このブログでは、「企業利益に貢献するCSR活動」という概念について、
これまで何度も紹介してきました。

特に、従来CSRを、
「事業から得た利益を社会に還元するためのコスト」と定義することが多かったのに対し、
最近では、
「社会を利する事業を展開することで得られる利益そのもの」と再定義されてきています。

さらに、これまでCSR活動や持続可能ビジネス戦略といった分野では、
資金にゆとりのある先進国グローバル企業が取り上げられることが多かったのですが、
最近では、新興国企業でも上記の新たなCSRの概念が浸透しつつあります。

その一例として、The Economic Timesが、
インドを代表する企業のひとつReliance社がCSR活動を積極展開していく
という内容を報じました。

この記事からは、同社会長のムケシュ・アンバニ氏が、
下記の2つのことに力点を置いていることが読み取れます。

1. CSRとは、単なるチャリティーではなく、他者を富ませる活動のことだ
2. ビジネスは、株主への利益還元だけでなく、社会への利益還元に基づき、評価されるべきだ。

新たなCSR・サステイナビリティの概念は、
先進国だけでなく、新興国企業にも普及しつつあります。

6/17~20にかけて、各紙・メディアが一斉に、
「餃子の王将が電気を使わない自動ドアの導入を決めた」
という内容を報道しました。

産経新聞 「王将フードサービス、電気使わない自動ドア設置へ
日経新聞 「自動ドア、電気使わず開閉 餃子の王将が導入
読売新聞 「餃子の王将に足で動かす自動ドア…電気代も節約

報道によると、餃子の王将の今回の導入背景は、

関西電力が15%の節電要請を行うなど、近畿でも電力不足が深刻化していることから、節電の秘策とする考えだ。手始めに7月に開店する吹田春日店(大阪府吹田市)と金沢東店(金沢市)に設置し、順次拡大する。

ということのようです。

この報道で、僕が一番気になったのは、
「電気を使わない自動ドアとは一体なんなのか?」
「どこのメーカーが開発したのか?」という点です。

そこで、開発メーカーについて調べてみました。

今回報じられている、電気不要の自動ドアを開発したのは、
会津若松市にある株式会社有紀という建材メーカーです。

資本金は4000万円とメーカーとしては小規模で、
従業員はパートの方も含めて全部で8名。
現在も社長である橋本保さんが、2001年に創業しました。

株式会社有紀は、自動ドア専業メーカーではありません。
事業の柱は、地元の資源である「会津桐」「会津吉祥杉」を活用した
建材の設計・製造・販売。
「電気を使わない自動ドア」は有紀社にとっての新商品です。
商品名は「オートドア・ゼロ」と言います。
日本で特許を取得した後、今年の2月にはアメリカの特許も獲得。

また、餃子の王将は、「オートドア・ゼロ」の最初の導入企業ではありません。
すでに、会津若松市立北会津中学校(保健室)、
常磐自動車道 湯ノ岳PA、名神高速道路 大津SAに導入されています。
しかし、今回は、日本有数の飲食店への導入が決定したということで、
大々的に報道されたようです。

「オートドア・ゼロ」の仕組みは、ホームページでも多くは紹介されていませんが、
ドアの手間に「踏み台」を置き、その踏み台が体重で下に押されることで、
歯車が回り、ドアを開けることができるようです。

電気を使わないため、節電効果が期待できるだけでなく、
電磁場などを発生せず、音も静かというメリットや、
停電時にも稼働するというメリットがあります。

今回の導入の話には、いくつかの素敵な点があります。
・地方の小規模メーカーの技術が注目を集めている
・震災で大きなダメージを受けた福島県の企業の朗報となる
・エネルギー不足が今後懸念される中で、節電にとっての一助となる
・大企業が導入を決めたことで、将来の技術開発にとってのテストケースにできる

餃子の王将において、今後他店にも導入を拡大するかどうかについては、
いくつかの基準があると考えられます。

・子供や大柄な人などの個々の体重差にスムーズに対応できるか
・ゆっくりと入ってくる人、急いで入ってくる人などにスムーズに対応できるか
・出口と入口で一斉に踏み台を踏んだ時、混乱しないか
・街の振動などの他の影響によって誤作動を起こさないか
・頻繁な開閉に耐えられる耐久性はあるか
・冷暖房効率などを考えた場合に、スムーズにドアが閉まるか
・故障時のメンテナンスや修理は迅速に対応できるか

これらは、他の商用施設等に導入される際には重要な確認ポイントです。
有紀社にとっては、実導入の結果を踏まえ、商品の向上が見込めます。
また、ここでの実証事例を基に、他の企業でも導入の検討が進むと思われます。

また、将来の大規模受注に備え、有紀社の製造能力の拡大も注目されます。
現在の従業員8名体制では、おそらく大規模受注には対応できません。
有紀社が特許をもっているため、自社工場への大規模設備投資を行うか、
他社へのライセンス供与をするのか等々です。

餃子の王将の試みは、電力不足に対する事業リスクを軽減するという、
サステイナブルビジネス戦略ととらえることができます。
「オートドア・ゼロ」のように、企業の持続可能ビジネス戦略を推進する技術は、
大企業だけでなく、様々な企業が今後支えていくのだと思います。

6月15日、ISO (国際標準化機構)が、
エネルギーマネジメントシステムに関する新たな国際規格“ISO50001″
リリースしました。(※リリース記事はコチラ

ISOはこれまでにも数多くの国際規格を制定してきています。
代表的なものとしては、
  ISO 9000 ”品質マネジメントシステム”
  ISO 14000 “環境マネジメントシステム”
があります。

それぞれの国際規格で定められている内容は、
「企業等が製品やサービスを安定的に供給するための仕組みづくり」
についてです。
ISO9000では、いかにして品質水準を担保していくか、
ISO14000では、いかにして環境汚染を防止するか、
について、その手法が書かれています。

この国際規格は、法律ではありません。
企業が自発的に取り組んでい行くための「指針」として提供されているものです。
そのため、この国際規格に則るか否かは、企業等の組織に委ねられています。
ですが、取引先企業が、国際規格に則るよう要求することもあるため、
企業間の取引の中で、取得が実質的に「義務付けられて」いることもあります。

今回リリースされたISO50001では、
企業や政府がエネルギー効率を高めたり、エネルギーコストを下げたりする手法、
「エネルギーマネジメントシステム」が規定されています。

このISO50001創設の背景には、
エネルギーの持続可能性に関する関心の高まりがあるようです。
ISOは、国際連合工業開発機関 (UNIDO) からの要請を受け、
2008年にISO50001検討のための委員会を発足させていました。

ISOは、このISO50001を通じて、
世界のエネルギー消費量を60%削減できるとしています。

具体的な内容としては、PDCAサイクルの回し方が中心となっています。


※”Win the energy challenge with ISO 50001“より抜粋。

ISO50001は、このマネジメントサイクルの中でも特に、
経営層の役割、導入方法の重要性を強調しています。

一般的にISOについては、
「導入コンサルタント費用が高い」「維持が面倒で忙殺される」等の
批判も多いのも事実です。

ISO50001が幅広く普及するかどうかはまだ未知数ですが、
多くの企業が「エネルギーマネジメント」について取り組みをを開始する
きっかけになっていくといいなと思います。

6月10日、
「東日本大震災復興基本法案」が衆議院本会議で可決されたニュースが
相次いで報道されました。

そして、6月20日にも、同法案は参議院本会議でも可決され、
法律として成立するとの見通しが立てられています。

多くの報道機関は、この衆院通過について、
「復興庁、復興債、復興特区が盛り込まれた」「民主党が自民党・公明党案を丸のみした」
ということに力点を置いていましたが、
どのメディアの記事を読んでも、この法律で「何がどう変わるのか」がわかりづらかったため、
法案にまでさかのぼって内容を見てみました。

法案は、衆議院のホームページから閲覧することができます。
※このブログの最後に法案を全文を掲載しました。

この法案は、4章24条構成となっています。

◆ 第1章(第1条から第5条):総則

法案の趣旨を説明したものであり、具体的に「何が変わるか」に関する取極はありません。

◆ 第2章(第6条から第10条):基本的施策

ここで述べられている具体的な内容は、「財源」についてです。
長い文章ですが、要は、「特例の復興債」を発行して財源を確保するという内容です。
その代わり、その他の国家予算は切り詰めるように努力しようと補足しています。

この復興債は、その他の公債とは区別してモニタリングされるようです。
復興債の額や手法については、「別に法律で定める」と言っているので、
具体的な内容はまだ決まっていません。

第10条では、地方自治体が、
従来の法律に沿わない取組を実施することを可能とするための枠組みとして、
「復興特別区域制度」を検討するということが書かれていますが、
こちらも具体的な内容については、
「総合的に検討を加え、速やかに必要な法制上の措置を講ずる」としており、
具体的な検討はこれからのようです。

◆ 第3章(第11条から第23条):東日本大震災復興対策本部

この章では、新しく内閣に(組織的にはおそらく内閣官房に)新設される
「東日本大震災復興対策本部」の中身について書かれています。

3月11日の大震災発生以降、政府は沸き起こる様々な課題に対して、
次々と「対策チーム」を設置して、対応してきました。
原子力災害対策本部、被災者生活支援特別対策本部、原子力被災者生活支援チーム、
震災ボランティア連携室など、新設された政府の組織は20以上もあるようです。

内閣の中に新たな「チーム」を発動することはそれほど難しくはありません。
誰が「チーム長」で、誰が「副チーム長」なのかを決めればよいだけだからです。
しかし、そのチームを「機能させる」ことは容易ではありません。
具体的なチーム編成、予算、権限、活動範囲、活動内容、活動スケジュール、
意志決定の方法、チーム内や他の省庁との連絡ルートの確立、扱う法案の範囲
などなど、不明確なものがたくさんあるためです。

そのため、新設される「東日本大震災復興対策本部」の役割は、
全体の企画立案や意思決定をスムーズにしていくことにあります。

□ 東日本大震災復興対策本部
 〈意志決定機関〉
   本部長: 首相
   副本部長: 内閣官房長官と東日本大震災復興対策担当大臣(新設)の2名
   本部員: 全ての国務大臣と、首相が任命する副大臣・政務官・官僚トップ
 〈事務遂行機関〉
   幹事: 首相が任命する官僚
   現地対策本部: 本部長(首相が任命する副大臣・政務官など)
              本部員(首相が任命する官僚)
   事務局: 事務局長、事務局員、現地対策本部事務局
 〈ご意見番機関〉
   東日本大震災復興構想会議: 地方自治体の首長または有識者など25名以内
   原発事故対策用の合議制機関: 地方自治体の首長または有識者など
   ※双方とも、関係企業、団体、個人などに資料提出やヒアリングを要求できる。

◆ 第4章(第24条):復興庁の設置に関する基本方針

第3章で定められた「東日本大震災復興対策本部」は、
第4章で定められる「復興庁」が創設されると廃止されることになります。
そして、東日本大震災復興構想会議など、対策本部の下部組織は、
この復興庁に引き継がれることとされています。

これが、成立しようとしている「東日本大震災復興基本法」の内容です。

したがって、冒頭の「この法律によって何が変わるか?」の回答としては、

  新たな行政組織が誕生する。
  復興債や復興特別区域制度というものも誕生しそうだが、
  これらはまだ具体的には決まっていない。
  また、新設される行政組織が実施する新たな政策や取り組みについても、
  まだ決まってない。

ということとなります。
この法律で、復興支援の具体案が何か決まるわけではありません。

しかしながら、この法律は、行政組織を動かしていくためには必要な法律です。
行政組織は、基本的に「法律に基づいて」活動することが許されている組織であり、
人員数、予算額、部署の新設・統廃合等を決めるためには、
すべて国会で法律を新設または修正する必要があるからです。

東日本大震災という通常の行政手続だけでは対応できない大きな問題に対し、
行政組織のリソース(人的資源、予算、資産)を活用するには、
その活用方法に関するルール(基本法)がどうしても必要となります。
この基本法があることで、官僚機構が持てる力を発揮できるようになり、
具体的な施策の検討をスムーズに開始できるのです。

もちろん、この基本法が成立するのが震災発生の3か月後という、
スピードの遅さは極めて大きな問題です。
官僚機構リソースの活用方法を決めるためだけに3か月を費やしては、
国民の支持を得ることはできません。

もちろん、この3か月、国は何も議論をしてこなかったわけではありません。
例えば、東日本大震災復興基本法で規定されている
東日本大震災復興構想会議」は、既に4月15日から活動を始めています。
構想会議の下には、長期ビジョンを検討する「検討部会」も設置され、
様々な有識者による意見交換が開始されています。
他にも、それぞれの省庁において短期的な復興への取組が始まっています。

しかしながら、復興に向けて大がかりな仕掛けについては、
いまだ目指す方向性は固まっておらず、
構想会議で検討されている内容が実際の政策にどう反映されるかについても、
はっきりしないのが実状です。

官僚機構は、巨大な権限、資源、予算を持ち、強大な影響力を持つ一方、
「大組織」として運営効率やスピード、柔軟性を書く性格を本質的に帯びています。

国民は「日本の政治はスピードが遅い」と嘆くだけでなく、
この官僚機構の負の性格を理解した上で、
政府に対する付き合い方や期待の度合いを考えていく必要があると考えています。

===東日本大震災復興基本法案の本文===

目次

 第一章 総則(第一条―第五条)
 第二章 基本的施策(第六条―第十条)
 第三章 東日本大震災復興対策本部(第十一条―第二十三条)
 第四章 復興庁の設置に関する基本方針(第二十四条)
 附則

   第一章 総則

 (目的)
第一条 この法律は、東日本大震災が、その被害が甚大であり、かつ、その被災地域が広範にわたる等極めて大規模なものであるとともに、地震及び津波並びにこれらに伴う原子力発電施設の事故による複合的なものであるという点において我が国にとって未曽有の国難であることに鑑み、東日本大震災からの復興についての基本理念を定め、並びに現在及び将来の国民が安心して豊かな生活を営むことができる経済社会の実現に向けて、東日本大震災からの復興のための資金の確保、復興特別区域制度の整備その他の基本となる事項を定めるとともに、東日本大震災復興対策本部の設置及び復興庁の設置に関する基本方針を定めること等により、東日本大震災からの復興の円滑かつ迅速な推進と活力ある日本の再生を図ることを目的とする。

 (基本理念)
第二条 東日本大震災からの復興は、次に掲げる事項を基本理念として行うものとする。
 一 未曽有の災害により、多数の人命が失われるとともに、多数の被災者がその生活基盤を奪われ、被災地域内外での避難生活を余儀なくされる等甚大な被害が生じており、かつ、被災地域における経済活動の停滞が連鎖的に全国各地における企業活動や国民生活に支障を及ぼしている等その影響が広く全国に及んでいることを踏まえ、国民一般の理解と協力の下に、被害を受けた施設を原形に復旧すること等の単なる災害復旧にとどまらない活力ある日本の再生を視野に入れた抜本的な対策及び一人一人の人間が災害を乗り越えて豊かな人生を送ることができるようにすることを旨として行われる復興のための施策の推進により、新たな地域社会の構築がなされるとともに、二十一世紀半ばにおける日本のあるべき姿を目指して行われるべきこと。この場合において、行政の内外の知見が集約され、その活用がされるべきこと。
 二 国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の連携協力並びに全国各地の地方公共団体の相互の連携協力が確保されるとともに、被災地域の住民の意向が尊重され、あわせて女性、子ども、障害者等を含めた多様な国民の意見が反映されるべきこと。この場合において、被災により本来果たすべき機能を十全に発揮することができない地方公共団体があることへの配慮がされるべきこと。
 三 被災者を含む国民一人一人が相互に連帯し、かつ、協力することを基本とし、国民、事業者その他民間における多様な主体が、自発的に協働するとともに、適切に役割を分担すべきこと。
 四 少子高齢化、人口の減少及び国境を越えた社会経済活動の進展への対応等の我が国が直面する課題や、食料問題、電力その他のエネルギーの利用の制約、環境への負荷及び地球温暖化問題等の人類共通の課題の解決に資するための先導的な施策への取組が行われるべきこと。
 五 次に掲げる施策が推進されるべきこと。
  イ 地震その他の天災地変による災害の防止の効果が高く、何人も将来にわたって安心して暮らすことのできる安全な地域づくりを進めるための施策
  ロ 被災地域における雇用機会の創出と持続可能で活力ある社会経済の再生を図るための施策
  ハ 地域の特色ある文化を振興し、地域社会の絆(きずな)の維持及び強化を図り、並びに共生社会の実現に資するための施策
 六 原子力発電施設の事故による災害を受けた地域の復興については、当該災害の復旧の状況等を勘案しつつ、前各号に掲げる事項が行われるべきこと。

 (国の責務)
第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、二十一世紀半ばにおける日本のあるべき姿を示すとともに、東日本大震災からの復興のための施策に関する基本的な方針(以下「東日本大震災復興基本方針」という。)を定め、これに基づき、東日本大震災からの復興に必要な別に法律で定める措置その他の措置を講ずる責務を有する。
 (地方公共団体の責務)
第四条 地方公共団体は、第二条の基本理念にのっとり、かつ、東日本大震災復興基本方針を踏まえ、計画的かつ総合的に、東日本大震災からの復興に必要な措置を講ずる責務を有する。

 (国民の努力)
第五条 国民は、第二条の基本理念にのっとり、相互扶助と連帯の精神に基づいて、被災者への支援その他の助け合いに努めるものとする。

   第二章 基本的施策

 (復興に関する施策の迅速な実施)
第六条 国は、東日本大震災からの復興に関する施策を迅速に実施するため、第三条の規定により講ずる措置について、その円滑かつ弾力的な執行に努めなければならない。

 (資金の確保のための措置)
第七条 国は、次に掲げる措置その他の措置を講ずることにより、東日本大震災からの復興のための資金の確保に努めるものとする。
 一 復興及びこれに関連する施策以外の施策に係る予算を徹底的に見直し、当該施策に係る歳出の削減を図ること。
 二 財政投融資に係る資金及び民間の資金の積極的な活用を図ること。

 (復興債の発行等)
第八条 国は、東日本大震災からの復興に必要な資金を確保するため、別に法律で定めるところにより、公債(次項において「復興債」という。)を発行するものとする。
2 国は、復興債については、その他の公債と区分して管理するとともに、別に法律で定める措置その他の措置を講ずることにより、あらかじめ、その償還の道筋を明らかにするものとする。

 (復興に係る国の資金の流れの透明化)
第九条 国は、被災者を含めた国民一人一人が東日本大震災からの復興の担い手であることを踏まえて、その復興に係る国の資金の流れについては、国の財政と地方公共団体の財政との関係を含めてその透明化を図るものとする。

 (復興特別区域制度の整備)
第十条 政府は、被災地域の地方公共団体の申出により、区域を限って、規制の特例措置その他の特別措置を適用する制度(以下「復興特別区域制度」という。)を活用し、地域における創意工夫を生かして行われる東日本大震災からの復興に向けた取組の推進を図るものとし、このために必要な復興特別区域制度について総合的に検討を加え、速やかに必要な法制上の措置を講ずるものとする。

   第三章 東日本大震災復興対策本部

 (設置)
第十一条 内閣に、東日本大震災復興対策本部(以下「本部」という。)を置く。

 (所掌事務)
第十二条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
 一 東日本大震災復興基本方針に関する企画及び立案並びに総合調整に関する事務
 二 関係地方公共団体が行う復興事業への国の支援その他関係行政機関が講ずる東日本大震災からの復興のための施策の実施の推進及びこれに関する総合調整に関する事務
 三 前二号に掲げるもののほか、法令の規定により本部に属させられた事務

 (東日本大震災復興対策本部長)
第十三条 本部の長は、東日本大震災復興対策本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。
2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

 (東日本大震災復興対策副本部長)
第十四条 本部に、東日本大震災復興対策副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官及び東日本大震災復興対策担当大臣(内閣総理大臣の命を受けて、東日本大震災からの復興のための施策の推進に関し内閣総理大臣を助けることをその職務とする国務大臣をいう。)をもって充てる。
2 副本部長は、本部長の職務を助ける。

 (東日本大震災復興対策本部員)
第十五条 本部に、東日本大震災復興対策本部員(以下「本部員」という。)を置く。
2 本部員は、次に掲げる者をもって充てる。
 一 本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣
 二 内閣官房副長官、関係府省の副大臣若しくは大臣政務官又は国務大臣以外の関係行政機関の長のうちから、内閣総理大臣が任命する者

 (幹事)
第十六条 本部に、幹事を置く。
2 幹事は、関係行政機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。
3 幹事は、本部の所掌事務について、本部長、副本部長及び本部員を助ける。

 (現地対策本部)
第十七条 本部に、第十二条(第一号を除く。)に規定する事務の一部を分掌させるため、地方機関として、所要の地に現地対策本部を置く。
2 現地対策本部の名称、位置及び管轄区域は、政令で定める。
3 現地対策本部に現地対策本部長を置き、関係府省の副大臣、大臣政務官その他の職を占める者のうちから内閣総理大臣が任命する者をもって充てる。
4 現地対策本部長は、本部長の命を受け、現地対策本部の事務を掌理する。
5 現地対策本部に現地対策本部員を置き、国の関係地方行政機関の長その他の職員のうちから内閣総理大臣が任命する者をもって充てる。

 (東日本大震災復興構想会議の設置等)
第十八条 本部に、東日本大震災復興構想会議を置く。
2 東日本大震災復興構想会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
 一 本部長の諮問に応じて、東日本大震災からの復興に関する重要事項を調査審議し、及びこれに関し必要と認める事項を本部長に建議すること。
 二 東日本大震災からの復興のための施策の実施状況を調査審議し、必要があると認める場合に本部長に意見を述べること。
3 東日本大震災復興構想会議は、議長及び委員二十五人以内をもって組織する。
4 議長及び委員は、関係地方公共団体の長及び優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。

 (原子力発電施設の事故による災害を受けた地域の復興に関する合議制の機関)
第十九条 前条第一項に定めるもののほか、原子力発電施設の事故による災害を受けた地域の復興に関する重要事項について、当該災害の復旧の状況等を踏まえ、特別に調査審議を行わせるため必要があると認められるときは、政令で定めるところにより、本部に、関係地方公共団体の長及び原子力関連技術、当該災害を受けた地域の経済事情等に関し優れた識見を有する者で構成される合議制の機関を置くことができる。この場合において、当該機関による調査審議は、東日本大震災復興構想会議による調査審議の結果を踏まえて行われなければならない。

 (資料の提出その他の協力の要請)
第二十条 東日本大震災復興構想会議及び前条に規定する合議制の機関(以下「東日本大震災復興構想会議等」という。)は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関又は関係のある公私の団体に対し、資料の提出、意見の表明、説明その他の必要な協力を求めることができる。
2 東日本大震災復興構想会議等は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者であって調査審議の対象となる事項に関し識見を有する者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

 (事務局)
第二十一条 本部に、その事務を処理させるため、事務局を置く。
2 事務局に、事務局長その他の職員を置く。
3 事務局長は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
4 事務局長は、本部長の命を受け、局務を掌理する。
5 事務局に、現地対策本部に対応して、事務局の所掌事務のうち当該現地対策本部に係るものを処理させるため、現地対策本部事務局を置く。

 (主任の大臣)
第二十二条 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

 (政令への委任)
第二十三条 この章に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。

   第四章 復興庁の設置に関する基本方針

第二十四条 別に法律で定めるところにより、内閣に、復興庁(第三項に規定する事務を行う行政組織をいう。以下同じ。)を設置するものとする。
2 復興庁は、期間を限って、置かれるものとする。
3 復興庁は、主体的かつ一体的に行うべき東日本大震災からの復興に関する国の施策に関し、次に掲げる事務をつかさどるものとし、当該事務の効率的かつ円滑な遂行が確保されるよう編成するものとする。
 一 東日本大震災からの復興に関する施策の企画及び立案並びに総合調整に関する事務
 二 東日本大震災からの復興に関する施策の実施に係る事務
 三 その他東日本大震災からの復興に関し必要な事務
4 本部は、復興庁の設置の際に廃止するものとし、本部並びに現地対策本部、東日本大震災復興構想会議等及びその他の本部に置かれる組織の機能は、復興庁及びこれに置かれる組織に引き継がれるものとする。
5 復興庁は、できるだけ早期に設置することとし、政府は、前各項に定めるところにより、復興庁を設置するために必要な措置について検討を行い、可能な限り早い時期に法制上の措置を講ずるものとする。

   附 則
 この法律は、公布の日から施行する。

     理 由
 東日本大震災が、その被害が甚大であり、かつ、その被災地域が広範にわたる等極めて大規模なものであるとともに、地震及び津波並びにこれらに伴う原子力発電施設の事故による複合的なものであるという点において我が国にとって未曽有の国難であることに鑑み、東日本大震災からの復興の円滑かつ迅速な推進と活力ある日本の再生を図るため、東日本大震災からの復興についての基本理念を定め、並びに現在及び将来の国民が安心して豊かな生活を営むことができる経済社会の実現に向けて、東日本大震災からの復興のための資金の確保、復興特別区域制度の整備その他の基本となる事項を定めるとともに、東日本大震災復興対策本部の設置及び復興庁の設置に関する基本方針を定めること等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

2011年3月9日(ちょっと前ですが)に、
アクセンチャア社(米国本社)が、持続可能性に対する報告書を発表しました。

Driving Value from Integrated Sustainability

このレポートは、アクセンチュアの独自に行った調査を基に作られています。
Global Fortune 1000にリスト入りしているうちの275社について、
経営者へのサーベイも含めて定性面、定性面の調査を行い、
ハイパフォーマンス分析をまとめたものです。

結果として報告されているものは、

・42%の経営者が、持続可能性への取り組みはコスト削減につながると回答。
・41%の経営者が、持続可能性への取り組みはブランド価値の向上につながると回答。
・約50%の経営者が、持続可能性への取り組みは株主への信頼向上につながると回答。

というもので、
少なからずリーディングカンパニーに多数が、持続可能性への取り組みを
肯定的にとらえていることがわかります。

アクセンチュアは、このレポートのまとめとして、
持続可能ビジネス戦略を採用している企業の狙いは、

・新製品や新サービスの投入による売上増
・生産効率向上によるコスト削減
・事業リスクや法規制リスクに対するマネジメント強化
・ブランド、評判、協働ネットワークなど無形資産の強化

にあると、報告しています。

もちろん、この情報にはバイアスがかかっている可能性もあります。

1. 発信者のバイアス

このレポートは、アクセンチュア社の持続可能性サービスグループが
とりまとめています。
この「持続可能性グループ」としては、世の中の持続可能性に対する関心が
高まれば高まるほど、グループのビジネスを拡大することができます。
僕自身も事業プランニングの経験があるため、理解できるのですが、
ビジネス拡大を考える際には、データ収集や分析の過程で、
都合よく解釈しようとするバイアスが働いてしまうものです。

2. サーベイ回答者のバイアス

持続可能性に関するサーベイに回答した経営者もバイアスを抱えています。
サステイナビリティやCSRに関するサーベイを実施する場合には、
経営者が「本心とは別に社会的に求められていることに回答してしまう」
というバイアスが働いています。
このバイアスは英語で”Social desirability bias”と呼ばれています。

これらのバイアスがどのぐらい影響を与えているのかはわかりません。
しかしながら、グローバル企業の中で、
持続可能性に対する経営者の関心が高まっていることは確かなようです。

2011年5月31日に、
社会企業を推進している世界的な機関「シュワブ財団」が、
Social Investment Manual“という冊子を発行しました。

ソーシャル・インベストメント・マニュアル。
日本にあえて訳すと、「社会投資マニュアル」となります。

これは、昨今、「社会的投資家」と呼ばれる人々や組織の影響力が大きく
なってきていることに注目し、
どのように社会的投資家との関係を構築し、資金を獲得していくのかを、
実務家の観点からまとめられたものです。

「社会的」という言葉は、ときどき「慈善的」という言葉と混同されがちです。

ときどき、「社会的投資家」というもの対して、
「従来の資本主義的な投資家とは異なり、利益の見返りを多くは求めない」
「儲けが少なくても、社会的な意義のあることに投資をしてくれる」
というイメージが強く語られることもよく目にします。

しかし、実際には、社会的投資家も、投資先から多くの見返りを求めています。
もちろん、従来の投資家とは「見返り」の中身は異なります。
経済的なリターンだけでなく、社会的投資家は活動の中身も重視します。

つまり、経済的なリターンとは別に、
どのような社会的なインパクトをもたらしているのか、
そのインパクトをもたらすために資本を効率的に活用できるか、
スケールアップのプランは用意されているか、
独自のイノーべーションを創造しているか、
このような活動の「質」についての尺度にも大きく関心を払っています。

そのため、社会的投資家から資金を獲得するためには、
財務情報分析に加え、活動の中身に関する入念な計画が必要となります。
※その分、従来の投資家から資金を得るより負担は大きいともいえます。

そこで、冒頭で紹介した「ソーシャル・インベストメント・マニュアル」では、
社会的投資家との関係構築、資金獲得についての一般的な動向、
特に影響力のある社会的投資家の多い西欧の傾向について、
ビジネスパーソンにわかりやすく解説されています。

冊子の章立てとしては、以下のようになっています。

1. イントロダクション
2. 社会的投資の概要
3. 資金獲得プロセス
  - 利用可能な社会投資機関
  - 適切な社会投資機関の選び方
  - 社会的投資家へのアプローチ方法
  - デューデリジェンスの流れ
  - 財務情報についての交渉方法
  - 資金獲得後の社会的投資家との関係構築方法
  - 出口戦略
4. 補筆

社会的投資家とは何であり、
何のために投資をしているのか。

社会的投資家と関わっていく上で、
これをおさえておくことは、とても重要です。

企業がサステイナビリティ(持続可能性)に対して投資をすることについて、
また、より狭義には “CSR”を促進することについて、
かねてから、大きな疑念が提起されています。

それは、

企業は、利益が多いときにはサステイナビリティに投資するが、
いざ企業の収益が悪化すると、サステイナビリティ関連投資は終焉する。

というものです。

すなわち、企業は好調の時は、懐に余裕があるため、社会貢献に資金を投じるが、
いざ不調となると、事業に関係ない社会貢献活動をやめてしまう。
という考え方です。

このようなサステイナビリティ投資批判に対して、
サンダーバード国際経営大学院のGregory Unruh教授は、
ブログで以下のように反論しています。

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(I) began asking every company executive I knew whether the economic downturn was scuttling their sustainability strategy. Contrary to the logic, I had trouble finding companies dumping sustainability.

私は知り合いの企業経営陣に、不景気でサステイナビリティ戦略は放棄されるかどうかを尋ねた。しかし、(CSR批判者の)ロジックとは逆に、私は、(この不景気時に)サステイナビリティ戦略が失速していることを確認することはできなかった。

What has become clear is that there has been a bifurcation in the sustainable business space. In the downturn some companies cut back on CSR and sustainability efforts. They have become the laggards. Another group doubled down on sustainability. The best explanation for why they did so in a recession is that they have found out how to make sustainability pay.

明らかなことは、企業の持続可能性戦略は現在、分岐点に来ているということだ。景気後退局面で、CSRやサステイナビリティに対する努力を削減する企業もあったが、その企業は活力を失ってしまった。一方で、サステイナビリティ投資を倍増した企業もある。不景気時にその投資を増やした理由は、彼らはサステイナビリティ投資は割に合うということに気づいたからだ。

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Unruh教授によると、いくつかの企業は持続可能性はブランドのためのコストではなく、
利益を伸ばす行為として認識し、投資を活発化しつつあるということです。

それを後押しするレポートが、サステイナビリティに関する調査&コンサルティング機関の
Verdantixから発表されました。

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Global sustainability spending will soar 50 percent to 100 percent between 2011 and 2013, predicted research firm Verdantix.

売上US$1,000万以上の企業は、2011年から2013年の間に、サステイナビリティに関する投資を50%から100%増加させる。

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特に、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダに本社を置く企業は、
サステイナビリティ、気候変動、二酸化炭素管理、エネルギー効率向上に関する投資を、
現在のUS$約350万から、2013年にはUS$600万に増やしていくとうことです。

サステイナビリティの分野は、今後、大きな市場を形成していきそうです。

Forbesの5/20のブログに、
アショカ財団のAlexa Clay氏のインタビューが報じられています。

内容は、彼女がアショカ財団の中で研究テーマにしている
世界に点在する米軍基地が社会・環境に与える影響について語ったもの。

こちらが実際のインタビュー映像です。

米軍基地の存在意義は、米軍とその同盟国の安全保障にありますが、
米軍基地が与える影響は、安全保障にとどまらず、
生態系、公害、犯罪などの人災といった悪影響や、
雇用増などによる地域経済の発展、国際交流の振興などにも及びます。

彼女はこれを総合的に判断していく枠組みづくりに取り組んでいます。
それは、従来の報道や社会的関心が、
環境、安全保障、雇用などがそれぞれバラバラに議論されており、
冷静にメリットとデメリットを分析し、
それを全体として改善していくという考え方の必要性を感じているためです。

サステイナビリティは、環境的側面だけでなく、経済的な側面も含めて、
考慮する必要があります。

「武力による安定」というテーマそのものについては、別途深い議論が必要ですが、
基地が実存している事実に目を向け、それをいかに社会や環境と調和させていくか
という点に着目しているClay氏のテーマは、非常に素晴らしいと思います。

「震災後の日本がどのように変化を遂げていくのか。」

持続可能性の観点からも、世界からも多くの関心が寄せられています。

その中で、企業の持続可能性向上を推進する世界的なNPOのひとつBSR
CEOであるAron Cramer氏が、同社のブログにて、
Japan: Tragedy to Turning Point? “と題する記事を発表しています。

非常に示唆に富む内容でしたので、今回はその記事を日本語訳してみました。

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私が今回、ミーティングに参加するために日本を訪れて一週間。
東京は今までにないぐらい人の気配がなく閑散としていた。
おそらく、日本経済は、地震、津波、福島原発事故の三重の波を前に
激しくダメージを受けてしまった。

しかしながら、BSRの会員企業との一週間の会合の中で、
私はより重層的な日本の状況を感じ取った。
日本は明らかに、この悲劇を将来のための転換点として昇華させ、
日本を、安全で、豊かで、持続可能な将来へと導く、
力強い道のりを歩み始めている。

会合の中で、
たくさんの日本の会員企業の代表たちは、自省の念を表明していた。

ある経営者は、日本がこの数十年間謳歌してきた
エネルギー依存の消費型経済モデルから転換していけるのかどうかという
問題提起をしていた。
例えば、「ここでもどこでも」という日本の消費文化のシンボルであり、
大量のエネルギーを消費する自動販売機なしで日本人がやっていけるのかどうか。
彼はこの点について問題を投げかけていた。

別の経営者は、日本企業は、政府と経団連が求めた25%の自発的節電を
「容易に達成することができる」と語った。
そして、彼は続けて、もしこの節電が可能であるならば、
なぜもっと以前からこれに取り組んでこなかったのか、と振り返っていた。
(もちろん、私自身は、エネルギーが非効率で暴飲暴食しているアメリカ国民の
一人として、他国の節電についてあまりとやかく語る筋ではない)

日本は現在、30%のエネルギーを原子力発電で調達している。
この状況を一夜にして転換することはできないし、
もし原子力発電所を削減するとしても、諸外国と同様に、
短期的には二酸化炭素排出量を削減することがより難しくなる。
しかし、多くの日本の人々は、1973年のオイルショック時に日本が
エネルギー効率を国是として推進していったように、
この2011年のできごとを機に、日本が再生可能エネルギーを
さらに促進していってほしいと願っている。

日本の経営者たちは、日本経済は臨機応変に対応できるという自信を見せるとともに、
今回の地震や津波の結果、これまで長い間活動が目立たなかった日本のNPOが、
今後さらに重要になっていくという見通しも示していた。
多くの企業は、震災の救援、復旧、復興においてNPOと共働している。
このような協働はCAREや赤十字などの世界的組織の日本支部が
中心的な役割を果たしているが、NPOとの共働に急速に関心が高まったことで、
今後、日本のNPOが日本社会で果たす役割はますます大きくなっていくだろう。

また、このような企業とNPOの共働が促進された背景には、
政府への信頼が大きく失墜してしまったということがある。
多くの企業経営者は、
今回の災害に対して政府のリーダーシップが欠如していることに大いに失望していた。
自衛隊より迅速に災害に対して救援活動を展開した米軍を称賛している人もいた。
(もちろん米軍は自衛隊より規模も資金も豊富なのだが、この米軍への称賛は、
政府の対応能力とコミットメントの欠如を意味している)

日本は、現在、正念場だ。
かつて、アメリカでは、多くのコメンテーターが、
アメリカは9.11を機に何もかも大きく変わり、
新たな価値観が提起されたり、
社会の共通目的が刷新されるだろうと語っていた。
しかし、残念ながら、これらは実際には実現しなかった。
だが、おそらく日本では、アメリカが成し遂げることができなかったような
前進への転換点を、3.11はもたらしていくだろう。

日本のこの正念場をバネに、将来の世代は再生可能エネルギーと
エネルギー効率の向上にますます拍車をかけていくだろう。
もしそれが実現すれば、日本は世界に対して、かつてのように再び、
プレッシャー下での優雅な対応力、明確な解決策、イノベーション力を
教えていく立場になっていく。

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今月、Ernst&Young社が、
Shareholders press boards on social and environmental risks
というレポートを発表しました。

そこで、報告されているのは、2010年の主要企業の株主決議の中で、
持続可能性に関する案件への支持票が急速に増えてきたということです。

同レポートよると、企業経営者は、30%以上の支持を集める株主決議案件については、
真剣に取り組むでいく傾向があると報告しています。

2005年には、30%以上の支持を集めた持続可能性関連案件は2.6%と、
株主の多くの共感を呼ばなかったの対し、
2010年にはこの割合は、26.8%にまで増加、
1/4以上の案件が30%以上の支持を集めるにまで至りました。

また、2011年には、株主決議全体に占める持続可能性関連案件が、
半数を超えるとまでレポートされています。

このように、持続可能性に関する関心が株主の間で高まってきた背景には、
何があるのでしょうか。

株主が急速に「社会貢献」に目覚めてきているのでしょうか。

レポートを作成したErnst&Youngの担当者は、その背景には、
「財務リスクやレピュテーションリスクに関する懸念の高まりがある」と報告。(コチラ
すなわち、通常の事業運営をしていく中で、
持続可能性に関する取り組みを重視していくことが事業の安定性を高めると
株主はとらえはじめているようです。

Ernst&Youngは、今後の経営方針の中で、以下の取り組みを重視するよう
提案しています。

1. 取締役会: 社会・環境問題に起因する機会と脅威を真剣に議論する
2. 経営委員会: 社会・環境問題を専門に検討する委員会を設立する
3. 委員会構成: 取締役と社外取締役(環境専門家)を委員会メンバーとする
4. 具体的制度: 各社会・環境問題の優先順位を定める具体的サイクルを設ける
5. 説明責任: 社会・環境問題についての責任者を明確に定める
6. 報告: 定期的な報告制度を具体的に定める
7. 認証: 報告に対して社内外の認証を得る

持続可能性についての取り組みは、従来は熱狂的なCEOを中心に始まりましたが、
その流れが株主にも波及しつつあるように思います。