなっています。

■ 地熱発電

地熱発電は、発電コストが太陽光、風力に比べても低く、期待が集まっていますが、
太陽光、風力に比べ、発電所の建設が大規模となることから、
技術面、資金面で開発着手までに多大な時間を要するため、
震災後の新規発電所はまだひとつもありません。

さらに、新規発電所の運転開始までには10年以上要すると言われており、
新たな発電所はまだまだ遠い先の話です。

建設開始の大きなハードルとなっているのが、温泉地への影響です。
環境省は国立・国定公園内の地熱発電開発において、
環境面を配慮した一定条件を満たせば特別地域内での「垂直掘り」を認める
規制緩和策を3月に決定ましたが、
その条件を満たすためには、長期的なアセスメントが欠かせず、
そのアセスメントに10年ほどがかかると言われています。

そんな中、直接、地下の熱水を吸い上げない「バイナリー発電」の分野では、
早期に検討が進んでおり、
福島県の磐梯朝日国立公園の特別地域内にある土湯温泉(福島市)では、
温泉の熱を使った「バイナリー発電」の施設が2013年度中に稼働する見通しとなっています。
しかし、発電出力は0.5MWと小規模です。

地熱発電は、やっと本格的に検討が始まったという段階です。

震災を機に、日本でも再生可能エネルギーに対する機運が非常に高まっています。
個人的な見解としては、すでに着工が進んでいる太陽光発電もさることながら、
潜在的な発電コストの低さで考えると、
洋上風力発電および地熱発電が、将来の日本の発電の柱になると考えています。

この洋上風力発電および地熱発電は、まだまだ実証事件や検討という段階で、
大きな躍進はこれからです。
政府は国産の技術力強化に余念がなさそうという状況ですが、
海外の技術活用も視野にいれ、スピード重視の稼働を早めてほしいと思っています。

sustainable japan

電力・エネルギー等サステナビリティに関する最新トピックスは、Sustainable Japanに掲載しています。御覧ください!

※2015年の時点の最新データを含めてコチラにアップデートしましたので御覧ください。

東日本大震災をきっかけに、日本でもエネルギー・電力への関心が高まっています。
そこで、今回、日本のエネルギー・発電の供給量割合をあらためて、紹介したいと思います。

ちなみに、供給量割合とは、日本のエネルギー・電力が、
石油、石炭、原子力、水力、再生可能エネルギー(風力、地熱、太陽光など)で
どのぐらい賄われているかというものです。

一般的によく使われているものが、以下のデータで、
こちらは経済産業省エネルギー庁が発表している「エネルギー白書」で公表されています。

このデータから、一般電気事業者の発電供給量の供給源割合がわかります。
一般電気事業者とは、地域ごとの電力供給をしている、いわゆる「電力会社」です。
日本にはこの一般電気事業者が10社あります。
※北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力
九州電力、沖縄電力。

この中で、石油等、LPG、石炭の3つを合計したものが火力発電に相当します。
全体で61.7%という圧倒的なシェアを誇っています。

次に多いのが原子力発電。29.2%のシェアがあります。
そして、水力が8.0%。水力のシェアはそれほど大きくはありません。
また、昨今注目が集まっている再生可能エネルギーは1.1%と非常に限られています。

それでは、ここから、それぞれの項目について少しずつ解説していきます。

■ 水力(一般水力・揚水水力)

1960年代まで日本の発電を牽引した水力発電は、
1975年に日本で落差最大の黒部ダムが完成した頃から、それほど増えていはいません。
水力発電は、維持コストが低く、CO2排出のないクリーンエネルギーである一方、
ダム建設に莫大な費用がかかる上、水没による社会的コストも大きく、
大規模に発電量を増やす手法としては適してこなかったためです。

一方、1980年代から増えてきたのが、揚水式水力発電です。
こちらは、電力需要の少ない夜間に、電気を使って水を高地に引揚げ、
電力需要の多い昼間に、その水を使って水力発電を行うというものです。
この揚水式水力発電は、発電総量を増加させることにはあまり寄与しませんが、
電力の需給バランスを調整するための手法として活用されてきました。

また、最近注目が集まっているのが、「中小水力発電」です。
巨大なダムを建設するのではなく、既存の河川の流水を利用して行う、
中小規模の水力発電です。
再生可能エネルギー(自然エネルギー)として注目されていますが、
発電量が限られていることや、生態系への影響などから、日本ではほとんど実績がありません。

■ 石油等

日本の火力発電は、石油を燃料として活用してきました。
中東からの原油安定供給を手にした日本は、
発電所建設コストの低い火力発電所の建設ラッシュのためのエネルギー原料として、
原油を用いてきたからです。

しかし、原油は発電以外の燃料源(特にガソリン)として貴重な原料であり、
発電目的で使うことを控えるという国際気運の中、
1975年の第3回国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会において、「石炭利用拡大に関するIEA宣言」
の採択が行われ、石油火力発電所の新設禁止が盛りこまれました。
さらに、1973年と1979年のオイルショックにより、
「石油依存」を減らすということを日本政府も大きく掲げ、
以降、火力発電の原料が、石油から石炭、LPGなどに移っていきました。

昨今の発電議論の中で、依然として火力発電と石油を結びつける内容が多いですが、
火力発電において、実際に日本が注視すべきものは、石炭や天然ガスの世界の動きです。
特に、CO2排出量が比較的少ない天然ガスへの期待が、世界全体で大きくなっています。

また、この石油を使った火力発電に関する大きな懸念は、
原油価格の高騰です。
原油価格の高騰は、火力発電コストの増加だけでなく、
エネルギーの安定供給においても、大きな不安要因となります。


※出所:IEA “Key World Energy Statistics 2011

■ 石炭

明治時代から盛んとなった日本の炭鉱業は、
昭和時代には主要炭鉱はほぼ閉山し、
現在火力発電に使われている石炭はほぼ100%輸入石炭です。
石炭の輸入先は、オーストラリアとインドネシアで全体の82%を占めています。
2010年時点で日本は世界一の石炭輸入国でもあります。


※出所:帝国書院

エネルギー供給源としての石炭の不安材料は、石油と同様価格の高騰です。


※出所:IEA “Key World Energy Statistics 2011

この価格高騰をさらに脅かすのが、中国の動向です。
中国は世界で圧倒的な石炭の生産シェアを持っています。


※出所:IEA “Key World Energy Statistics 2011

その中国が、2010年に石炭の純輸入国に転じました。(出所
それは、中国が急増するの国内電力需要を賄う手法として、
石炭火力発電に頼ってきたためです。

IEAの”World Energy Statistics 2011″によると、
2009年の中国の総電力消費量は3545TWhでアメリカの3961TWhに続いて世界第2位。
同年の日本の消費量997TWhの3.5倍以上となっています。

中国は石炭依存度を下げるため、再生可能エネルギーや原子力発電を積極化させる
動きを見せていますが、
さらに増え続ける中国の電力需要は、石炭価格を押し上げる大きな要因ともなります。

■ 天然ガス

日本では、天然ガスは一般的に”LNG(液化天然ガス)”と呼ばれます。
それは、天然ガスが諸外国では、産地から消費地まで「パイプライン」で輸送される
のに対し、日本ではパイプラインを持っていないため、
気体である天然ガスを-162℃以下に冷却して液体にした”LNG”を輸入しているためです。

天然ガスの輸入先は、マレーシア、インドネシア、オーストラリアの3か国で、
全体の57.2%を占めています。


※出所:帝国書院

天然ガスは、一般的にパイプラインで運ぶ場合輸送コストが低く、
さらにエネルギー転換効率も高く、CO2排出量を相対的に抑えることができるため、
火力発電のエネルギー源として世界中での注目が集まっています。

日本の政府・企業も天然ガス権益を確保するため、
世界各国で天然ガス発掘プロジェクトを大きく展開しています。(コチラ

天然ガス価格も石炭や原油と同様、高騰してきています。
特に、パイプラインではなく、LNGに依存する日本は、他国よりも
天然ガスの輸入価格が高い傾向があり、
電力価格を他国よりも押し上げる要因の一つにもなっています。


※出所:IEA “Key World Energy Statistics 2011

■ 原子力

原子力発電は、CO2排出量が非常に少なく、さらにエネルギー自給率を高めることが
できる「夢の発電所」として、日本のエネルギー政策の柱となってきました。

2010年に改訂された日本政府の「エネルギー基本計画」の中でも、
CO2排出量の削減と電力価格の安定化を実現させるため、
原子力発電のシェアを大きく向上させることを掲げていました。

しかし、2011年3月の東日本大震災による原発事故を機に、
見直しの機運が大きく高まっています。

それでも、依然として原子力発電に対する期待は根強いものがあります。
その期待の大きなポイントは、発電コストの低さです。

しかしこの発電コストの低さを強調する議論に対し、
「原発事故が起こった場合の対策費用や社会的損失費用などが考慮されていない」
として、原子力の発電コストの計算方法に異議を唱える人々も多くいます。

さらに、原子力発電については、日本企業がリードする分野でもあり、
日本政府や経済界からも原発の普及を進めるべきだという強い声があります。


※出所:資源エネルギー庁

■ 再生可能エネルギー(自然エネルギー)

CO2排出量や環境サステナビリティに観点から2000年から耳目を集める
再生可能エネルギーですが、
日本国内における発電実績としては、微々たるシェアに留まっています。

2010年6月に改訂された日本政府の「エネルギー基本計画」では、
原子力と再生可能エネルギー(水力含む)の比率を、
2020年までに50%、2030年までに70%とする計画を打ち上げました。
さらに、その中で、再生可能エネルギーが占める割合を、
2020年までに全体の10%に達するという計画も含まれています。

しかし、この計画も、自然エネルギーを促進する材料とはなりません。
水力が全体の約8%を占める日本において、
再生可能エネルギー(水力含む)を10%にするということは、
水力を除いた現在のシェア1%をわずか2%にするということにしか
ならないためです。

再生可能エネルギーの推進が進まない大きな要因は、
上図からわかる発電コストの高さです。
発電コストの増加は、家庭用電力価格の増加を招くだけでなく、
産業用電力価格を押し上げ、産業の国際競争力を下げることにもつながります。

しかしながら、風力、太陽光、太陽熱、地熱など、それぞれの分野での、
技術革新が進み、発電コストが今後大きく下がることも予想されています。

Hydro:水力
Geothermal:地熱
Wind Onshore:陸上風力
Wind Offshore:水上風力
Biomass:バイオマス
Concentrating solar:太陽熱
Solar PV:太陽光

東日本大震災後、政府はすでに、「エネルギー基本計画」を見直すことを
表明しました。
この中で、再生可能エネルギーがどこまで原子力分を担えるのかが、
大きな議論のポイントなっています。

ここまで、現在の日本の発電供給量割合について、
「エネルギー白書」のデータを基に内容を見てきました。
ここから先は、よりデータ分析について興味がある方に向けて、
少し専門的な話をしてきたいと思います。

日本のエネルギー・発電力の供給量割合についてより専門的に分析する際、
冒頭で用いた「エネルギー白書」のデータを用いることいろいろな問題があります。

理由の一つ目は、上記のデータが「電力」に限られている点です。
世界的にエネルギー供給量について議論される場合、
対象は電力だけでなく、その他の熱源等も含んだ概念としての、
「一次エネルギー供給」が用いられています。
英語では、Total Primary Energy Supply(略称TPES) と呼ばれています。
そのため、特に国際比較などをする場合には、
一次エネルギー供給の数値を用いなくてはなりません。

理由の2つ目は、エネルギー白書のデータの出所が、一般的な情報リソースを
用いていない点です。
世界や日本のエネルギー・電力の供給量割合としてよく用いられるのは以下ですが、
エネルギー白書のデータは、下記のいずれとも一致せず、比較ができません。

<一次エネルギー供給>
・国際エネルギー機関(IEA) “Balances
・経済産業省資源エネルギー庁 “総合エネルギー統計/エネルギーバランス表

<発電>
・国際エネルギー機関(IEA) “Electricity/Heat
・米国エネルギー庁(EIA) “Electricity/Generation
・経済産業省資源エネルギー庁 “電力調査統計/発電実績(総括)

それぞれの供給量割合は以下となります。

さらに、EUは再生可能エネルギーの目標設定に際し、
「発電量」でも「一次エネルギー供給」でもない、「最終エネルギー消費」
という指標を用いています。
「最終エネルギー消費」とは、「一次エネルギー供給」から、
発電に要するエネルギーと配電ロスを差し引いた数値を指します。

また、国際データ比較をする際や、他のデータ分析を参照する際には、
データの定義を確認することも欠かせません。
特に、このエネルギー供給割合においては、まぎらわしい定義の違いがあります。
例えば、
・「エネルギー供給実績」or「エネルギー供給設備能力」
・「電力会社のみの数値」or「他の供給主体も含めた数値」
・再生可能エネルギーが水力を含むのか含まないのか
というものが主なものです。
ご注意ください。

先日、世界のメガソーラー(大規模太陽光発電)の世界の状況についてレポートしたのに続き、
今回は、世界の風力発電の状況をご紹介したいと思います。

世界の風力発電の大規模化は、太陽光発電を大きく凌駕する勢いで進んでいます。
例えば、現在の世界最大規模の太陽光発電所は、カナダのSarnia で92MW。
一方、現在の世界で最大規模の風力発電所は、アメリカのRoscoe で781.5MW。
8倍以上の開きがあります。
さらに、風力発電所の大規模化は今後も大きく進むと予想され、
中国は5000MWを超える超巨大風力発電所を2020年に甘肃省にオープンする
ことを発表しています。
※世界の風力発電所ランキングについては後述します。

世界の風力発電は、2006年あたりから、急速に造塊しています。
世界風力エネルギー協議会(Global Wind Energy Council: 通称GWEC)が
発表している、世界の風力発電トップ12か国を見てみましょう。


※出所:GWECレポート Global Wind Report 2010, 2009, 2008

ご覧いただくと、中国、アメリカ、ドイツ、スペイン、インドが
世界の風力発電を大きくリードしていることがわかります。

ドイツ、スペインは太陽光発電の分野でも世界をリードしており、
再生可能エネルギー全般にを政府が全面的に後押ししていますが、
その両国を超えるスピードで、中国、アメリカ、インドでは、
風力発電の建設が進んでいます。
中国は2010年ついに累積風力発電量で世界トップとなりました。

続いて、大規模風力発電所の状況を紹介します。
風力発電所はその立地により、オンショア風力発電(陸上風力発電)と
オンショア風力発電(洋上風力発電)に大きく分けられます。

大規模化が著しく進んでいるのは、建設コストが少ないオンショア風力発電です。

オンショア風力発電出力量の世界ランキングトップ35>

オフショア風力発電出力量の世界ランキングトップ35>

オンショア風力発電の分野では、アメリカ、特にテキサス州での建設が目立ちます。
理由としては、テキサス州政府が発令している送電網の電力会社(風力発電電気の買い手)
負担政策が挙げられます。
この政策により、
風力の強いテキサス州の荒地から都市部などの電力消費エリアに送電するコストが軽減され、
風力発電の発電事業者が積極的に大規模風力発電所を建設できるようになりました。

オフショア風力発電の分野では、イギリスとデンマークの存在が目立ちます。
両国ともに、風力発電量全体としては、それぞれランキング8位、11位ですが、
オフショア風力発電の分野では、世界を牽引しています。
特にデンマークは、国営企業Vattenfallと、国営色の濃いエネルギー企業DONG Energyが、
自国内だけの発電量増加だけでなく、積極的に近隣諸国に展開し、
発電プラントを積極的に建設しています。

一方、イギリスは、オフショア風力発電の一層の促進を計画しています。
2010年1月イギリス政府は、オフショア風力発電のライセンスを大規模に発行。
世界最大となる9,000MW規模の発電所をはじめ、
超巨大風力発電所が複数誕生する予定となっています。


※出所:BBC News

今回はデータを中心に紹介しましたが、各国の事情については、
今後紹介していきたいと思います。

sustainable japan

電力・エネルギー等サステナビリティに関する最新トピックスは、Sustainable Japanに掲載しています。御覧ください!

8月30日、米国カリフォルニア州に本社を置く、
太陽光発電パネルメーカーのSolyndra社が、連邦倒産法第11章に基づく
申請を行い、倒産しました。
(ニュースはコチラ

Solyndra社は、CIGS型薄膜太陽光パネルメーカーとして2005年に創業。
クリーンエネルギーの担い手として、オバマ大統領からも絶賛されていました。

ベンチャー・キャピタルから10億ドル以上の資金を調達。
さらに米国エネルギー省からも「債務保証」を受け、
仮に債務不履行となった場合に、エネルギー省が負担をする契約も
とりつけていました。

2009年には、1億ドルの売上を記録しましたが、巨額の債務は山積みのままで、
エネルギー省より「債務保証」に基づき、5億3500万ドルの支払いを受けます。

しかしながら、新たな産業促進を目指したエネルギー省の政策もむなしく、
2年後に倒産。1000人以上の従業員が職を失いました。
また、血税5億3500万ドルも返済はされず、ベンチャー・キャピタルも
10億ドル以上の損失を蒙りました。

このため、アメリカでは、太陽光発電に対する政府補助に対して、
批判的な意見が巻き起こり始めました。

その中で、サステイナビリティ関連のニュースを報道するメディア、
TriplePunditは、面白い議論を展開しています。
 

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未来への教訓

Q. 太陽光発電関連企業は落ち目にあるのか?
A. ノー。世界を見渡せば、この業界は激しい競争にある。太陽光発電パネルの価格は
 著しく下がってきている。今回の問題は、Sokyndraが競争に生き残れなかったという
 だけだ。

Q. ベンチャー・キャピタルはクリーンテクノロジー新興企業への投資をやめるべきか?
A. ノー。むしろ逆で、試行錯誤プロセスは市場メカニズムだ。新興企業は失敗確率の
 高い高リスクビジネスだ。ベンチャー・キャピタルはそのリスクを心得ておくべきだ。

Q. 米国連邦政府はクリーンテクノロジー新興企業への投資をやめるべきか?
A. イエス。政府は債務をどんどん膨らましている。適切な歳出を維持することすら
 できていない。政府は、ベンチャー・キャピタルのような高いリスクをとる余裕は
 ない。これが今回の真の教訓だ。
 

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新しい技術は、競争原理の中で育ってきます。
競争原理の中では、勝者も生まれれば、敗者も生まれます。
上記のTriplePunditの教訓には、僕は合点がいきます。

日本で最近話題になり始めた、
「メガソーラー」と呼ばれるような大規模太陽光発電プラント。

日本の電力企業10社が加盟する電気事業連合会は、
2020年度までに全国約30地点(電力会社10社合計)で、
約140MWの太陽光発電設備を設置する「メガソーラー発電」計画を公表しています。

その中でも、最大の規模を計画しているのが東京電力。
東日本大震災より以前、2008年10月に、20MWのメガソーラーを川崎市と
協働で推進することに合意。
そして、2011年8月12日に、第1号となる「浮島太陽光発電所」(7MW)の運転開始
を開始しました。(ニュースはコチラ

また、ソフトバンク社は、2011年の5月に、
日本全国約10か所に2MW規模のメガソーラーを建設する構想を発表。
7月には全国の知事が参加する「自然エネルギー協議会」を発足。
今日現在で、北海道、岩手県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、
埼玉県、神奈川県、富山県、山梨県、長野県、静岡県、愛知県、三重県、
滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、徳島県、奈良県、
島根県、岡山県、広島県、山口県、香川県、愛媛県、高知県、佐賀県、
長崎県、熊本県、大分県、宮崎県の計34道府県が参加しています。

一方で、太陽光発電の高コスト体質を理由に、
メガソーラー計画に批判的な意見もあります。

そこで、今回、世界のメガソーラーの現状を見ていきたいと思います。

Solar Plazaという団体が、
世界の太陽光発電プラント(Solar Photovoltaic Plant)の
ランキングを発表してくれています。

太陽光発電所名 最大出力(MW) 発電所所有者 発電所所有者の業態 発電所建設企業 太陽光発電パネルメーカー パネルタイプ 完成年
1 カナダ Sarnia 92 Enbridge エネルギー企業 First Solar First Solar CdTe 2010
2 イタリア Montalto di Castro 84 Sunpower 太陽光発電パネルメーカー Sunpower, Sunray Sunpower c-Si 2011
3 ドイツ Finsterwalde I, II & III 83 Q-Cells 太陽光発電パネルメーカー Q-Cells Q-Cells c-Si 2010
4 イタリア Rovigo 70 First Reserve プライベート・エクイティ企業 SunEdison Canadian Solar a.o. c-Si 2010
5 スペイン Olmedilla de Alarcón 60 Nobesol Levante 太陽光発電プラント建設・売電企業 Nobesol Levante Siliken a.o. c-Si 2008
6 米国 Boulder City (Copper Mountain) 55 Sempra Generation エネルギー企業 First Solar First Solar CdTe 2010
7 ドイツ Strasskirchen 53 Q-Cells 太陽光発電パネルメーカー Q-Cells Q-Cells c-Si 2009
8 ドイツ Lieberose 53 Juwi Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 Juwi Solar First Solar CdTe 2009
9 スペイン Puertollano I 52 Renovalia Energy 太陽光・風力発電売電企業 Renovalia Energy Suntech, Solaria c-Si 2008
10 ポルトガル Moura (Amareleja) 46 Acciona Solar 持続可能(再生可能エネルギー、インフラ、水)施設デベロッパー Acciona Solar Yingli Solar c-Si 2008
11 ドイツ Köthen 45 Deutsche Eco 太陽光発電プラント建設・売電企業 Deutsche Eco BP Solar c-Si 2011
12 イタリア Cellino San Marco 43 AES Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 AES Solar First Solar CdTe 2010
13 ドイツ Waldpolenz 40 Juwi Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 Juwi Solar First Solar CdTe 2008
14 チェコ Ralsko 38 CEZ Group エネルギー企業 CEZ Group c-Si 2010
15 イタリア Alfonsine 36 Reno Solar, Tozzi Holding 太陽光発電プラント建設・売電企業 Reno Solar, Tozzi Holding
16 チェコ Vepřek Solar Park 35 Decci 不明 Decci PhonoSolar c-Si 2010
17 スペイン La Magascona & Magasquilla 35 Fotowatio Renewable Ventures 太陽光発電プラント建設・売電企業 Fotowatio Renewable Ventures Suntech c-Si 2008
18 スペイン Arnedo 34 T-Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 T-Solar 2008
19 ドイツ Reckahn 32 Belectric 太陽光発電プラント建設・売電企業 Belectric First Solar CdTe 2010
20 フランス Le Gabardan 26 EDF Energies Nouvelles 太陽光・風力発電プラント建設・売電企業 EDF Energies Nouvelles
21 ドイツ Ernsthof 34 Relatio 太陽光発電プラント建設・売電企業 Relatio LDK Solar c-Si 2010
22 スペイン Dulcinea 32 Avanzalia 太陽光・風力発電プラント建設・売電企業 Avanzalia Kyocera, Suntech c-Si 2010
23 イタリア Sant’ Alberto 35
24 スペイン Alamo (I, II, III, IV) 34 Gestamp 太陽光発電プラント建設・売電企業 Gestamp Trina Solar c-Si 2010
25 ドイツ Tutow I, II 31 Juwi Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 Juwi Solar, RIO Energie First Solar CdTe 2010
26 米国 Cimarron Solar Facility 30 Tri-State エネルギー企業 First Solar First Solar CdTe 2010
27 スペイン SPEX Merida/Don Alvaro 30 Deutsche Bank, ecoEnergías 銀行, 太陽光発電プラント建設・売電企業 Deutsche Bank, ecoEnergías Solarworld c-Si 2008
28 チェコ Ševětín 30 CEZ Group 太陽光発電プラント建設・売電企業 CEZ Group c-Si 2010
29 ドイツ Helmeringen 26 Gehrlicher Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 Gehrlicher Solar First Solar CdTe 2010
30 米国 DeSoto 25 Floride Power & Light エネルギー企業 Floride Power & Light Sunpower c-Si 2009

メガソーラー・トップ30の場所


より大きな地図で 世界の太陽光発電プラント最大出力ランキングトップ30 を表示

ここから、読み取れるものを、いくつかまとめていきたいと思います。

1. メガソーラーは、ヨーロッパ諸国に集中。

上記の30メガソーラーを国別にまとめてみると、

ドイツ  9
スペイン 7
イタリア 5
チェコ 3
米国 3
フランス 1
ポルトガル 1
カナダ 1

となり、ヨーロッパ諸国が86.7%を占めています。

実際に、ドイツ、イタリア、スペイン、チェコでは、
2007年前後から急速に太陽光発電での発電量が上昇しています。


※出所:”Photovoltaic Power Systems Programme”, IEA-PVPS, 2010
     and “Top 30 Solar PV Markets”, Solar Plaza, 2011

この背景には、
固定価格買取り制度」(Feed-in-Tariff)の存在が挙げられます。
ドイツでは2000年、チェコとイタリアでは2005年、スペインでは2007年から開始された、
固定価格買い取り制度により、太陽光発電所で発電された電力の販売価格が上昇し、
太陽光発電所運営の収益性が良くなりました。

その結果、メガソーラーの建設も進んできています。

日本でも、2011年8月26日に固定価格買い取り制度を定めた、
「再生可能エネルギー特別措置法」が成立しました。
この法律による影響については、あらためてブログでとりあげたいと思っています。
 

2. 専業者中心のヨーロッパとエネルギー会社主導の北米

ヨーロッパでは、「太陽光発電プラント建設・売電企業」が
メガソーラーの事業者となる傾向があるのに対し、
北米では、「エネルギー企業」がメガソーラー事業を牽引しています。

これは、大規模な固定価格買い取り制度や、再生可能エネルギー比率を高める
法律が整備されているヨーロッパでは、
太陽光や再生可能エネルギーを専業とした新興企業の設立を後押ししているのに対し、
まだ整備が進んでいない北米では、
資本力のある既存のエネルギー企業が、将来に向けての事業多角化や、
社会に対するブランド戦略の意味合いで、太陽光発電に取り組んでいるという違いが、
挙げられます。

また、ヨーロッパ、北米双方で、太陽光発電パネルメーカーによる、
メガソーラー運営も最近の大きな流れの一つです。
こちらについては、パネルメーカーが、製造、建設、運営までの、
一連のサプライチェーンを、垂直統合し、
利益率の上昇や、PDCAサイクルの高速回転を目指すという、
戦略上の要因が挙げられます。
 

3. 農地や荒れ地を中心とした立地

メガソーラーの立地については、
地方都市近郊の農地や荒れ地での建設が中心です。
洋上や山間部に設置されているケースは、
トップ30の中にはありません。

また、既存の地方空港の空き地を利用したメガソーラーの建設も、
ヨーロッパを中心に見られます。
 

4. 金融関係資本の投資が加速

ランキング18位のT-Solarに対し、
プライベートエクイティ世界大手のKKRがドイツの再保険会社Munich Reと共同で
49%の株式を買収したり、(ニュースはコチラ
ランキング30位のFPLが、2億5000万ドルの社債発行に成功したりと、
金融関連の資本が、メガソーラーにも集まってきています。(ニュースはコチラ
 

冒頭で紹介した、日本の電気事業連合会の14MWメガソーラー構想は、
これらの世界レベルのメガソーラーを見ると、規模が霞んで見えます。

また、ソフトバンクが打ち出している約200MW規模の構想については、
すでに、ヨーロッパ諸国では、専業メーカーにより実現されている規模であり、
規模の観点では、決して「絵空事」ではありません。

日本の太陽光発電については、
再生可能エネルギーを推進するという考えでは一致していても、
各論の推進の場面で、高コストを理由に反対する声があります。

であるならば、ポイントは、
「高コストだからダメ」で終わらせるのではなく、
いかに発電コストを削減していけるかにあるのではないでしょうか。

そのための、太陽光パネルのエネルギー変換効率の向上、
太陽光パネルおよびその部品の製造技術の向上、
低コストオペレーションのための取組の推進、
そして、その技術革新を支えるための官民資金の呼び込み。

こうした会話や取組こそが今、必要なんだと思います。

sustainable japan

電力・エネルギー等サステナビリティに関する最新トピックスは、Sustainable Japanに掲載しています。御覧ください!

6月15日、ISO (国際標準化機構)が、
エネルギーマネジメントシステムに関する新たな国際規格“ISO50001″
リリースしました。(※リリース記事はコチラ

ISOはこれまでにも数多くの国際規格を制定してきています。
代表的なものとしては、
  ISO 9000 ”品質マネジメントシステム”
  ISO 14000 “環境マネジメントシステム”
があります。

それぞれの国際規格で定められている内容は、
「企業等が製品やサービスを安定的に供給するための仕組みづくり」
についてです。
ISO9000では、いかにして品質水準を担保していくか、
ISO14000では、いかにして環境汚染を防止するか、
について、その手法が書かれています。

この国際規格は、法律ではありません。
企業が自発的に取り組んでい行くための「指針」として提供されているものです。
そのため、この国際規格に則るか否かは、企業等の組織に委ねられています。
ですが、取引先企業が、国際規格に則るよう要求することもあるため、
企業間の取引の中で、取得が実質的に「義務付けられて」いることもあります。

今回リリースされたISO50001では、
企業や政府がエネルギー効率を高めたり、エネルギーコストを下げたりする手法、
「エネルギーマネジメントシステム」が規定されています。

このISO50001創設の背景には、
エネルギーの持続可能性に関する関心の高まりがあるようです。
ISOは、国際連合工業開発機関 (UNIDO) からの要請を受け、
2008年にISO50001検討のための委員会を発足させていました。

ISOは、このISO50001を通じて、
世界のエネルギー消費量を60%削減できるとしています。

具体的な内容としては、PDCAサイクルの回し方が中心となっています。


※”Win the energy challenge with ISO 50001“より抜粋。

ISO50001は、このマネジメントサイクルの中でも特に、
経営層の役割、導入方法の重要性を強調しています。

一般的にISOについては、
「導入コンサルタント費用が高い」「維持が面倒で忙殺される」等の
批判も多いのも事実です。

ISO50001が幅広く普及するかどうかはまだ未知数ですが、
多くの企業が「エネルギーマネジメント」について取り組みをを開始する
きっかけになっていくといいなと思います。

「震災後の日本がどのように変化を遂げていくのか。」

持続可能性の観点からも、世界からも多くの関心が寄せられています。

その中で、企業の持続可能性向上を推進する世界的なNPOのひとつBSR
CEOであるAron Cramer氏が、同社のブログにて、
Japan: Tragedy to Turning Point? “と題する記事を発表しています。

非常に示唆に富む内容でしたので、今回はその記事を日本語訳してみました。

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私が今回、ミーティングに参加するために日本を訪れて一週間。
東京は今までにないぐらい人の気配がなく閑散としていた。
おそらく、日本経済は、地震、津波、福島原発事故の三重の波を前に
激しくダメージを受けてしまった。

しかしながら、BSRの会員企業との一週間の会合の中で、
私はより重層的な日本の状況を感じ取った。
日本は明らかに、この悲劇を将来のための転換点として昇華させ、
日本を、安全で、豊かで、持続可能な将来へと導く、
力強い道のりを歩み始めている。

会合の中で、
たくさんの日本の会員企業の代表たちは、自省の念を表明していた。

ある経営者は、日本がこの数十年間謳歌してきた
エネルギー依存の消費型経済モデルから転換していけるのかどうかという
問題提起をしていた。
例えば、「ここでもどこでも」という日本の消費文化のシンボルであり、
大量のエネルギーを消費する自動販売機なしで日本人がやっていけるのかどうか。
彼はこの点について問題を投げかけていた。

別の経営者は、日本企業は、政府と経団連が求めた25%の自発的節電を
「容易に達成することができる」と語った。
そして、彼は続けて、もしこの節電が可能であるならば、
なぜもっと以前からこれに取り組んでこなかったのか、と振り返っていた。
(もちろん、私自身は、エネルギーが非効率で暴飲暴食しているアメリカ国民の
一人として、他国の節電についてあまりとやかく語る筋ではない)

日本は現在、30%のエネルギーを原子力発電で調達している。
この状況を一夜にして転換することはできないし、
もし原子力発電所を削減するとしても、諸外国と同様に、
短期的には二酸化炭素排出量を削減することがより難しくなる。
しかし、多くの日本の人々は、1973年のオイルショック時に日本が
エネルギー効率を国是として推進していったように、
この2011年のできごとを機に、日本が再生可能エネルギーを
さらに促進していってほしいと願っている。

日本の経営者たちは、日本経済は臨機応変に対応できるという自信を見せるとともに、
今回の地震や津波の結果、これまで長い間活動が目立たなかった日本のNPOが、
今後さらに重要になっていくという見通しも示していた。
多くの企業は、震災の救援、復旧、復興においてNPOと共働している。
このような協働はCAREや赤十字などの世界的組織の日本支部が
中心的な役割を果たしているが、NPOとの共働に急速に関心が高まったことで、
今後、日本のNPOが日本社会で果たす役割はますます大きくなっていくだろう。

また、このような企業とNPOの共働が促進された背景には、
政府への信頼が大きく失墜してしまったということがある。
多くの企業経営者は、
今回の災害に対して政府のリーダーシップが欠如していることに大いに失望していた。
自衛隊より迅速に災害に対して救援活動を展開した米軍を称賛している人もいた。
(もちろん米軍は自衛隊より規模も資金も豊富なのだが、この米軍への称賛は、
政府の対応能力とコミットメントの欠如を意味している)

日本は、現在、正念場だ。
かつて、アメリカでは、多くのコメンテーターが、
アメリカは9.11を機に何もかも大きく変わり、
新たな価値観が提起されたり、
社会の共通目的が刷新されるだろうと語っていた。
しかし、残念ながら、これらは実際には実現しなかった。
だが、おそらく日本では、アメリカが成し遂げることができなかったような
前進への転換点を、3.11はもたらしていくだろう。

日本のこの正念場をバネに、将来の世代は再生可能エネルギーと
エネルギー効率の向上にますます拍車をかけていくだろう。
もしそれが実現すれば、日本は世界に対して、かつてのように再び、
プレッシャー下での優雅な対応力、明確な解決策、イノベーション力を
教えていく立場になっていく。

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2011年4月12日で、カリフォルニア州で新たな法案が成立しました。

「2020年までに電力の33%を再生可能エネルギーで供給することを義務付ける」

カリフォルニア州では、2006年に、
2010年までの電力20%再生エネルギー化法案が可決しており、
成立しており、今回、それを20%から33%に大幅に上昇させたことになります。

再生可能エネルギーについて「33%」という高い目標は前例がなく、
野心的な目標と評されています。

この法案に署名をしたジェリー・ブラウン州知事は、背景についてこう語っています。

この法案はカリフォルニア州に重要な利益をもたらす。州内のグリーンテクノロ
ジーへの投資を刺激し、何万もの新たな雇用を創出し、州の大気の質を改善
し、エネルギー自給率を高め、温室効果ガスを削減する
※原文はコチラ

実は、同様の法案は、2008年にも議会を通過していました。
しかし、当時のシュワルツェネッガー州知事は、33%は非現実だとして署名を拒否。
法案を成立させるかわりに、拘束力の弱い「州知事令」として施行しました。

今回の法成立については、昨今のエネルギー事情が大きく影響していると思われます。
北アフリカ・中東アジアにかけての政情不安による原油価格の高騰。
日本での原発事故による原子力発電に対する批判的な意見の増加。
メキシコ湾原油流出事故による原油採掘見通しの後退。
いずれも、再生可能エネルギーの必要性に対する認識を高めることに寄与しました。

この「電力の33%」はどのぐらい野心的なのでしょうか。

下記のグラフは、2004年~2008年までの電力供給源の表です。


※出所:U.S. Energy Information Administration “California Renewable Electricity Profile

2008年の時点で、再生可能エネルギーは、全体の23.5%を占めているのがわかります。
しかし、カリフォルニア州の33%目標は、「再生可能エネルギー」の全体ではなく、
「再生可能エネルギー(水力除く)」の数値についてなのです。
つまり、2008年時点での11.9%を、2020年までに33%にすると言っているのです。
これはすごい躍進です。

このような大胆な目標設定ができるのは、カリフォルニア州ならではの事情もあります。
州内に世界有数のハイテク産業団地、シリコンバレーを抱えているからです。
シリコンバレーには、最先端のグリーンテクノロジーと、
それを支える膨大なマネーが集まっています。
州政府が掲げる目標により、投資家はグリーンテクノロジー開発に対する長期投資を
さらに加速することができるようになります。
そしてそれが、技術開発を促進し、さらに投資を呼び込むという好循環を生むのです。

また、カリフォルニア州は自然条件にも恵まれています。
州の西部には太平洋からの風が吹き、南東部は砂漠地帯で太陽が降り注ぐため、
風力発電や太陽光発電に適した広大な土地を有しているのです。

33%の目標達成のためのシナリオも作成されています。


※出所:カリフォルニア州のサイトコチラの資料

このように複数のシナリオを作成する手法は、「シナリオプランニング」と呼ばれ、
不確実な将来見通しの中で、柔軟に目標を達成する経営手法のひとつです。
 

しかし、この法案には批判も多く集まっているようです。
Financial Times紙の4/19WEB版では、様々な批判が紹介されています。

まず激しく抵抗しているのが、製造業です。
再生可能エネルギーに力を入れてきたカリフォルニア州では、
現在でも他の州に比べて電力価格が50%ほど高い水準なのですが、
カリフォルニア州共和党が、
今回の法律で電力価格がさらに19%上昇すると語っているためです。
※Huffpost Los Angeles, “California Renewable Energy: Brown
To Sign ‘Most Aggressive’ Mandate In The U.S.

国際競争が激化している中でのさらなる電力価格の高騰は、
人員削減や工場閉鎖につながる。
電力消費の大きい鉄鋼業、セメント業、鉱業は警鐘を鳴らしています。

次に反発しているのが、環境保護活動団体です。
今回の法律で拡大が見込まれる太陽光発電に対し、
「砂漠に建設される大規模太陽光発電プラントは動植物固有種に害を与えるため、
太陽光発電は屋根の屋上のみに限定すべき」
と反対しています。

僕はこの法律の野心的な目標設定を応援したいと思っています。
高い目標設定はイノベーションを加速します。
確かに反対派が唱えているように、課題もたくさん存在します。
しかし、いずれにしても電力供給を支えるためには、それらの課題も含めて、
問題をひとつひとつ解決し、前進していかなくてはなりません。

「問題があるから計画中止」というスタンスではなく、
「目標に向けて問題をどう一緒に解決していくか」という協働姿勢が
必要なのではないでしょうか。

ゴミ問題は現在、世界中で深刻になっています。

どれほど深刻なのかというと、
アメリカ50州の中でアラスカに次いで面積が広いのがテキサス州。
テキサス州は日本の国土面積の2倍弱の大きさです。

そして、なんとのそのテキサス州の約2倍もの面積のゴミの島が、
太平洋を浮遊しています。
つまりの日本の国土面積の4倍です。
下の地図の白くなっている部分が、その島の大きさです。

この島の通称は「太平洋ゴミベルト」。
英語圏では、”Great Pacific Garbage Patch” “Pacific Trash Vortex”
と呼ばれています。

海流域周辺の日本、ロシア、カナダ、アメリカから廃棄されたゴミや、
海流域を航行中の船舶から投棄されるゴミが、
海流の影響で1か所に集中し、1950年ぐらいから今の姿に成長してきました。
Wikipediaによると、陸地から出たゴミが8割、船舶由来のものが2割と
言われています。

このゴミの島による影響は、まだはっきりとはしていませんが、
ゴミが海中分解または光分解されることで、
有毒ガスが発生する可能性が指摘されています。

また、海中生物や鳥などが、プラスチックを誤って捕食したり、
体躯にからまってしまうことにより、危害が及んでいることも報告されています。

そして、このような巨大なゴミの島は、
太平洋以外にも、大西洋やインド洋などでも観測されています。

通常、一般人は洋上を船舶で移動することはなく、
その島を直接眼にすることはあまりありませんが、
広大な海をゴミの山が占領していくことは、気持ちのいいことではありません。

こうしたゴミの島の拡大を阻止する動きも始まっています。
島の拡大の原因となるゴミそのものの投棄や廃棄の撲滅を呼び掛ける運動も
起こっていますし、
2009年には、Project Kaiseiというカリフォルニア州のNPOによる
ゴミの島そのものを消滅させる方法の検討も始まり、現在調査が進められています。

そうした中で、大きな注目を集めているのが、
ゴミそのものをエネルギーに変えていくテクノロジーの開発です。
英語では”Waste-to-Energy Technology“と呼ばれています。

この「ゴミをエネルギーに変える技術」については、
以下のように様々な手法が研究されています。

・焼却してガスを発生し、そのガスの動力で発電する技術
・熱分解して、燃料に変換する技術
・プラスチックを脱重合して、合成原油を生成する技術
・微生物を用いてバイオガスへと分解する技術

こうした「ゴミをエネルギーに変える」リサイクルのビジネスは、
ドイツを中心としたヨーロッパが最先端を走っています。
研究は非営利の研究機関だけでなく、多くの企業で取り組まれており、
ESWETという企業連合体も誕生しています。

さらに、環境保全に貢献する企業を資金面から支えているのが、
昨今の原油高に端を発する中東を中心としたオイルマネーです。[参考]
原油から生じるマネーが、その原油からつくられたプラスチックをさらに燃料に変える
テクノロジーの開発に投資され、新たに燃料を創造していく。
壮大な化石燃料のサプライチェーンが誕生しようとしています。

ゴミ問題の解決策は、「ゴミを減らすこと」とこれまで定義されてきました。
しかしながら、そのゴミを資源そのものに変えてしまう試みが、
まさに研究者や起業家の手によって始められようとしています。

「ゴミを減らす」という人間の行動そのものを変えることは非常に困難です。
教育を通じて、その困難に立ち向かっていく重要性と同時に、
ゴミ問題という概念そのものをなくすというイノベーションを
起こそうとする企業を育くんでいくことも重要だと感じています。

風力、太陽光などの再生可能エネルギーへの関心が高まっていますが、
果てして、再生可能エネルギーのみを活用して、
社会に必要なエネルギーを供給することは可能なのでしょうか?

国際エネルギー機関(IEA: International Energy Agency)が発表している
World Energy Outlook (2008)“では、悲観的な結果となっています。

※”World Energy Outlook”の最新版は2010年のものですが、2010年、2009年の
 ものは有料のため、無料で入手できる最新のものは2008年でした。


2030年までに、発展途上国の経済発展に伴い、
世界のエネルギー需要が急増するのに対し、
再生可能エネルギーによるエネルギー供給は、
2030年時点でもわずか2%にすぎません。

上記のものはガソリンなどの動力エネルギーも含んでいますので、
再生可能エネルギーが活用される電力に絞って見てみるとどうでしょうか。


電力エネルギーも2030年までに需要が大きく増加していきます。

やはり、ここでも再生可能エネルギーの割合は、
風力、地熱、太陽光・太陽熱、潮力を足しても、約6%にすぎません。

石油が枯渇するピーク・オイル説が叫ばれたり、
石油・石炭・天然ガスという化石燃料が与える環境への悪影響の観点からも、
再生可能エネルギーの必要性が唱えられていますが、
世界のエネルギーの権威は悲観的な見方をしています。
再生可能エネルギーの可能性はこんなにも小さいのでしょうか。

僕はそうは思っていません。
上記の国際エネルギー機関のデータの統計手法を考慮すると、
予測が悲観的となるのは当然なのです。

国際エネルギー機関のデータは、過去30年ほどのデータをもとに、
人口変動や交通量推移、GDPなど複数の変数をもとに、
計量経済学の手法で、供給源ごとのエネルギー需要を予測をしています。
ポイントは、過去のデータに依存しているということです。
ある程度の技術革新は変数に加えているようですが、
大規模な技術革新は予測データには反映されないのです。

今後、再生可能エネルギーの技術開発に大きく投資がされていく中、
過去の推移の延長線上に未来があると考えることは適切ではありません。

では、再生可能エネルギーにはどれほどの可能性が将来展望されるのでしょうか。

2011年1月27日のScienceDailyというインターネットメディアは、
スタンフォード大学のジャコブソン教授(市民・環境工学)と
カリフォルニア大学デービス校のデルッチ教授が、
学術論文の中でこのように発言したことを報じました。

「20年~40年後には今日の技術を用いれば、
すべてのエネルギーを再生可能エネルギーで供給できる」

彼らの計画によると、
90%の電力を風力、太陽光・太陽熱、水力でまかない、
残りの10%のうち、4%を地熱、同じく4%を水素燃料、残りの2%を潮力で
調達することが可能だということです。

また、飛行機や船舶、車に使われる流体燃料として、
電気または水素燃料で代替が可能で、
さらに、水素燃料をつくるのに必要な電力も、
再生可能エネルギーで作り出すことができるということです。

2030年までには新たなエネルギー需要をすべて再生可能エネルギーで供給し、
2050年には、全エネルギーを再生可能エネルギーに代替可能となるようです。

再生可能エネルギーについて懸念される課題については、
それぞれ以下のように回答しています。

「風力、太陽光は天候に左右され、安定的な電力供給源にはならない」
⇒ 昼に強い太陽光、夜に強い風力を組み合わせて補完させ、
  それでも不足する電力は、水素燃料で充当すればいい。
⇒ スマートグリッドで長距離電力網を構築すれば、どこかの地域で発電できた
  電力を他の地域に回し、全体的として安定供給は可能となる。
⇒ 消費量の多い時間と、少ない時間の差を活用し、少ない時には蓄積し、
  多い時には放出することも可能。

「発電設備に必要なプラチナやレアアースなど希少資源は足りるのか?」
⇒ 資源量は今でも十分にあり、さらにリサイクルをすれば不足はしない。
⇒ 不足した資源を他の資源でも代替することも可能で問題はない。

「風力や太陽光の発電プラントに必要な土地は十分あるのか?」
⇒ 100%の電力供給をまかなうのに必要な土地専有面積は
  わずか世界の土地の0.4%。設備間のスペースに必要な面積を
  いれても、それでも世界の土地の1.0%にすぎない。

彼らは、今後の展開に対し、
「技術は今でも十分にある。あとはやるかやらないかだ。」と締めくくっています。

個人的には、彼らが認識されていない問題がいくつもあるのだと思います。
しかしながら、IEAが2030年にわずか全体の2%しか供給できないと言っていたところに、
2050年には100%供給できるという意見が登場したことは、
新たな可能性を感じさせてくれます。

再生可能エネルギーの将来や可能性を、低く見積もる必要はないと考えています。

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