太陽光発電の普及・推進のためにマーケット分析などを行っている
Solar Plaza(本社オランダ)は、
CIGS型太陽電池のエネルギー効率ランキングを発表しました。

CIGS型太陽電池は、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)からなる
半導体材料CIGSを用いた太陽電池。
エネルギー変換効率、製造コスト、環境基準などの面で優れ、
世界の太陽電池市場を大きく牽引しています。

エネルギー効率の分野で今でもトップに君臨しているのは、単結晶シリコン(Si)型です。
しかし、シリコンは調達コストが高いことが大きなネックとなり、
現在では、コストの低い薄膜型の普及が進んでいます。

CIGS型の研究開発は近年大きく進み、
効率の面でも単結晶シリコン型に追いつこうとしています。


※出所:潜在的高ポテンシャルに期待が集まるCIGS 太陽電池

Solar Plazaは、世界の有数のCIGS型太陽電池を分析し、以下のランキングを発表しました。


※出所:Solar Plaza “Top 25 Solar PV Module Efficiency (CIGS)

トップに輝いたのは、台湾のTSMC
日本のCIGS開発の一端を担うホンダや、
世界のトップ太陽電池メーカーNano Solar(US), Q-cells(Germany)を抑えての堂々の1位。
台湾勢の技術力はどんどん向上しています。

TSMCはもともとは半導体専業のファンドリーメーカー。1987年に設立されました。
半導体製造技術を生かし太陽電池の開発・製造に着手。
2010年9月に台湾の台中市にR&Dセンターが完成。
2012年の第1四半期には100MWの生産工場、2012年末までにはさらに700MWの生産工場が、
完成する予定です。


TSMCのR&Dセンター(台中市)

2位のMiasoléは、米カリフォルニア州サンタクララ市に位置する、
太陽電池専業メーカーで、2003年に創業しました。
クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズや、
バンテージポイント・ベンチャー・パートナーズといった名だたるプライベートエクイティ企業
からの資金調達を受け、急速に成長しています。
現在、120MWの生産能力を持っています。

太陽光発電普及の最大の課題である高コスト。
それを解決すべく、次々と新たなプレイヤーが登場しています。

太陽光発電が世界の発電力の中に占める割合はとても小さいですが、
この分野に、大きな投資が集まっていることもまた事実です。

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電力・エネルギー等サステナビリティに関する最新トピックスは、Sustainable Japanに掲載しています。御覧ください!

※2015年の時点の最新データを含めてコチラにアップデートしましたので御覧ください。

前回、日本のエネルギー・発電供給状況についてレポートしました。
日本のエネルギー・発電力の供給量割合

今回は世界各国の状況をお伝えしていきます。

はじめに、2008年の世界主要各国の発電電力の電源割合をまとめました。


※出所:IEA

ヨーロッパ諸国は原子力発電に対する依存度が高い

ヨーロッパは原子力発電を大いに活用した発電をこれまで実施してきています。
原子力発電の割合は、フランス(76.4%)、ベルギー(53.7%)、スウェーデン(42.6%)、
スイス(40.2%)、フィンランド(29.6%)。
これらの国は日本の原子力割合23.9%を上回っています。
さらに、ドイツ(23.3%)、スペイン(18.8%)、イギリス(13.5%)と続きます。

背景には、エネルギー自給率を高めようという狙いがあります。
例えば、フランスは国内に天然資源が少なく、火力発電を行うためには、
化石燃料を国外より調達する必要があります。
天然ガスパイプラインが高度に整備されているヨーロッパ諸国では、
ロシアやカスピ海周辺からの天然ガスの供給も技術的には可能です。
しかし、安全保障上の観点から海外依存度を高めたくないフランスは、
原子力発電所強化によるエネルギー自給率向上の道を選んでいます。

一方、石炭の産地であるドイツや、北海に油田やガス田を有するイギリス、デンマークでは、
国内産の化石燃料を使った火力発電が可能ですが、
他の先進国と同様、原子力発電を「経済的な新技術」として迎え入れ、
1950年以降建設を進めてきました。

しかしながら、国内外での原発事故を機に、脱原発の機運がいくつかの国で高まっています。
結果、ドイツ、ベルギー、スイスでは、原子力発電所を全廃する方針が決まっています。
その他の原子力発電所依存度の高い、イギリス、スペイン、スウェーデンでも、
脱原発を求める社会運動が活発化しています。

原子力発電所依存度ゼロのイタリア、デンマーク、ノルウェー

原子力発電所の安全性に懐疑的なイタリア、デンマークでは、
早くから原子力発電所を放棄する選択をし、現在、原子力発電所は稼働していません。
※放棄を決めた年は、イタリア(1987年)、デンマーク(1985年)。
国内での発電能力が乏しくフランスからの電力輸入に依存しているイタリアは、
原発再開を政権目標としていましたが、福島第一原子力発電所事故後の国民投票で、
原発再開に94%が反対し、再開計画を見送りとなっています。

再生可能エネルギーに力を入れるデンマーク、ドイツ、スペイン、イタリア、イギリス

エネルギー自給率の向上、原子力発電所への懸念という大きな流れ、
さらには、環境に対する関心の高まりを受け、
デンマーク、ドイツ、スペイン、イタリア、イギリスでは、
風力や太陽光などの再生可能エネルギーが大々的に促進されています。

ドイツ、スペイン、イタリアでは2005年から大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設が活発になっています。
※詳細は「メガソーラーの可能性 ~世界の太陽光発電プラント・トップ30~
2008年時点で、太陽光発電の占める割合は、
ドイツ(0.7%)、スペイン(0.8%)、イタリア(0.1%)ですが、
2009年、2010年にこの割合は、2倍前後に拡大していると推測されます。

一方、風力発電が促進されている国は、デンマーク、スペイン、ドイツ、イタリア、イギリスです。
太陽光発電と同様2005年前後から建設は進み、2008年時点で、風力発電が占める割合は、
デンマーク(19.0%)、スペイン(10.3%)、ドイツ(6.4%)、
イタリア(1.5%)、イギリス(1.8%)。
こららの国では、2009年、2010年ともに風力発電はさらに拡大を続け、
特に最近では、イギリス、デンマークでの洋上風力発電(オフショア風力)の建設が進んでいます。
※詳細は「世界の風力発電動向~各国発電量と洋上・陸上風力発電所ランキング~

ヨーロッパにおける再生可能エネルギー促進の背景となっているのが、EU目標設定です。
1997年にEUは、
「2010年までに最終エネルギー消費の12%を再生可能エネルギーで賄う」という
政策目標を掲げ、さらに2004年に、
「2020年までに20%」という長期目標を掲げました。
このEU目標は、各加盟国に対する目標設定を義務付けることにつながり、
結果として、国を挙げての再生可能エネルギー大号令が始まっています。
EUが定義している再生可能エネルギーには、水力発電も含んでいるため、
各国の目標設定には、水力発電の状況を鑑み、大きな開きがあります。
※EU加盟国ごとの目標数値はコチラ

海外からの化石燃料輸入に依存する日本・韓国・台湾

国内に化石燃料資源の乏しい日本・韓国・台湾は、
石炭・石油・天然ガスを輸入することで電力需要を賄っています。

その結果、この3か国の化石燃料輸入量は世界でもトップレベルです。
========================================
石炭:日本1位(187Mt)、韓国3位(119Mt)、台湾5位(63Mt)
石油:日本3位(179Mt)、韓国5位(115Mt)
天然ガス:日本1位(99bcm)、韓国6位(43bcm)
========================================

化石燃料の海外依存度は、「資源枯渇時の脆弱性」「安全保障上の脆弱性」
「資源逼迫時の価格高騰」という3つの脆弱性を内包します。
エネルギー自給率の向上は3か国それぞれの戦略課題となっています。

また、非資源国であるという同じ理由で、原子力発電の割合も多いのが特徴です。

国内産石炭に大きく依存する中国・インド・オーストラリア・南アフリカ

世界の石炭産出国ランキングは、2010年時点で以下となっています。
============================
1位 中国(3,162Mt)
2位 アメリカ(997Mt)
3位 インド(571Mt)
4位 オーストラリア(420Mt)
5位 インドネシア(336Mt)
6位 ロシア(324Mt)
7位 南アフリカ(255Mt)
=============================

この上位7か国で世界全体の石炭産出量の84%に達します。
そして、この産出国は国内の発電における石炭依存度が非常に高い状況になっています。
中国(79.1%)、インド(68.6%)、オーストラリア(76.8%)、南アフリカ(93.2%)。
その他のアメリカ、インドネシア、ロシアでは石油や天然ガスも産出できるため、
石炭単独の依存度は50%を下回っていますが、化石燃料全体の割合はやはり高いです。

今後、上記の中国、インド、南アフリカなどの新興国が経済発展するにつれ、
同国内での電力需要は飛躍的に向上していくことが予想されます。
その際、世界の石炭価格はさらに高騰し、石炭だけで電力需要を賄いきれなくなった
国々は、他のエネルギー源を用いた発電に着手をしていくと考えられます。
例えば、昨年、世界の半数近くの石炭を算出している中国が、
さらに海外産の石炭を輸入し始めるという石炭の純輸入国に転じています。
インドもすでに石炭の純輸入国となっています。
中国やインドでは、風力発電、太陽光発電などの建設が進んでいますが、
この流れをどこまで加速できるかに、世界の化石燃料価格の趨勢がかかっています。

さらに、石炭は、石油や天然ガスに比べ、発電1kWあたりの温室効果ガス発生量が多く、
環境面から問題視されている燃料源です。

石炭を効率的に電気エネルギーに転換する技術においては日本企業が優れています。
日本の技術を他国に導入していくことで、世界の石炭消費量の増加を抑制することも可能です。

拡大する先進国・新興国での天然ガスの活用

多くの先進国、新興国では、天然ガスに対する依存度が非常に大きい状態となっています。

特に、原子力発電所をもたない新興国(東南アジア、西アジア、アフリカ、南米)では、
この天然ガスからの発電割合がとても大きいのが目立ちます。

天然ガスは、石炭や石油に比べ、温室効果ガス排出量が少ないですが、
温室効果ガスそのものを排出することには変わりはなく、
天然ガス火力発電の伸長は、地球温暖化に悪影響を与えます。

多くの国では、原子力発電所の設置を検討して言いますが、
福島第一原子力発電所事故の経験もあり、どこまで浸透するかは不透明な状況です。
その状況下で、新興国でも再生可能エネルギーの建設が促進されています。
再生可能エネルギーの発電コストが高いことが注目されていますが、
天然ガス価格の高騰は、既存の火力発電コストを押し上げることも意味します。
火力と再生可能エネルギーとの相対的な発電コストの差は縮まっています。

フィリピンとインドネシアで進む地熱発電

再生可能エネルギー全体の中でも、フィリピンの地熱発電割合(14.4%)は目立ちます。
また、インドネシアでも3.2%をマークしています。
フィリピンとインドネシアは環太平洋造山帯に位置する火山地帯。
豊富な地熱を重要なエネルギー源として位置付けています。

フィリピンでは、1976年に原子力発電所が着工し、1985年工事がほぼ終了したものの、
1986年に発足したアキノ政権によって同発電所の安全性および経済性が疑問視され、
運転認可が見送られた経緯があり、その後、地熱発電を大きく促進しています。
インドネシアでも、一時検討されていた原子力発電所計画が、福島第一原子力発電所事故を契機に頓挫し、
その後、大規模な地熱発電の拡大計画を政府が打ち出しています。
こうして、フィリピン、インドネシアともに、地熱発電プロジェクトには、
海外の金融機関や商社も大規模に出資を行い、開発が進んでいます。
※詳細は「世界と日本の地熱発電の状況~日本、アメリカ、フィリピン、インドネシア、アイスランドを中心に~

水力発電の割合が大きいブラジル、スイス、ノルウェー、カナダ、スウェーデン、ベトナム

水色の水力発電の割合が大きいのがこの6か国。
豊富な水資源と勾配の激しい山地により、大規模な水力発電所が設置されています。
特に顕著なのがノルウェーとブラジルで、
それぞれの発電全体の98.5%、79.8%を占めています。

水力発電も再生可能エネルギーのひとつとみなされ、注目を集めていますが、
多くの先進国では、大規模ダムの建設は一通り終了しており、
水力発電所の数は横ばいとなっています。
一方、発展途上国では今後の発電の柱として、水力発電を位置付けており、
世界銀行などが建設を支援しています。

水力は温室効果ガス排出量が最も少なく、維持コストも小さいエネルギー源である一方、
堆砂によるダム寿命の縮小、魚類生態系への影響、水質の変化など負の側面も有しています。
さらに、近隣居住地や歴史的文化物の水没など社会的な損失ももたらします。
そのため、大規模水力発電を再生可能エネルギーから除外して考える考え方もあります。
 

ここまで、発電割合から各国の状況を見てきましたが、
最後に、2008年の各国の電力消費量の状況もみておきたいと思います。


※出所:IEA

ここから3つのポイントを指摘できます。

北欧諸国は一人あたりの電力消費量が多い

電力消費量が突出しているのが、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、そしてカナダ。
背景にあるのは、厳しい冬場の暖房費です。
寒冷地域の暖房性能の改善や、家全体の断熱効果の改善は、
これらの国の電力消費量を下げることにつながります。

アメリカ・オーストラリアは電力浪費が多い

一方、寒冷地域でないのにかかわらず、電力消費量が多いのがアメリカ、オーストラリア。
この2か国は、一人あたりの電力「浪費」が多い、電力浪費大国社会であるといえます。
世界全体のエネルギー効率改善のために、
浪費生活の見直しと、発電、配電、エネルギー転換のそれぞれの効率を
さらに向上することが求められます。

新興国の電力消費量は今後上がる可能性大

ヨーロッパ諸国と日本の電力消費量が6000~8000kWhであるのに対し、
新興国の水準は500~2000kWh。
すなわち、今後の経済発展により、電力消費量は10倍程度まで増加すると見込まれます。
そのため、世界全体の見地から見た、エネルギーの最適化が今後必要となります。
改善できるものを素早く見極め、企業・政府・家庭が一体となって減らせるものを減らすという
努力が必要になっていきます。
 

原子力発電に関する懸念が高まる中、発電拡大に対するスピードが遅くなるのであれば、
消費を効率化することを考えなければなりません。
東日本大震災後に展開された「節電」を一時的なものと考えず、むしろチャンスととらえ、
「何を減らせるか?」「どうしたら効率をあげられるか?」という知恵が今求められています。

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※2015年の時点の最新データを含めてコチラにアップデートしましたので御覧ください。

東日本大震災をきっかけに、日本でもエネルギー・電力への関心が高まっています。
そこで、今回、日本のエネルギー・発電の供給量割合をあらためて、紹介したいと思います。

ちなみに、供給量割合とは、日本のエネルギー・電力が、
石油、石炭、原子力、水力、再生可能エネルギー(風力、地熱、太陽光など)で
どのぐらい賄われているかというものです。

一般的によく使われているものが、以下のデータで、
こちらは経済産業省エネルギー庁が発表している「エネルギー白書」で公表されています。

このデータから、一般電気事業者の発電供給量の供給源割合がわかります。
一般電気事業者とは、地域ごとの電力供給をしている、いわゆる「電力会社」です。
日本にはこの一般電気事業者が10社あります。
※北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力
九州電力、沖縄電力。

この中で、石油等、LPG、石炭の3つを合計したものが火力発電に相当します。
全体で61.7%という圧倒的なシェアを誇っています。

次に多いのが原子力発電。29.2%のシェアがあります。
そして、水力が8.0%。水力のシェアはそれほど大きくはありません。
また、昨今注目が集まっている再生可能エネルギーは1.1%と非常に限られています。

それでは、ここから、それぞれの項目について少しずつ解説していきます。

■ 水力(一般水力・揚水水力)

1960年代まで日本の発電を牽引した水力発電は、
1975年に日本で落差最大の黒部ダムが完成した頃から、それほど増えていはいません。
水力発電は、維持コストが低く、CO2排出のないクリーンエネルギーである一方、
ダム建設に莫大な費用がかかる上、水没による社会的コストも大きく、
大規模に発電量を増やす手法としては適してこなかったためです。

一方、1980年代から増えてきたのが、揚水式水力発電です。
こちらは、電力需要の少ない夜間に、電気を使って水を高地に引揚げ、
電力需要の多い昼間に、その水を使って水力発電を行うというものです。
この揚水式水力発電は、発電総量を増加させることにはあまり寄与しませんが、
電力の需給バランスを調整するための手法として活用されてきました。

また、最近注目が集まっているのが、「中小水力発電」です。
巨大なダムを建設するのではなく、既存の河川の流水を利用して行う、
中小規模の水力発電です。
再生可能エネルギー(自然エネルギー)として注目されていますが、
発電量が限られていることや、生態系への影響などから、日本ではほとんど実績がありません。

■ 石油等

日本の火力発電は、石油を燃料として活用してきました。
中東からの原油安定供給を手にした日本は、
発電所建設コストの低い火力発電所の建設ラッシュのためのエネルギー原料として、
原油を用いてきたからです。

しかし、原油は発電以外の燃料源(特にガソリン)として貴重な原料であり、
発電目的で使うことを控えるという国際気運の中、
1975年の第3回国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会において、「石炭利用拡大に関するIEA宣言」
の採択が行われ、石油火力発電所の新設禁止が盛りこまれました。
さらに、1973年と1979年のオイルショックにより、
「石油依存」を減らすということを日本政府も大きく掲げ、
以降、火力発電の原料が、石油から石炭、LPGなどに移っていきました。

昨今の発電議論の中で、依然として火力発電と石油を結びつける内容が多いですが、
火力発電において、実際に日本が注視すべきものは、石炭や天然ガスの世界の動きです。
特に、CO2排出量が比較的少ない天然ガスへの期待が、世界全体で大きくなっています。

また、この石油を使った火力発電に関する大きな懸念は、
原油価格の高騰です。
原油価格の高騰は、火力発電コストの増加だけでなく、
エネルギーの安定供給においても、大きな不安要因となります。


※出所:IEA “Key World Energy Statistics 2011

■ 石炭

明治時代から盛んとなった日本の炭鉱業は、
昭和時代には主要炭鉱はほぼ閉山し、
現在火力発電に使われている石炭はほぼ100%輸入石炭です。
石炭の輸入先は、オーストラリアとインドネシアで全体の82%を占めています。
2010年時点で日本は世界一の石炭輸入国でもあります。


※出所:帝国書院

エネルギー供給源としての石炭の不安材料は、石油と同様価格の高騰です。


※出所:IEA “Key World Energy Statistics 2011

この価格高騰をさらに脅かすのが、中国の動向です。
中国は世界で圧倒的な石炭の生産シェアを持っています。


※出所:IEA “Key World Energy Statistics 2011

その中国が、2010年に石炭の純輸入国に転じました。(出所
それは、中国が急増するの国内電力需要を賄う手法として、
石炭火力発電に頼ってきたためです。

IEAの”World Energy Statistics 2011″によると、
2009年の中国の総電力消費量は3545TWhでアメリカの3961TWhに続いて世界第2位。
同年の日本の消費量997TWhの3.5倍以上となっています。

中国は石炭依存度を下げるため、再生可能エネルギーや原子力発電を積極化させる
動きを見せていますが、
さらに増え続ける中国の電力需要は、石炭価格を押し上げる大きな要因ともなります。

■ 天然ガス

日本では、天然ガスは一般的に”LNG(液化天然ガス)”と呼ばれます。
それは、天然ガスが諸外国では、産地から消費地まで「パイプライン」で輸送される
のに対し、日本ではパイプラインを持っていないため、
気体である天然ガスを-162℃以下に冷却して液体にした”LNG”を輸入しているためです。

天然ガスの輸入先は、マレーシア、インドネシア、オーストラリアの3か国で、
全体の57.2%を占めています。


※出所:帝国書院

天然ガスは、一般的にパイプラインで運ぶ場合輸送コストが低く、
さらにエネルギー転換効率も高く、CO2排出量を相対的に抑えることができるため、
火力発電のエネルギー源として世界中での注目が集まっています。

日本の政府・企業も天然ガス権益を確保するため、
世界各国で天然ガス発掘プロジェクトを大きく展開しています。(コチラ

天然ガス価格も石炭や原油と同様、高騰してきています。
特に、パイプラインではなく、LNGに依存する日本は、他国よりも
天然ガスの輸入価格が高い傾向があり、
電力価格を他国よりも押し上げる要因の一つにもなっています。


※出所:IEA “Key World Energy Statistics 2011

■ 原子力

原子力発電は、CO2排出量が非常に少なく、さらにエネルギー自給率を高めることが
できる「夢の発電所」として、日本のエネルギー政策の柱となってきました。

2010年に改訂された日本政府の「エネルギー基本計画」の中でも、
CO2排出量の削減と電力価格の安定化を実現させるため、
原子力発電のシェアを大きく向上させることを掲げていました。

しかし、2011年3月の東日本大震災による原発事故を機に、
見直しの機運が大きく高まっています。

それでも、依然として原子力発電に対する期待は根強いものがあります。
その期待の大きなポイントは、発電コストの低さです。

しかしこの発電コストの低さを強調する議論に対し、
「原発事故が起こった場合の対策費用や社会的損失費用などが考慮されていない」
として、原子力の発電コストの計算方法に異議を唱える人々も多くいます。

さらに、原子力発電については、日本企業がリードする分野でもあり、
日本政府や経済界からも原発の普及を進めるべきだという強い声があります。


※出所:資源エネルギー庁

■ 再生可能エネルギー(自然エネルギー)

CO2排出量や環境サステナビリティに観点から2000年から耳目を集める
再生可能エネルギーですが、
日本国内における発電実績としては、微々たるシェアに留まっています。

2010年6月に改訂された日本政府の「エネルギー基本計画」では、
原子力と再生可能エネルギー(水力含む)の比率を、
2020年までに50%、2030年までに70%とする計画を打ち上げました。
さらに、その中で、再生可能エネルギーが占める割合を、
2020年までに全体の10%に達するという計画も含まれています。

しかし、この計画も、自然エネルギーを促進する材料とはなりません。
水力が全体の約8%を占める日本において、
再生可能エネルギー(水力含む)を10%にするということは、
水力を除いた現在のシェア1%をわずか2%にするということにしか
ならないためです。

再生可能エネルギーの推進が進まない大きな要因は、
上図からわかる発電コストの高さです。
発電コストの増加は、家庭用電力価格の増加を招くだけでなく、
産業用電力価格を押し上げ、産業の国際競争力を下げることにもつながります。

しかしながら、風力、太陽光、太陽熱、地熱など、それぞれの分野での、
技術革新が進み、発電コストが今後大きく下がることも予想されています。

Hydro:水力
Geothermal:地熱
Wind Onshore:陸上風力
Wind Offshore:水上風力
Biomass:バイオマス
Concentrating solar:太陽熱
Solar PV:太陽光

東日本大震災後、政府はすでに、「エネルギー基本計画」を見直すことを
表明しました。
この中で、再生可能エネルギーがどこまで原子力分を担えるのかが、
大きな議論のポイントなっています。

ここまで、現在の日本の発電供給量割合について、
「エネルギー白書」のデータを基に内容を見てきました。
ここから先は、よりデータ分析について興味がある方に向けて、
少し専門的な話をしてきたいと思います。

日本のエネルギー・発電力の供給量割合についてより専門的に分析する際、
冒頭で用いた「エネルギー白書」のデータを用いることいろいろな問題があります。

理由の一つ目は、上記のデータが「電力」に限られている点です。
世界的にエネルギー供給量について議論される場合、
対象は電力だけでなく、その他の熱源等も含んだ概念としての、
「一次エネルギー供給」が用いられています。
英語では、Total Primary Energy Supply(略称TPES) と呼ばれています。
そのため、特に国際比較などをする場合には、
一次エネルギー供給の数値を用いなくてはなりません。

理由の2つ目は、エネルギー白書のデータの出所が、一般的な情報リソースを
用いていない点です。
世界や日本のエネルギー・電力の供給量割合としてよく用いられるのは以下ですが、
エネルギー白書のデータは、下記のいずれとも一致せず、比較ができません。

<一次エネルギー供給>
・国際エネルギー機関(IEA) “Balances
・経済産業省資源エネルギー庁 “総合エネルギー統計/エネルギーバランス表

<発電>
・国際エネルギー機関(IEA) “Electricity/Heat
・米国エネルギー庁(EIA) “Electricity/Generation
・経済産業省資源エネルギー庁 “電力調査統計/発電実績(総括)

それぞれの供給量割合は以下となります。

さらに、EUは再生可能エネルギーの目標設定に際し、
「発電量」でも「一次エネルギー供給」でもない、「最終エネルギー消費」
という指標を用いています。
「最終エネルギー消費」とは、「一次エネルギー供給」から、
発電に要するエネルギーと配電ロスを差し引いた数値を指します。

また、国際データ比較をする際や、他のデータ分析を参照する際には、
データの定義を確認することも欠かせません。
特に、このエネルギー供給割合においては、まぎらわしい定義の違いがあります。
例えば、
・「エネルギー供給実績」or「エネルギー供給設備能力」
・「電力会社のみの数値」or「他の供給主体も含めた数値」
・再生可能エネルギーが水力を含むのか含まないのか
というものが主なものです。
ご注意ください。

先日、世界のメガソーラー(大規模太陽光発電)の世界の状況についてレポートしたのに続き、
今回は、世界の風力発電の状況をご紹介したいと思います。

世界の風力発電の大規模化は、太陽光発電を大きく凌駕する勢いで進んでいます。
例えば、現在の世界最大規模の太陽光発電所は、カナダのSarnia で92MW。
一方、現在の世界で最大規模の風力発電所は、アメリカのRoscoe で781.5MW。
8倍以上の開きがあります。
さらに、風力発電所の大規模化は今後も大きく進むと予想され、
中国は5000MWを超える超巨大風力発電所を2020年に甘肃省にオープンする
ことを発表しています。
※世界の風力発電所ランキングについては後述します。

世界の風力発電は、2006年あたりから、急速に造塊しています。
世界風力エネルギー協議会(Global Wind Energy Council: 通称GWEC)が
発表している、世界の風力発電トップ12か国を見てみましょう。


※出所:GWECレポート Global Wind Report 2010, 2009, 2008

ご覧いただくと、中国、アメリカ、ドイツ、スペイン、インドが
世界の風力発電を大きくリードしていることがわかります。

ドイツ、スペインは太陽光発電の分野でも世界をリードしており、
再生可能エネルギー全般にを政府が全面的に後押ししていますが、
その両国を超えるスピードで、中国、アメリカ、インドでは、
風力発電の建設が進んでいます。
中国は2010年ついに累積風力発電量で世界トップとなりました。

続いて、大規模風力発電所の状況を紹介します。
風力発電所はその立地により、オンショア風力発電(陸上風力発電)と
オンショア風力発電(洋上風力発電)に大きく分けられます。

大規模化が著しく進んでいるのは、建設コストが少ないオンショア風力発電です。

オンショア風力発電出力量の世界ランキングトップ35>

オフショア風力発電出力量の世界ランキングトップ35>

オンショア風力発電の分野では、アメリカ、特にテキサス州での建設が目立ちます。
理由としては、テキサス州政府が発令している送電網の電力会社(風力発電電気の買い手)
負担政策が挙げられます。
この政策により、
風力の強いテキサス州の荒地から都市部などの電力消費エリアに送電するコストが軽減され、
風力発電の発電事業者が積極的に大規模風力発電所を建設できるようになりました。

オフショア風力発電の分野では、イギリスとデンマークの存在が目立ちます。
両国ともに、風力発電量全体としては、それぞれランキング8位、11位ですが、
オフショア風力発電の分野では、世界を牽引しています。
特にデンマークは、国営企業Vattenfallと、国営色の濃いエネルギー企業DONG Energyが、
自国内だけの発電量増加だけでなく、積極的に近隣諸国に展開し、
発電プラントを積極的に建設しています。

一方、イギリスは、オフショア風力発電の一層の促進を計画しています。
2010年1月イギリス政府は、オフショア風力発電のライセンスを大規模に発行。
世界最大となる9,000MW規模の発電所をはじめ、
超巨大風力発電所が複数誕生する予定となっています。


※出所:BBC News

今回はデータを中心に紹介しましたが、各国の事情については、
今後紹介していきたいと思います。

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ヨーロッパ各国政府が太陽光発電に対する補助制度を縮小する中、
プライベートエクイティ大手KKRが、太陽光発電分野に大規模投資をする
という報道が、
7/18のFinancial Times紙(Web版)にありました。

KKRはニューヨークに本拠地を置く世界有数のプライベートエクイティー企業。
今回、ドイツの再保険会社Munich Reと共同で、
世界有数の太陽光発電企業のひとつT-Solar Global SA社が保有する
スペインとイタリアの太陽光発電プラント株式の49%を買収するという内容です。
買収される49%のうち、37%をMunich Reが、12%をKKRが保有します。

T-Solarは、イタリアとスペインに42の太陽光発電プラント(合計168MW)を
展開しています。

Broombergの報道によると、今回の買収の背景として、
3社すべてが太陽光発電事業を伸長させる狙いがあることを指摘しています。

T-Solarは、2014年までに太陽光発電量を、3倍の500MWにまで伸ばす計画があり、
今回の株式売却の目的はそのための資金調達をすることにあります。
また、KKRおよびMunich Reは、今後この事業への投資を拡大させる思惑がある
ようです。

特にKKRは、「再生可能エネルギー分野は最も可能性のあるインフラビジネスのひとつだ」
と言明しています。

太陽光発電事業の分野では、政府支援が減退する中、
企業による資金流入という新たな流れが始まってきているようです。

2011年4月12日で、カリフォルニア州で新たな法案が成立しました。

「2020年までに電力の33%を再生可能エネルギーで供給することを義務付ける」

カリフォルニア州では、2006年に、
2010年までの電力20%再生エネルギー化法案が可決しており、
成立しており、今回、それを20%から33%に大幅に上昇させたことになります。

再生可能エネルギーについて「33%」という高い目標は前例がなく、
野心的な目標と評されています。

この法案に署名をしたジェリー・ブラウン州知事は、背景についてこう語っています。

この法案はカリフォルニア州に重要な利益をもたらす。州内のグリーンテクノロ
ジーへの投資を刺激し、何万もの新たな雇用を創出し、州の大気の質を改善
し、エネルギー自給率を高め、温室効果ガスを削減する
※原文はコチラ

実は、同様の法案は、2008年にも議会を通過していました。
しかし、当時のシュワルツェネッガー州知事は、33%は非現実だとして署名を拒否。
法案を成立させるかわりに、拘束力の弱い「州知事令」として施行しました。

今回の法成立については、昨今のエネルギー事情が大きく影響していると思われます。
北アフリカ・中東アジアにかけての政情不安による原油価格の高騰。
日本での原発事故による原子力発電に対する批判的な意見の増加。
メキシコ湾原油流出事故による原油採掘見通しの後退。
いずれも、再生可能エネルギーの必要性に対する認識を高めることに寄与しました。

この「電力の33%」はどのぐらい野心的なのでしょうか。

下記のグラフは、2004年~2008年までの電力供給源の表です。


※出所:U.S. Energy Information Administration “California Renewable Electricity Profile

2008年の時点で、再生可能エネルギーは、全体の23.5%を占めているのがわかります。
しかし、カリフォルニア州の33%目標は、「再生可能エネルギー」の全体ではなく、
「再生可能エネルギー(水力除く)」の数値についてなのです。
つまり、2008年時点での11.9%を、2020年までに33%にすると言っているのです。
これはすごい躍進です。

このような大胆な目標設定ができるのは、カリフォルニア州ならではの事情もあります。
州内に世界有数のハイテク産業団地、シリコンバレーを抱えているからです。
シリコンバレーには、最先端のグリーンテクノロジーと、
それを支える膨大なマネーが集まっています。
州政府が掲げる目標により、投資家はグリーンテクノロジー開発に対する長期投資を
さらに加速することができるようになります。
そしてそれが、技術開発を促進し、さらに投資を呼び込むという好循環を生むのです。

また、カリフォルニア州は自然条件にも恵まれています。
州の西部には太平洋からの風が吹き、南東部は砂漠地帯で太陽が降り注ぐため、
風力発電や太陽光発電に適した広大な土地を有しているのです。

33%の目標達成のためのシナリオも作成されています。


※出所:カリフォルニア州のサイトコチラの資料

このように複数のシナリオを作成する手法は、「シナリオプランニング」と呼ばれ、
不確実な将来見通しの中で、柔軟に目標を達成する経営手法のひとつです。
 

しかし、この法案には批判も多く集まっているようです。
Financial Times紙の4/19WEB版では、様々な批判が紹介されています。

まず激しく抵抗しているのが、製造業です。
再生可能エネルギーに力を入れてきたカリフォルニア州では、
現在でも他の州に比べて電力価格が50%ほど高い水準なのですが、
カリフォルニア州共和党が、
今回の法律で電力価格がさらに19%上昇すると語っているためです。
※Huffpost Los Angeles, “California Renewable Energy: Brown
To Sign ‘Most Aggressive’ Mandate In The U.S.

国際競争が激化している中でのさらなる電力価格の高騰は、
人員削減や工場閉鎖につながる。
電力消費の大きい鉄鋼業、セメント業、鉱業は警鐘を鳴らしています。

次に反発しているのが、環境保護活動団体です。
今回の法律で拡大が見込まれる太陽光発電に対し、
「砂漠に建設される大規模太陽光発電プラントは動植物固有種に害を与えるため、
太陽光発電は屋根の屋上のみに限定すべき」
と反対しています。

僕はこの法律の野心的な目標設定を応援したいと思っています。
高い目標設定はイノベーションを加速します。
確かに反対派が唱えているように、課題もたくさん存在します。
しかし、いずれにしても電力供給を支えるためには、それらの課題も含めて、
問題をひとつひとつ解決し、前進していかなくてはなりません。

「問題があるから計画中止」というスタンスではなく、
「目標に向けて問題をどう一緒に解決していくか」という協働姿勢が
必要なのではないでしょうか。

3/19に、福島第一原子力発電所の状況が大きく安定化してきました。

1号機: 東北電力からの電源ケーブル敷設が完了。冷却施設の回復見込み。
2号機: 東北電力からの電源ケーブル敷設が完了。冷却施設の回復見込み。
3号機: 東京消防庁の消防車による注水作業で効果があり、施設冷却に成功。
4号機: 3号機と同様の処置を行う予定。
5号機: 仮設の海水ポンプの稼働に成功。使用済み核燃料プールの冷却機能が回復。
6号機: 仮設の海水ポンプの稼働に成功。使用済み核燃料プールの冷却機能が回復。

当初、同様に原子力緊急事態宣言が発令された、福島第二原子力発電所においても、
すでに、1号機~4号機までの全てにおいて、冷温停止状態となり危機を脱しています。

しかしながら、
放射線漏れによる近隣自治体への影響は深刻な状態となっているとともに、
東京電力管内全域でも深刻な電力不足に見舞われています。

東日本大震災(東北関東大震災)前と後の発電量(出力量)をまとめました。
東京電力の公開情報や報道資料をもとに独自作成。
※最大出力量はWikipedia参照。
※震災への影響は3/20時点の内容。
表をクリックすると拡大します。

大震災前に総計6000万kW近くあった発電量が、
大震災後は総計4000万kW弱まで落ち込んでいるのがわかります。

また、実際に供給できる電力は、”供給量 = 発電量 – 配電ロス” となり、
4000万kW全てが供給できるわけではありません。

この大きな需給格差を埋めるために、
東京電力は契約に基づき大口の法人顧客(工場等)への電力抑制を依頼。

そして、震災直後からの電気需要と供給量の予測は以下の通りでした。

3/12(土) 需要 3600万kW 供給 3700万kW
3/13(日) 需要 3700万kW 供給 3700万kW
3/14(月) 需要 4100万kW 供給 3100万kW (電車運行抑制・揚水式水力発電停止)
3/15(火) 需要 3500万kW 供給 3300万kW (計画停電開始)
3/16(水) 需要 3500万kW 供給 3300万kW
3/17(木) 需要 4000万kW 供給 3350万kW (電車本数増加)
3/18(金) 需要 3700万kW 供給 3500万kW
3/19(土) 需要 3100万kW 供給 3450万kW
3/20(日) 需要 3100万kW 供給 3400万kW
東京電力の公開情報をもとに作成。

このように休日は企業活動が休止するため需要が減りますが、
平日は節電したとしても供給量が足りません。
そのため、電車本数の削減や計画停電が実施されている状況です。

さらに、東京電力の発表では、通常、
冬場で5000万kW、
夏場で5500万~6000万kWトの電力供給力が必要だということです。
その結果、東京電力は、政府中枢機関の多い千代田区、港区、中央区の
3区を除く、都内20区においても夏には計画停電が必要となる可能性を
示唆しました。
※元記事はコチラコチラ

東京電力が現在、復帰や再稼働を目指している
東扇島、鹿島、横須賀を含めると発電量は4,863万kWに達し、
供給量は推定4,200万kWまでは回復できそうです。

そのため、今年の夏は大規模な節電が強いられることになりますし、
計画停電は今年の冬にまで続くという見通しもあります。
朝日新聞の記事

もちろん、節電や計画停電の効果は大きいです。



出所:東京電力のHP

上のグラフを見ていただくと、前年の相当日に比べて、
日中および夜間の電力消費量が大きく低下しているのがわかります(3/23時点)。

今回は現状のみの報告となり心苦しいですが、
対策については情報が取れ次第、あらためて説明していきたいと思います。

風力、太陽光などの再生可能エネルギーへの関心が高まっていますが、
果てして、再生可能エネルギーのみを活用して、
社会に必要なエネルギーを供給することは可能なのでしょうか?

国際エネルギー機関(IEA: International Energy Agency)が発表している
World Energy Outlook (2008)“では、悲観的な結果となっています。

※”World Energy Outlook”の最新版は2010年のものですが、2010年、2009年の
 ものは有料のため、無料で入手できる最新のものは2008年でした。


2030年までに、発展途上国の経済発展に伴い、
世界のエネルギー需要が急増するのに対し、
再生可能エネルギーによるエネルギー供給は、
2030年時点でもわずか2%にすぎません。

上記のものはガソリンなどの動力エネルギーも含んでいますので、
再生可能エネルギーが活用される電力に絞って見てみるとどうでしょうか。


電力エネルギーも2030年までに需要が大きく増加していきます。

やはり、ここでも再生可能エネルギーの割合は、
風力、地熱、太陽光・太陽熱、潮力を足しても、約6%にすぎません。

石油が枯渇するピーク・オイル説が叫ばれたり、
石油・石炭・天然ガスという化石燃料が与える環境への悪影響の観点からも、
再生可能エネルギーの必要性が唱えられていますが、
世界のエネルギーの権威は悲観的な見方をしています。
再生可能エネルギーの可能性はこんなにも小さいのでしょうか。

僕はそうは思っていません。
上記の国際エネルギー機関のデータの統計手法を考慮すると、
予測が悲観的となるのは当然なのです。

国際エネルギー機関のデータは、過去30年ほどのデータをもとに、
人口変動や交通量推移、GDPなど複数の変数をもとに、
計量経済学の手法で、供給源ごとのエネルギー需要を予測をしています。
ポイントは、過去のデータに依存しているということです。
ある程度の技術革新は変数に加えているようですが、
大規模な技術革新は予測データには反映されないのです。

今後、再生可能エネルギーの技術開発に大きく投資がされていく中、
過去の推移の延長線上に未来があると考えることは適切ではありません。

では、再生可能エネルギーにはどれほどの可能性が将来展望されるのでしょうか。

2011年1月27日のScienceDailyというインターネットメディアは、
スタンフォード大学のジャコブソン教授(市民・環境工学)と
カリフォルニア大学デービス校のデルッチ教授が、
学術論文の中でこのように発言したことを報じました。

「20年~40年後には今日の技術を用いれば、
すべてのエネルギーを再生可能エネルギーで供給できる」

彼らの計画によると、
90%の電力を風力、太陽光・太陽熱、水力でまかない、
残りの10%のうち、4%を地熱、同じく4%を水素燃料、残りの2%を潮力で
調達することが可能だということです。

また、飛行機や船舶、車に使われる流体燃料として、
電気または水素燃料で代替が可能で、
さらに、水素燃料をつくるのに必要な電力も、
再生可能エネルギーで作り出すことができるということです。

2030年までには新たなエネルギー需要をすべて再生可能エネルギーで供給し、
2050年には、全エネルギーを再生可能エネルギーに代替可能となるようです。

再生可能エネルギーについて懸念される課題については、
それぞれ以下のように回答しています。

「風力、太陽光は天候に左右され、安定的な電力供給源にはならない」
⇒ 昼に強い太陽光、夜に強い風力を組み合わせて補完させ、
  それでも不足する電力は、水素燃料で充当すればいい。
⇒ スマートグリッドで長距離電力網を構築すれば、どこかの地域で発電できた
  電力を他の地域に回し、全体的として安定供給は可能となる。
⇒ 消費量の多い時間と、少ない時間の差を活用し、少ない時には蓄積し、
  多い時には放出することも可能。

「発電設備に必要なプラチナやレアアースなど希少資源は足りるのか?」
⇒ 資源量は今でも十分にあり、さらにリサイクルをすれば不足はしない。
⇒ 不足した資源を他の資源でも代替することも可能で問題はない。

「風力や太陽光の発電プラントに必要な土地は十分あるのか?」
⇒ 100%の電力供給をまかなうのに必要な土地専有面積は
  わずか世界の土地の0.4%。設備間のスペースに必要な面積を
  いれても、それでも世界の土地の1.0%にすぎない。

彼らは、今後の展開に対し、
「技術は今でも十分にある。あとはやるかやらないかだ。」と締めくくっています。

個人的には、彼らが認識されていない問題がいくつもあるのだと思います。
しかしながら、IEAが2030年にわずか全体の2%しか供給できないと言っていたところに、
2050年には100%供給できるという意見が登場したことは、
新たな可能性を感じさせてくれます。

再生可能エネルギーの将来や可能性を、低く見積もる必要はないと考えています。

火力、水力、原子力。日本でおなじみのフレーズです。
世界では今、再生可能エネルギーの生産量を増やす動きが急ピッチで進んでいます。

世界でのエネルギー消費量を見てみると、
依然として化石燃料に頼っていることがわかります。

Renewables 2010 Global Status Report

円グラフ上では、再生可能エネルギーは19%を占めているように見えますが、
この中には、伝統的バイオマスと呼ばれる焚き木や薪、糞尿による発電や
水力発電なども含まれています。

風力や太陽光発電など狭義の再生可能エネルギーが占める割合は、
棒グラフの上から3つ目での合計たったの3%。

今後、インドや中国でのエネルギー需要が爆発的に高まっていく中、
再生可能エネルギーや原子力発電の需要は急速に高まっています。
実際、化石燃料の価格は昨今の経済不況にかかわらず、
1バレル$80という高水準を記録しています。

そこで昨今相次いでいるのが、太陽光や風力発電の大プラント建設です。
日本の感覚だと、風力発電や太陽光発電というと、
ときどき見かける数台の風車や、屋根の上のソーラーパネルを想像しがちですが、
世界で今推進されているものは、規模が全く異なります。

例えば、太陽光発電は、こんな規模です。

Largest Solar Plant in Europe Set to Open in Italy

これはヨーロッパ最大の太陽光発電プラントでイタリアに2010年に建設されました。

アメリカのファースト・ソーラー社は、今年に入った1/5に、
中国の原子力発電事業大手の中国広東核電集団(China Guangdong Nuclear
Power Corp、CGNPC)と共同で、モンゴルの砂漠に30メガワットの大型太陽光
発電プラントを建設する計画を発表しています。

2010年に入って太陽光発電事業が相次ぐ理由は大きく2つあります。
 1.莫大な政府補助金
 2.ソーラーパネルの価格の下落

まず、莫大な政府補助金については、
アメリカのオバマ政権のグリーン・ニューディール政策が有名です。
現在、アメリカでは太陽光発電を建設した事業者に、
連邦政府や州などから補助金が得られ、
その額はなんと初期投資の半分以上にも達することがあります。

中国などエネルギー需要が増加する新興国でも、資源高の高騰に備え、
積極的に再生可能エネルギーへの投資に力を入れています。
太陽光発電は、従来「不毛地帯」とし厄介者であった砂漠地帯が、
エネルギーを生む土地に変えることができ、
21世紀の新たな錬金術として注目が集まっています。

ソーラーパネルの価格下落は、アメリカのアリゾナ州テンピ市に本社を置く、
ファースト・ソーラー社の貢献が大きいです。

ファースト・ソーラー社は、従来のシリコン結晶を素材としたソーラーパネル
ではなく、薄型フィルムを用いる新しい技術開発に成功しました。
この薄型フィルム(Thin Flim)タイプのものは、発電効率は以前より低いの
ですが、製造コストが格段に安く、原子力や火力にも対抗できる安さで、
世界の注目を集めました。

2010年10月にアメリカとベトナムに合計500万メガワット分の需要に対応できる
ソーラーパネルの大型生産工場の建設を発表しています。
こうして、ソーラーパネルの需要が高まる中、規模の経済も働き、
さらにソーラーパネルの価格は下がり続けているのです。

風力発電のプラントも大規模です。

これは、アメリカのカリフォルニア州にある風力発電プラントです。
このような大規模なプラントがアメリカにはいくつもあります。
広大な土地が資源となり、新たなエネルギー工場となっています。

世界のエネルギー需要が伸びていく中、
新たなエネルギー生産の動きは加速しつつあります。