イギリス政府の内閣府が、
Open Public Service White Paper“と題するレポートを発表しました。
日本語に直訳すると「開かれた公共サービス白書」となります。

この白書の中で書かれているイギリス政府の狙いは、
これまで中央・地方政府が実施してきた「公共サービス」を、
民間企業が実施していくことができるよう、
政府のあり方や役割を転換をしていくという、
従来の「公共」の考え方を大きく改革していくことにあります。

なぜイギリス政府は、
公共サービスの実施主体を展開してく必要性を感じているのでしょうか。
白書の中で、政府はこう説明しています。

We are opening public services because we believe that giving people more control over the public services they receive, and opening up the delivery of those services to new providers, will lead to better public services for all.

1つ目の理由は、「公共サービスの質の向上」にあります。
公共サービスの提供者が多様になることで、より市民の求める公共サービスが
提供されていくようになるというものです。
競争原理に近い考え方です。

さらに、白書の中で、2つ目の理由についてこう説明しています。

in this economic climate, when times are tight and budgets are being cut to stabilise the economy and reduce our debts, opening public services is more important than ever – if we want to deliver better services for less money, improve public service productivity and stimulate innovation to drive the wider growth of the UK economy.

つまり、2つ目の理由は、「公共サービス提供コストの削減」です。
経済が停滞し、政府予算が厳しくなる中で、競争原理を活用することで、
生産性の向上、新たなサービスの開発などを進めていこうということです。

この動きは、社会の大きな転換を意味していると思います。

従来、公共サービスは政府によって企画・提供されてきました。
そして、人々は、生活や社会に必要だと思うサービスや取り組みを
政府や議会に働きかけて、公共サービスとして制度化してきました。

しかし今回の動きをシンプルに表現すると、
「何か要望がある場合は、政府に働きかけるのではなく、
自分で起業をして公共サービスを提供していってください。」
というものです。

このような新たな社会システムの中で、政府の役割は何か。
白書ではこう説明します。

we will give more freedom and professional discretion to those who deliver them, and provide better value for taxpayers’ money.

「政府は、公共サービス提供者により大きな自由と裁量権を与え、
より価値のあるものに公的資金を投じる」

すなわち、政府の役割を、
市民にとってどのようなサービスが必要かを考え提供することではなく、
市民が自由に公共サービスを考え提供できるように環境を整備すること
と定義しているのです。

さらにこの白書では、この「開かれた公共サービス」を支える仕組みとして、
新たな2つの提案をしています。

■ 委託制度

政府は、公共サービスを「広く社会に開く」としながらも、
市場の公平性やセーフティの観点から、
委託制度を導入するのが良い方策ではないかと提案しています。

■ 互助組織制度

政府は、公務員の社会的起業を促進するため、
従業員が経営と運営を同時に実行する「互助組織制度」を
提案しています。

 

この「委託制度」と「互助組織制度」については、
既存の社会起業家から賛否両論が出ているようです。
(出典はコチラ

委託制度については、政府の管理が厳しくなることに関する懸念。
互助組織制度については、新たなプレーヤーが増え、
市場競争が激しくなることに対する懸念。
特に、互助組織制度については、大手民間企業が、この互助組織制度を
活用して公共サービス市場に参入し、
体力のない既存の社会企業が廃業を余儀なくされることを懸念しているようです。

上記で説明してきた「公共サービスの政府離れ」の背景について、
僕は政府の財政難が大きな影響を及ぼしているのではないかと考えています。
ほぼすべての先進国は、現在深刻な財政難に陥っています。
歳出削減と公共サービスの維持・向上を同時に実現するためには、
公共サービスの運営効率を上げるしかありません。

政府の運営が「非効率」だと言われる中で、
公共サービス主体が政府でなくなっていく流れは、
今後他の国でも大きくなっていくのではと考えています。

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