※僕の別ブログである「アメリカ・サンダーバードMBA留学ブログ」から転載しました。

2010年10/28~30にミシガン州デトロイト近郊のミシガン大学キャンパスで、
Net Impact“という年に一度の盛大なイベントが開催されます。
同名のNet ImpactというNPOが開催しています。

名前についている”Net”は、インターネットのことではなく、
ヒューマンネットワークを意味しています。

このイベントは、
世界中のソーシャルビジネスプレーヤーが集結する世界最大級の
年に一度のネットワーキング舞台です。

ソーシャルビジネスは「社会企業」とも呼ばれています。
環境保護、代替エネルギー、貧困対策、国際協力、弱者救済、
途上国でのインフラ整備・医療介護整備、など「社会的」と呼称されている
ビジネスに関連しているプレーヤーが、2500名以上集まります。
具体的には、
社会起業家、投資家、財団、グローバル企業のCSR部門、NPO、コンサルタント、
エンジニア、学生(ビジネス、公共政策、環境など)などです。

イベントでは、300以上の講演、テーマごとのディスカッションが実施され、
関係者間での意見交換、アイデア入手、パートナー探索が行われます。

Net Impactは、1993年に
アメリカのビジネススクールの学生により創設されました。
当初は学生だけのNPOでしたが、1998年に卒業後のOB/OG同士が再度集まり、
学生だけの団体から社会人を含む団体へ組織の再構築が行われます。
そして、現在のかたちでの社会人を中心としたイベントが2001年に始まり、
年に一度のイベントは年々参加者を増やし続け、現在に至っています。

このような背景のため、このイベントでは「就職」も大きくフォーカスされています。
ソーシャルビジネスに興味のある学生は、
世界の主要なプレーヤーが一堂に会する場で、必死にネットワークを構築していきます。
学生を支援するため、イベント側も、キャリアカウンセリングブースを数多く設け、
無料で、ソーシャルビジネスへの就職を成功させるためのアドバイスを提供しています。

Net Impact は、現役のプレーヤーと未来のプレーヤーが、
互いに交流しあう一大イベントなのです。

アメリカでは、ここ数年で、ソーシャルビジネスが就職先として
大きな位置を占めるようになってきました。
背景として、ソーシャルビジネスプレーヤーが
「ビジネス」としての存立基盤を強固にしているということが挙げられます。

日本で「ソーシャルビジネス」というと、
ビジネスっぽい非営利活動というイメージがあるかもしれませんが、
世界的には、もともと営利組織として組織が運営され、
社会的側面の強い事業内容を営んでいるプレーヤーが、
「ソーシャルビジネス」と呼ばれています。
つまり、立派な企業なのです。

日本にも、Net Impactの支部、「ネットインパクト東京チャプター」があります。
※サイトをみてみたら、
日米学生会議で一緒に活動していた友人が事務局をやっていました(笑)

しかし、日本では、ソーシャルビジネスの労働市場は決して大きくありません。
原因として、年収や雇用の安定性が挙げられますが、
最大の原因は、労働市場の国際性が欠落し、市場が国内に閉じていることです。
ソーシャルビジネスの大半は、途上国に位置しており、
先進国のプレーヤーも彼らをサポートするため、現地駐在を頻繁にしています。
環境・エネルギー業界のプレーヤーも、人件費の安さを求めて、
積極的に海外に展開していっています。
国際的な労働市場を欠いている日本では、普及に時間がかかりそうです。

アメリカでは、「ソーシャルビジネス」の興隆を受け、大学院教育も変化しつつあります。

従来、ソーシャルビジネスという概念は、公共政策の分野から興りました。
1980年以降、政府が緊縮財政を始めたことを契機に、
これまで税金で維持してきたソーシャルサービスを
独立財源をもつビジネスへと衣替えをはかる必要性がでてきたためです。
そのため、ソーシャルサービス教育は公共政策大学院(MPA/MPP)が
中心となっていました。

しかし、ビジネスという名前がついている分野に、
ビジネススクールが黙っているわけはありません。
トップクラスのビジネススクールが、こぞってカリキュラムに
「ソーシャルビジネス Social Business」
「ソーシャルアントレプレナーシップ Social Entrepreneurship」
というラインナップを加え、一気にソーシャルビジネス教育を充実させていきます。

さらに、ソーシャルビジネスのビジネスとしての自立性や収益性が強調される
につれて、ビジネススクールの存在感がますますましていきます。
この流れに、NPOマネジメントという独自の教育を誇っていたイェール大学も屈し、
1998年に、授与単位を、MPPM (Master of Public and Private Management)から、
MBAに変更しています。

今では、公共政策教育の最高峰・ハーバード大学ケネディスクールの
ゴールドスミス教授も、著書『ネットワークによるガバナンス』の中で、
「公共政策大学院はビジネススクールの要素を取り入れていく必要がある」
という内容を書き記しています。

こうした状況の中で、
MBAとMPAのどちらにいくべきかと、悩む学生も増えてきました。
Yahoo! Answersでは、このような回答がされていましたので、
ご紹介しておきます。

MBA: マネジメント職(管理・実行部門)への就職に強い。ソーシャルビジネスに強い。
MPA: リサーチ職(分析部門)への就職に強い。NPOに強い。

参考にしてください。

最後に、ソーシャルビジネスを日本に紹介している第一人者であり、
僕の大学時代からの友人でもある、槌屋詩野さんのHPを紹介します。
このHPで彼女の雑誌投稿記事が閲覧できます。
世界のソーシャルビジネスやBOPビジネスの動きを把握できますので、
ぜひご覧ください。

まだまだ自分自身もラフな理解ですので、
引き続きいろいろ調べていこうと思います。