※僕の別ブログである「アメリカ・サンダーバードMBA留学ブログ」から転載しました。
こんにちは。
先日、アリゾナ州立大学(Arizona State University, ASU)の
テクノロジー&イノベーション学部(College of Technology and innovation)の
Mark Henderson教授が、
僕が留学中のサンダーバード国際経営大学院で出張講義を開催してくれました。
プレゼンテーションのテーマは、
今後ますます注目されていくBOP市場(世界の貧困層向けビジネス)について。
途上国支援というと、ボランティアやNPO活動が想像されますが、
僕、個人としては、ボランティアベースの活動は、あまり好きではありません。
従事者の奉仕の精神に依存しすぎていて、持続可能性がないからです。
しかし、援助をビジネスベースで実施していくスタイルに対しては
非常に興味がありますし、応援していきたいと考えています。
Mark Henderson教授の取り組みは、ビジネスベースで実施していこうという発想。
GlobalResolveという名のプロジェクトを運営しており、
講義の中では、その成果と課題について説明がありました。
<GlobalResolveとは>
このプロジェクトでは、
途上国の現地のニーズに対応した画期的な製品を
デザインして提供しています。
具体的には、
1. 現地を訪問 (現在はガーナが舞台)
2. 現地のニーズを把握
3. 製品デザイン
4. ビジネスプラン設計
5. 現地に製造販売会社設立
という流れです。
これまでの実績としては、下記のようなものがあります。
‐調理用加熱機器の販売
[現地課題] 人体に悪影響のある煙を吸い、現地で多数死傷者が出ている。
[製品] 現地で製造メンテナンス可能な加熱機器をデザイン
・家庭用ランプの販売
[現地課題] 電気供給がないため、夜に団らん、勉強などができない。
[製品] 持ち運び可能で、発電装置つきのランプをデザイン
<GlobalResolveの課題>
製品の経営としては赤字ではないので、
一応、ビジネスっぽくなっていますが、
残念ながら、持続可能性がまだありません。
なぜなら、運営に必要な製品設計、製造、マーケティング、販売などすべてが
ASUおよび現地大学の教授や学生によって提供されているためです。
活動はまだビジネスと呼べるレベルではなく、
大学によるボランティア活動の域を出ていません。
これでは、大学の教授や学生を超えた規模での運営はできませんし、
大学が予算を削れば、おのずと活動は継続できなくなってしまいます。
Thunderbirdはビジネススクールなので、
この点は僕も含め学生から厳しい言及がなされてました。
このように、課題が多いGlobalResolveではありますが、
活動の概念としては素晴らしいものなので、
応援していきたいと思っています。
余談ですが、ASUは素敵な大学です。
今回、テクノロジー&イノベーション学部の活動を紹介しましたが、
そもそも「テクノロジー&イノベーション学部」とは何なのでしょうか。
かつては、ASUも、法学部、経済学部、工学部というように、
伝統的な学部区分をしていました。
しかし、現在の学長が、「学際(学問横断)的な研究をすべし」という方針のもと、
学部区分の再編を断行したのです。
そのため、テクノロジー&イノベーション学部は、
社会イノベーションを目的とする
工学、社会学、経済学、経営学、文化人類学などの教授が集まって
構成されています。
学生のカリキュラムも、これらの学問を横断的に履修することが
求められています。
「機能単位→ミッション単位」という組織論の大きな流れを、
大学というレベルで実現している、面白い取組です。
ASUで勉強している日本人留学生の数は約100名ほど。
残念ながら、年々減少しているようです。
ASUでは最先端の社会起業家教育が受けられます。
社会起業 Social entrepreneurshipを大学で学びたい方は、
Stanford, Yaleなどと合わせ、ASUも検討してみてください。