東日本大震災後に、再生可能エネルギーに対する世論や政治機運が、一気に高まりました。

その後、これまで電気行政を管轄してきた経済産業省において、
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が計画され、衆参両議院で可決され、
再生可能エネルギーに対する投資・事業面での環境も改善されました。

では、実際に、震災後に、
再生可能エネルギー、特に、太陽光発電、風力発電、地熱発電は、
どのように進展してきているでしょうか。
今日は、そのあたりをまとめました。

■ 太陽光発電

震災後、一般電気事業者10社(北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、
関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力)は、
太陽光発電の運転を開始したり、新たな建設計画を発表したりしました。

東北電力:
八戸太陽光発電所(青森県八戸市)  1.5MW [2011/12/20 運転開始]
仙台太陽光発電所(宮城県宮城郡)  2MW [2012/5/25 運転開始]
原町太陽光発電所(福島県南相馬市) 1MW [2015年度運転開始予定]

東京電力:
浮島太陽光発電所(神奈川県川崎市) 7MW [2011/8/10 運転開始]
扇島太陽光発電所(神奈川県川崎市) 13MW [2011/12/19 運転開始]
米倉山太陽光発電所(山梨県甲府市) 10MW [2012/1/27 運転開始]

中部電力:
メガソーラーたけとよ(愛知県知多郡)7.5MW [2011/10/31 運転開始]
メガソーラーしみず(静岡県静岡市) 8MW [2014年度運転開始予定]

北陸電力:
三国太陽光発電所(福井県坂井市)  1MW [2012年9月運転開始予定]
珠洲太陽光発電所(石川県珠洲市)  1MW [2012年11月運転開始予定]

関西電力:
堺太陽光発電所(大阪府堺市)    10MW [2011/9/7 運転開始]

中国電力:
福山太陽光発電所(広島県福山市)  3MW [2011/12 運転開始]

上記のように、震災後、54MW分の太陽光発電所が運転を開始し、
11MW分が今後の運転開始に向けて、建設計画が進行しています。

しかしながら、これらの太陽光発電所は、震災後に計画されたものではなく、
震災前に政府主導で進められた「エネルギー大綱」によって、計画されたものです。
震災後の再生可能エネルギーの盛り上がりによるものではありません。
これら電力会社から、震災後に、新たな大規模太陽光発電所の建設計画は発表されていません。

一方で、震災後に、太陽光発電所建設を発表したのが、ソフトバンクの孫正義社長が主導する、
SBエナジー社です。

ソフトバンク京都ソーラーパーク(京都府京都市) 4.2MW [2012/7/1 運転開始]
ソフトバンク榛東ソーラーパーク(群馬県北群馬郡)2.1MW [2012/7/1 運転開始]
ソフトバンク徳島ソーラーパーク(徳島県板野郡) 5.6MW [近年中に運転開始予定]
ソフトバンク矢板ソーラーパーク(栃木県矢板市) 2MW [近年中に運転開始予定]

また、2012年7月1日に、SBエナジーは、
北海道苫小牧市で111MW、鳥取県米子市で39.5MW、長崎県長崎市で2.5MW、
熊本県で14MWの太陽光発電所の建設計画を発表しました。

SBエナジー社は、上記を含め、全国で合計200MWの太陽光発電所の計画を検討しています。

また、新たなプレーヤーとして登場したのが、
JA(全国農業共同組合連合会)が三菱商事と合弁でつくる「JAMCソーラーエナジー合同会社」です。
大型の畜舎や選果場、物流関連施設など400~600か所を対象に、主に屋根の上に太陽光パネルを設置する
という計画で、2014年度末までに合計で200MWの発電を達成させる計画です。

また、ソフトバンク京都ソーラーパークでの、太陽光発電モジュール納品と施行を担当した
京セラも、東京センチュリーリースと合弁で「京セラTCLソーラー合同会社」を2012年7月設立し、
今後3年間で合計60~70MWの太陽光発電所を稼働させる計画を発表しています。
すでに、大分県、香川県、福岡県、山口県で合計9か所、発電能力で16MWの建設計画が内定。
2012年度中に合計15~20か所で30~35MWの太陽光発電所を建設する見込みとなっています。
また、京セラ単独でも、鹿児島県で国内最大の発電能力をもつ70MWの太陽光発電所を2012年9月から
建設を開始することとなっています。

その他、長崎県松浦市で、市主導でメガソーラーの建設(1.2MW)が決まるなど、
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」のもとで、地方自治体が新たな収入源を探る
動きも出て来ています。

一方で、発電事業者ではなく、住宅での太陽光発電も2011年度には大きく進みました。
太陽光発電協会の調べでは、
2011年度に、発電事業者で53.6MWが新たに運転を開始したのに比べ、
住宅用では1205.9MWの太陽光発電が開始されました。

■ 風力発電

風力発電は、太陽光発電よりも発電コストが低く、世界で大きな注目を集めていますが、
震災後の日本の風力発電の伸び率はあまり芳しくはありません。

上記は、日本風力発電協会がまとめているデータです。
2011年度は、単年度の新規導入量が85MWと低迷し、過去に比べ新規導入が著しく落ち込みました。

電力界社別に見ると、東北電力と九州電力が、累積の導入量では数が多いことがわかります。
最近では、北陸電力や四国電力、中国電力が、
関西電力圏内の電力不足を補うための送電を強化しており(風力発電系統連携)、
その手段として、風力発電を300MW~600MW強化する計画が進行しています。

メーカー別では、世界での風力発電のビッグプレーヤーである、
Vestas、GEの2社が、日本国内勢を抑え、日本国内の風力発電を牽引しています。

一方で、世界各国で注目を集めている洋上風力発電に関する大規模実証実験が、
日本でも始まろうとしています。
環境省、NEDO、及び資源エネルギー庁の国家プロジェクトとして、
着床式あるいは浮体式の洋上風力発電に係る実証研究計画が次々と始まっていきます。

しかしながら、まだまだ諸外国の洋上風力に比べ、実証実験レベルに留まっており、
大きな発電力をもたらすまでには、まだまだ時間がかかりそうです。
また、表の中で、国が管轄するプロジェクトは、全て日本のメーカーが受託しており、
国産の風力発電に対するR&D強化および、低迷する日本企業への投資支援の様子も伺えます。

洋上風力発電については、国土交通省海事局も、2012年8月1日に、
浮体式洋上風力発電施設の建築基準法適用除外を発表し、規制が緩和されたことで、
開発に対する環境面での整備は一部進みました。

また、太陽光発電に力を入れるSBエナジー社も、2012年7月1日、
島根県で48MWの風力発電所建設計画も発表しています。

このように、風力発電分野では、電力会社による推進が一部進むものの、
住宅用も進まない中、政府主導での研究開発色が強くなっています。

■ 地熱発電

地熱発電は、発電コストが太陽光、風力に比べても低く、期待が集まっていますが、
太陽光、風力に比べ、発電所の建設が大規模となることから、
技術面、資金面で開発着手までに多大な時間を要するため、
震災後の新規発電所はまだひとつもありません。

さらに、新規発電所の運転開始までには10年以上要すると言われており、
新たな発電所はまだまだ遠い先の話です。

建設開始の大きなハードルとなっているのが、温泉地への影響です。
環境省は国立・国定公園内の地熱発電開発において、
環境面を配慮した一定条件を満たせば特別地域内での「垂直掘り」を認める
規制緩和策を3月に決定ましたが、
その条件を満たすためには、長期的なアセスメントが欠かせず、
そのアセスメントに10年ほどがかかると言われています。

そんな中、直接、地下の熱水を吸い上げない「バイナリー発電」の分野では、
早期に検討が進んでおり、
福島県の磐梯朝日国立公園の特別地域内にある土湯温泉(福島市)では、
温泉の熱を使った「バイナリー発電」の施設が2013年度中に稼働する見通しとなっています。
しかし、発電出力は0.5MWと小規模です。

地熱発電は、やっと本格的に検討が始まったという段階です。

震災を機に、日本でも再生可能エネルギーに対する機運が非常に高まっています。
個人的な見解としては、すでに着工が進んでいる太陽光発電もさることながら、
潜在的な発電コストの低さで考えると、
洋上風力発電および地熱発電が、将来の日本の発電の柱になると考えています。

この洋上風力発電および地熱発電は、まだまだ実証事件や検討という段階で、
大きな躍進はこれからです。
政府は国産の技術力強化に余念がなさそうという状況ですが、
海外の技術活用も視野にいれ、スピード重視の稼働を早めてほしいと思っています。

sustainable japan

電力・エネルギー等サステナビリティに関する最新トピックスは、Sustainable Japanに掲載しています。御覧ください!

8月30日、米国カリフォルニア州に本社を置く、
太陽光発電パネルメーカーのSolyndra社が、連邦倒産法第11章に基づく
申請を行い、倒産しました。
(ニュースはコチラ

Solyndra社は、CIGS型薄膜太陽光パネルメーカーとして2005年に創業。
クリーンエネルギーの担い手として、オバマ大統領からも絶賛されていました。

ベンチャー・キャピタルから10億ドル以上の資金を調達。
さらに米国エネルギー省からも「債務保証」を受け、
仮に債務不履行となった場合に、エネルギー省が負担をする契約も
とりつけていました。

2009年には、1億ドルの売上を記録しましたが、巨額の債務は山積みのままで、
エネルギー省より「債務保証」に基づき、5億3500万ドルの支払いを受けます。

しかしながら、新たな産業促進を目指したエネルギー省の政策もむなしく、
2年後に倒産。1000人以上の従業員が職を失いました。
また、血税5億3500万ドルも返済はされず、ベンチャー・キャピタルも
10億ドル以上の損失を蒙りました。

このため、アメリカでは、太陽光発電に対する政府補助に対して、
批判的な意見が巻き起こり始めました。

その中で、サステイナビリティ関連のニュースを報道するメディア、
TriplePunditは、面白い議論を展開しています。
 

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未来への教訓

Q. 太陽光発電関連企業は落ち目にあるのか?
A. ノー。世界を見渡せば、この業界は激しい競争にある。太陽光発電パネルの価格は
 著しく下がってきている。今回の問題は、Sokyndraが競争に生き残れなかったという
 だけだ。

Q. ベンチャー・キャピタルはクリーンテクノロジー新興企業への投資をやめるべきか?
A. ノー。むしろ逆で、試行錯誤プロセスは市場メカニズムだ。新興企業は失敗確率の
 高い高リスクビジネスだ。ベンチャー・キャピタルはそのリスクを心得ておくべきだ。

Q. 米国連邦政府はクリーンテクノロジー新興企業への投資をやめるべきか?
A. イエス。政府は債務をどんどん膨らましている。適切な歳出を維持することすら
 できていない。政府は、ベンチャー・キャピタルのような高いリスクをとる余裕は
 ない。これが今回の真の教訓だ。
 

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新しい技術は、競争原理の中で育ってきます。
競争原理の中では、勝者も生まれれば、敗者も生まれます。
上記のTriplePunditの教訓には、僕は合点がいきます。

日本で最近話題になり始めた、
「メガソーラー」と呼ばれるような大規模太陽光発電プラント。

日本の電力企業10社が加盟する電気事業連合会は、
2020年度までに全国約30地点(電力会社10社合計)で、
約140MWの太陽光発電設備を設置する「メガソーラー発電」計画を公表しています。

その中でも、最大の規模を計画しているのが東京電力。
東日本大震災より以前、2008年10月に、20MWのメガソーラーを川崎市と
協働で推進することに合意。
そして、2011年8月12日に、第1号となる「浮島太陽光発電所」(7MW)の運転開始
を開始しました。(ニュースはコチラ

また、ソフトバンク社は、2011年の5月に、
日本全国約10か所に2MW規模のメガソーラーを建設する構想を発表。
7月には全国の知事が参加する「自然エネルギー協議会」を発足。
今日現在で、北海道、岩手県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、
埼玉県、神奈川県、富山県、山梨県、長野県、静岡県、愛知県、三重県、
滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、徳島県、奈良県、
島根県、岡山県、広島県、山口県、香川県、愛媛県、高知県、佐賀県、
長崎県、熊本県、大分県、宮崎県の計34道府県が参加しています。

一方で、太陽光発電の高コスト体質を理由に、
メガソーラー計画に批判的な意見もあります。

そこで、今回、世界のメガソーラーの現状を見ていきたいと思います。

Solar Plazaという団体が、
世界の太陽光発電プラント(Solar Photovoltaic Plant)の
ランキングを発表してくれています。

太陽光発電所名 最大出力(MW) 発電所所有者 発電所所有者の業態 発電所建設企業 太陽光発電パネルメーカー パネルタイプ 完成年
1 カナダ Sarnia 92 Enbridge エネルギー企業 First Solar First Solar CdTe 2010
2 イタリア Montalto di Castro 84 Sunpower 太陽光発電パネルメーカー Sunpower, Sunray Sunpower c-Si 2011
3 ドイツ Finsterwalde I, II & III 83 Q-Cells 太陽光発電パネルメーカー Q-Cells Q-Cells c-Si 2010
4 イタリア Rovigo 70 First Reserve プライベート・エクイティ企業 SunEdison Canadian Solar a.o. c-Si 2010
5 スペイン Olmedilla de Alarcón 60 Nobesol Levante 太陽光発電プラント建設・売電企業 Nobesol Levante Siliken a.o. c-Si 2008
6 米国 Boulder City (Copper Mountain) 55 Sempra Generation エネルギー企業 First Solar First Solar CdTe 2010
7 ドイツ Strasskirchen 53 Q-Cells 太陽光発電パネルメーカー Q-Cells Q-Cells c-Si 2009
8 ドイツ Lieberose 53 Juwi Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 Juwi Solar First Solar CdTe 2009
9 スペイン Puertollano I 52 Renovalia Energy 太陽光・風力発電売電企業 Renovalia Energy Suntech, Solaria c-Si 2008
10 ポルトガル Moura (Amareleja) 46 Acciona Solar 持続可能(再生可能エネルギー、インフラ、水)施設デベロッパー Acciona Solar Yingli Solar c-Si 2008
11 ドイツ Köthen 45 Deutsche Eco 太陽光発電プラント建設・売電企業 Deutsche Eco BP Solar c-Si 2011
12 イタリア Cellino San Marco 43 AES Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 AES Solar First Solar CdTe 2010
13 ドイツ Waldpolenz 40 Juwi Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 Juwi Solar First Solar CdTe 2008
14 チェコ Ralsko 38 CEZ Group エネルギー企業 CEZ Group c-Si 2010
15 イタリア Alfonsine 36 Reno Solar, Tozzi Holding 太陽光発電プラント建設・売電企業 Reno Solar, Tozzi Holding
16 チェコ Vepřek Solar Park 35 Decci 不明 Decci PhonoSolar c-Si 2010
17 スペイン La Magascona & Magasquilla 35 Fotowatio Renewable Ventures 太陽光発電プラント建設・売電企業 Fotowatio Renewable Ventures Suntech c-Si 2008
18 スペイン Arnedo 34 T-Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 T-Solar 2008
19 ドイツ Reckahn 32 Belectric 太陽光発電プラント建設・売電企業 Belectric First Solar CdTe 2010
20 フランス Le Gabardan 26 EDF Energies Nouvelles 太陽光・風力発電プラント建設・売電企業 EDF Energies Nouvelles
21 ドイツ Ernsthof 34 Relatio 太陽光発電プラント建設・売電企業 Relatio LDK Solar c-Si 2010
22 スペイン Dulcinea 32 Avanzalia 太陽光・風力発電プラント建設・売電企業 Avanzalia Kyocera, Suntech c-Si 2010
23 イタリア Sant’ Alberto 35
24 スペイン Alamo (I, II, III, IV) 34 Gestamp 太陽光発電プラント建設・売電企業 Gestamp Trina Solar c-Si 2010
25 ドイツ Tutow I, II 31 Juwi Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 Juwi Solar, RIO Energie First Solar CdTe 2010
26 米国 Cimarron Solar Facility 30 Tri-State エネルギー企業 First Solar First Solar CdTe 2010
27 スペイン SPEX Merida/Don Alvaro 30 Deutsche Bank, ecoEnergías 銀行, 太陽光発電プラント建設・売電企業 Deutsche Bank, ecoEnergías Solarworld c-Si 2008
28 チェコ Ševětín 30 CEZ Group 太陽光発電プラント建設・売電企業 CEZ Group c-Si 2010
29 ドイツ Helmeringen 26 Gehrlicher Solar 太陽光発電プラント建設・売電企業 Gehrlicher Solar First Solar CdTe 2010
30 米国 DeSoto 25 Floride Power & Light エネルギー企業 Floride Power & Light Sunpower c-Si 2009

メガソーラー・トップ30の場所


より大きな地図で 世界の太陽光発電プラント最大出力ランキングトップ30 を表示

ここから、読み取れるものを、いくつかまとめていきたいと思います。

1. メガソーラーは、ヨーロッパ諸国に集中。

上記の30メガソーラーを国別にまとめてみると、

ドイツ  9
スペイン 7
イタリア 5
チェコ 3
米国 3
フランス 1
ポルトガル 1
カナダ 1

となり、ヨーロッパ諸国が86.7%を占めています。

実際に、ドイツ、イタリア、スペイン、チェコでは、
2007年前後から急速に太陽光発電での発電量が上昇しています。


※出所:”Photovoltaic Power Systems Programme”, IEA-PVPS, 2010
     and “Top 30 Solar PV Markets”, Solar Plaza, 2011

この背景には、
固定価格買取り制度」(Feed-in-Tariff)の存在が挙げられます。
ドイツでは2000年、チェコとイタリアでは2005年、スペインでは2007年から開始された、
固定価格買い取り制度により、太陽光発電所で発電された電力の販売価格が上昇し、
太陽光発電所運営の収益性が良くなりました。

その結果、メガソーラーの建設も進んできています。

日本でも、2011年8月26日に固定価格買い取り制度を定めた、
「再生可能エネルギー特別措置法」が成立しました。
この法律による影響については、あらためてブログでとりあげたいと思っています。
 

2. 専業者中心のヨーロッパとエネルギー会社主導の北米

ヨーロッパでは、「太陽光発電プラント建設・売電企業」が
メガソーラーの事業者となる傾向があるのに対し、
北米では、「エネルギー企業」がメガソーラー事業を牽引しています。

これは、大規模な固定価格買い取り制度や、再生可能エネルギー比率を高める
法律が整備されているヨーロッパでは、
太陽光や再生可能エネルギーを専業とした新興企業の設立を後押ししているのに対し、
まだ整備が進んでいない北米では、
資本力のある既存のエネルギー企業が、将来に向けての事業多角化や、
社会に対するブランド戦略の意味合いで、太陽光発電に取り組んでいるという違いが、
挙げられます。

また、ヨーロッパ、北米双方で、太陽光発電パネルメーカーによる、
メガソーラー運営も最近の大きな流れの一つです。
こちらについては、パネルメーカーが、製造、建設、運営までの、
一連のサプライチェーンを、垂直統合し、
利益率の上昇や、PDCAサイクルの高速回転を目指すという、
戦略上の要因が挙げられます。
 

3. 農地や荒れ地を中心とした立地

メガソーラーの立地については、
地方都市近郊の農地や荒れ地での建設が中心です。
洋上や山間部に設置されているケースは、
トップ30の中にはありません。

また、既存の地方空港の空き地を利用したメガソーラーの建設も、
ヨーロッパを中心に見られます。
 

4. 金融関係資本の投資が加速

ランキング18位のT-Solarに対し、
プライベートエクイティ世界大手のKKRがドイツの再保険会社Munich Reと共同で
49%の株式を買収したり、(ニュースはコチラ
ランキング30位のFPLが、2億5000万ドルの社債発行に成功したりと、
金融関連の資本が、メガソーラーにも集まってきています。(ニュースはコチラ
 

冒頭で紹介した、日本の電気事業連合会の14MWメガソーラー構想は、
これらの世界レベルのメガソーラーを見ると、規模が霞んで見えます。

また、ソフトバンクが打ち出している約200MW規模の構想については、
すでに、ヨーロッパ諸国では、専業メーカーにより実現されている規模であり、
規模の観点では、決して「絵空事」ではありません。

日本の太陽光発電については、
再生可能エネルギーを推進するという考えでは一致していても、
各論の推進の場面で、高コストを理由に反対する声があります。

であるならば、ポイントは、
「高コストだからダメ」で終わらせるのではなく、
いかに発電コストを削減していけるかにあるのではないでしょうか。

そのための、太陽光パネルのエネルギー変換効率の向上、
太陽光パネルおよびその部品の製造技術の向上、
低コストオペレーションのための取組の推進、
そして、その技術革新を支えるための官民資金の呼び込み。

こうした会話や取組こそが今、必要なんだと思います。

sustainable japan

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風力、太陽光などの再生可能エネルギーへの関心が高まっていますが、
果てして、再生可能エネルギーのみを活用して、
社会に必要なエネルギーを供給することは可能なのでしょうか?

国際エネルギー機関(IEA: International Energy Agency)が発表している
World Energy Outlook (2008)“では、悲観的な結果となっています。

※”World Energy Outlook”の最新版は2010年のものですが、2010年、2009年の
 ものは有料のため、無料で入手できる最新のものは2008年でした。


2030年までに、発展途上国の経済発展に伴い、
世界のエネルギー需要が急増するのに対し、
再生可能エネルギーによるエネルギー供給は、
2030年時点でもわずか2%にすぎません。

上記のものはガソリンなどの動力エネルギーも含んでいますので、
再生可能エネルギーが活用される電力に絞って見てみるとどうでしょうか。


電力エネルギーも2030年までに需要が大きく増加していきます。

やはり、ここでも再生可能エネルギーの割合は、
風力、地熱、太陽光・太陽熱、潮力を足しても、約6%にすぎません。

石油が枯渇するピーク・オイル説が叫ばれたり、
石油・石炭・天然ガスという化石燃料が与える環境への悪影響の観点からも、
再生可能エネルギーの必要性が唱えられていますが、
世界のエネルギーの権威は悲観的な見方をしています。
再生可能エネルギーの可能性はこんなにも小さいのでしょうか。

僕はそうは思っていません。
上記の国際エネルギー機関のデータの統計手法を考慮すると、
予測が悲観的となるのは当然なのです。

国際エネルギー機関のデータは、過去30年ほどのデータをもとに、
人口変動や交通量推移、GDPなど複数の変数をもとに、
計量経済学の手法で、供給源ごとのエネルギー需要を予測をしています。
ポイントは、過去のデータに依存しているということです。
ある程度の技術革新は変数に加えているようですが、
大規模な技術革新は予測データには反映されないのです。

今後、再生可能エネルギーの技術開発に大きく投資がされていく中、
過去の推移の延長線上に未来があると考えることは適切ではありません。

では、再生可能エネルギーにはどれほどの可能性が将来展望されるのでしょうか。

2011年1月27日のScienceDailyというインターネットメディアは、
スタンフォード大学のジャコブソン教授(市民・環境工学)と
カリフォルニア大学デービス校のデルッチ教授が、
学術論文の中でこのように発言したことを報じました。

「20年~40年後には今日の技術を用いれば、
すべてのエネルギーを再生可能エネルギーで供給できる」

彼らの計画によると、
90%の電力を風力、太陽光・太陽熱、水力でまかない、
残りの10%のうち、4%を地熱、同じく4%を水素燃料、残りの2%を潮力で
調達することが可能だということです。

また、飛行機や船舶、車に使われる流体燃料として、
電気または水素燃料で代替が可能で、
さらに、水素燃料をつくるのに必要な電力も、
再生可能エネルギーで作り出すことができるということです。

2030年までには新たなエネルギー需要をすべて再生可能エネルギーで供給し、
2050年には、全エネルギーを再生可能エネルギーに代替可能となるようです。

再生可能エネルギーについて懸念される課題については、
それぞれ以下のように回答しています。

「風力、太陽光は天候に左右され、安定的な電力供給源にはならない」
⇒ 昼に強い太陽光、夜に強い風力を組み合わせて補完させ、
  それでも不足する電力は、水素燃料で充当すればいい。
⇒ スマートグリッドで長距離電力網を構築すれば、どこかの地域で発電できた
  電力を他の地域に回し、全体的として安定供給は可能となる。
⇒ 消費量の多い時間と、少ない時間の差を活用し、少ない時には蓄積し、
  多い時には放出することも可能。

「発電設備に必要なプラチナやレアアースなど希少資源は足りるのか?」
⇒ 資源量は今でも十分にあり、さらにリサイクルをすれば不足はしない。
⇒ 不足した資源を他の資源でも代替することも可能で問題はない。

「風力や太陽光の発電プラントに必要な土地は十分あるのか?」
⇒ 100%の電力供給をまかなうのに必要な土地専有面積は
  わずか世界の土地の0.4%。設備間のスペースに必要な面積を
  いれても、それでも世界の土地の1.0%にすぎない。

彼らは、今後の展開に対し、
「技術は今でも十分にある。あとはやるかやらないかだ。」と締めくくっています。

個人的には、彼らが認識されていない問題がいくつもあるのだと思います。
しかしながら、IEAが2030年にわずか全体の2%しか供給できないと言っていたところに、
2050年には100%供給できるという意見が登場したことは、
新たな可能性を感じさせてくれます。

再生可能エネルギーの将来や可能性を、低く見積もる必要はないと考えています。