インドの経済情報発信メディア”SiliconIndia”で、
Five Most Innovative Social Entrepreneurs“と題した記事が
発表されていました。

選定基準等は不明ですが、いずれもインド国内や世界で、
様々な賞を受賞してきた方々ばかりのようです。

1. Bindeshwar Pathak

インドの社会学者で、インドのパトナ大学より博士号取得。
Sulabh International創業者。
ゴミ漁りをして生活している生活困難者を支援するための団体を設立し、
50,000名以上をボランティアとして導引。
その後、トイレに併設した発酵施設よりバイオガスを生成する仕組みを開発し、
衛生管理とエネルギー生成に同時に貢献。

2. Arvind Kumar Kejriwal

インド政府の透明性確保のために奔走している社会活動家。
最終的にはインド連邦議会にて、
彼の主張した情報公開制度(Right to Information Act)が法整備された。

3. Anita Ahuja

Conserve創業者。デリー大学より政治科学修士号取得。
使用済プラスチックをリサイクルをし、バッグを生産するモデルを確立。
300人を雇用し、売上高約$150,000。
生産されたバッグは、インド国内だけでなく世界各国へ輸出販売されている。

4. Madhav Chavan

インドの社会活動家。米国オハイオ大学より化学博士号取得。
Pratham創業者。
経済的貧困層の子供たちに対し、教育を提供(年間約20万人)。

5. Harish Hande

アメリカのマサチューセッツ・ローウェル大学よりエネルギー工学博士号取得。
SELCO India創業者。
農村部の家屋で太陽光発電を行う事業を行い、目下12万軒に設置。

前回に続き、ウォルマートの活動を紹介したいと思います。

今回のテーマは、サステイナビリティの「測定」(Measure)。

ウォルマートでは、サステイナビリティ分野での
テーマ設定、目標設定、効果測定(モニタリング)を効果的に行うため、
数多くの指標の効果測定を行っています。

とりわけ強化しているのが、「食料」「農作物」分野の測定です。
ウォルマートが提供する食料品を作るのに、
どれだけの環境、社会的な負荷をかけているのか、
どれだけ効率的(経済的な効率性だけではない)に
食料品を生産できているのかを測定しているのです。

ウォルマートは、この測定をするにあたり、
カリフォルニア州を中心に導入が進んでいる”Stewardship Index for Specialty Crops
を採用しています。

Stewardship Index for Specialty Cropsとは、
社会や環境の持続可能性強化を目指すNPOや企業の集合プロジェクトである
Stewardship Index for Specialty Cropsが生み出した
食料品に特化した持続可能性測定モデルです。
※参加団体の一覧はコチラ

この測定モデルが測定しようとしている項目は、以下です。
※出所はコチラ

1. 人的要素
 - 人的資源(労働者の健康・安全、労働条件等)
 - コミュニティ(地域雇用の実施等)

2. 環境要素
 - 大気の質
 - 生物多様性・生態系
 - エネルギー消費
 - 温室効果ガス排出量
 - 栄養素
 - パッケージング
 - 殺虫剤使用
 - 土壌
 - 廃棄物
 - 水質
 - 水消費量

2. 経済要素
 - 環境に配慮した生産・流通された製品の購買
 - 公平な価格設定

このプロジェクトでは、各測定項目の具体的な測定指標について
検討を進めています。

このウォルマートが進めている測定の取組は、決して実現が容易ではありません。
一般的に企業が進めている「サステイナビリティ」測定は、
電気消費量、エネルギー消費量、水消費量、温室効果ガス排出量など、
自社で測定が完結できるものがほとんどです。
しかしながら、ウォルマートでは、その測定を、自社だけでなく、
生産者・加工者・流通者などサプライチェーン全体に広げようとしています。
ウォルマートが販売する食料品にかかわるすべてのフットプリントを、
測定しようとしているのです。

このように食料品のサプライチェーン全体を測定していく試みは、
今後重要性を増していきます。
なぜなら、世界の食料問題への解決に寄与していくからです。
例えば、世界食糧機関(FAO)は、世界で生産された食料品の1/3は、
「無駄」「ゴミ」として廃棄されていると発表しています。
※出所はコチラ

サプライチェーン全体の「無駄」を削減していくことは、
食料品の増産ではない、もうひとつの食糧問題解決の道となりえます。

Stweardship Indexが進めているサプライチェーン全体の及ぶ測定の枠組みは、
他の業界にも展開されようとしています。
例えば、Sustainability Consortiumという同様のNPO・企業・大学連合は、

「消費者科学」「測定科学」「電化製品」「食料・飲料品」「紙製品」
「ホームケア」「ヘルスケア」「IT製品」「パッケージ」「小売」「おもちゃ」

のそれぞれの分野でワーキンググループを形成し、
測定手法の検討を進めています。

このコンソーシアムを組成している大学・企業・NPOは、

〇 大学(主催者)
アリゾナ州立大学のサステイナビリティ研究所(Arizona State University)
アーカンソー州立大学の応用サステイナビリティセンター(University of Arkansas)

〇 企業
アルコア
BASF
ベストバイ
カーギル
クロロックス
コカ・コーラ
デル
ディズニー
ダウ
ケロッグ
ロレアル
マクドナルド
ペプシコ
P&G
パナソニック
サムソン
SAP
ユニリーバ
ウォルマート
東芝 など

〇 NPO
BSR
世界自然保護基金(WWF)
チリ基金
アメリカ環境保護庁
イギリス環境食糧省

Sustainability Consortiumに参加している日本企業は、
現在、パナソニックと東芝の2社のみです。

今後の企業経営において大きな影響を与えていくと思われるサステイナビリティ。
この大きな世界の動きに、日本企業も積極的に参加していく必要があります。

「持続可能性計画(サステイナビリティプラン)」。

日本ではまだあまり浸透していない概念ですが、
これは、近年、欧米の企業を中心に進められている
社会や環境に配慮した経営計画や新規事業開発のことを指します。

とりわけ注目を集めているのが、世界の小売最大手ウォルマート
トップダウンによるイニシアチブにより、サステイナビリティプランを
積極的に展開しています。

今回、Forbe紙に、
「ウォルマートの10大持続可能性プロジェクトが世界のリーダーシップを
明確に示す」
と題した記事が発表されていました。(原文はコチラ

1. キャリア・トレーニング
トレーニングセンターを通じた職業訓練。インドでは5000人が訓練を受けている。
訓練を施す体制を整えることで、全ての社会層の人たちに対して、成長機会を
与えていく。

2. 2000万トンの温室効果ガスを削減
2015年までにサプライヤーと協働で2000万トンの温室効果ガスを削減。

3. 輸送効率の向上
2005年に全米の輸送効率を65%向上、日本での輸送効率を33.5%向上。

4. 全プレイヤー参加によるグローバルバリューネットワークの構築。
自社だけでなく、顧客、サプライヤー、地域社会と共同で持続可能性
プロジェクトを推進。

5. 地域農産品調達、零細企業活用、農家支援
2015年までに1万件の中小農家から10億ドルの農産品を調達。
100万人の農家を支援し、農家収入を10%~15%向上させる。

6. 店内エネルギー消費量の削減
中国の新規店舗にてエネルギー消費量を40%削減するモデルを開発。

7. オペレーション効率を高めるためテクノロジーを活用
LED電球や薄型太陽光発電型フォークリフトなど最新のテクノロジーを導入。

8. 全米の飢餓を削減
2015年までに20億ドル相当の現金等を全米の飢餓削減のために拠出。
10億ポンドの食糧を提供。食料バンクの推進のために物流専門社員を提供。

9. 高度成長マーケットでのエネルギー効率向上
エネルギー効率向上に寄与する設備投資をサプライヤーに対して実施。

10. 果物・野菜価格の削減
安価な果物・野菜を顧客に提供するため合計10億ドルの価格削減を展開。
 

ウォルマートで展開している持続可能性プロジェクトの内容は、
いわゆる「節電」「植林」などのエコ対策にとどまらず、
幅広く社会や環境に寄与する事業運営を検討・推進しています。

私たちは、
日本企業もこのようプロジェクトを推進していける支援をしていきます。

震災直後から、震災対応の取組として、
「短期的な復旧だけでなく、中長期的な復興プランが必要だ」
という声が政府をはじめ、様々な機関から発信されました。

この流れで、中長期的な復興プランを検討するために、
政府内に設置された会議体が「東日本大震災復興会議」。
6月24日に公布・施行された東日本大震災復興対策基本法(以下、復興基本法)の中にも
設置根拠・権限等が定められ、今では法的機関となっています。

内閣官房は、この東日本大震災復興構想会議の役割を以下と定めています。
※出所はコチラ

未曾有の被害をもたらした東日本大震災からの復興に当たっては、被災者、被
災地の住民のみならず、今を生きる国民全体が相互扶助と連帯の下でそれぞ
れの役割を担っていくことが必要不可欠であるとともに、復旧の段階から、
単なる復旧ではなく、未来に向けた創造的復興を目指していくことが重要で
ある。このため、被災地の住民に未来への明るい希望と勇気を与えるととも
に、国民全体が共有でき、豊かで活力ある日本の再生につながる復興構想を
早期に取りまとめることが求められている。
このため、有識者からなる東日本大震災復興構想会議(以下「会議」という
。)を開催し、復興に向けた指針策定のための復興構想について幅広く議論
を行うこととし、会議の議論の結果を、復興に関する指針等に反映させるも
のとする。

そして、ここで議論された内容は、
最終的に東日本復興構想会議本部長である内閣総理大臣に建議され、
その後継続的に必要に応じて意見を述べていくことが、
復興基本法の中で定められています。

多くの人が日本の将来ビジョンに関心を寄せる中、
この東日本大震災復興構想会議の議論の動向が注目されていますが、
実際には、同会議は基本法制定の翌日6月25日に
実質的にその検討を終了しています。
それは、4月14日に活動を始めた同会議は、
6月25日にすでに最終的な建議を菅直人内閣総理大臣に提出しているためです。
※具体的な活動スケジュールはコチラから確認できます。

日本の将来ビジョンの指針をまとめた、
東日本大震災復興構想会議の建議の内容は、
コチラから閲覧することができます。

内容は全84ページ。含まれているテーマは、

〇地理的・工学的な将来の防災対策計画およびまちづくり
〇コミュニティ再建のための復興・合意形成プロセス
〇地域の社会機能再建のための教育・雇用・医療体制整備
〇地域の経済活動再建のための産業復興方針
〇地域の未来を見据えたエネルギー・交通整備
〇原子力災害からの回復のための中期的方針
〇財源

です。

この中で、特に評価できる点は、
将来の災害発生に備えた「立地計画」や「インフラ整備計画」が
比較的わかりやすく具体的に書かれていることです。
このような青写真があることで、自治体が新たな区画計画を考える際に、
方向性を与えてくれます。

一方で、評価できない点として挙げられるのは、
「経済方針」「財源」の部分です。

例えば、未来の持続可能な地域活動のために必要な経済システムの確立
について、「資金調達支援」「連携促進」「低コスト化」「高付加価値化」
など抽象的な言葉が目立ち、具体性が欠けています。
国・地方自治体の双方で財源が枯渇する中、
自立した経済システムを確立させる必要がある状況の中で、
具体的に何をどう変えるべきかというところには
残念ながら、触れられていません。

これについて、
産業界を代表して同会議に参加していた中鉢良治ソニー代表執行役副会長
も、最終会合の締めくくり発言の中で、以下のように問題表明をしています。

※出所はコチラ

私は産業界に身を置く者でございますけれども、率直に申し上げまして、
なかなか産業界の現実を理解していただけなかったのではないかと感じ
ております。特にグローバル競争にさらされている企業にとりましては、
大震災以前から国内のものづくりにつきまして、日々悩みながら経営を
しておりました。立地補助金等のインセンティブの有効性について、ま
た再生可能エネルギーへの過度な期待に対する戒めめいた意見をさせて
いただいたのは、産業界の現状を少しでも理解してもらいたいがためで
ございました。

また、実行のために不可欠な財源。
建議の中では「将来の世代に負担を先送りしないように増税しよう」と
謳っていますが、具体的な増税計画やそのプロセスについては、
何も指針を提示してくれていません。

最終の会議の場でも、議員から
「建議の内容は二次補正予算・三次補正予算に反映されていくだろう」
との発言がありましたが、
今のところ補正予算の中に、
今回の建議で示された内容が盛り込まれていく気配はありません。

そうした中、政府は8月15日に、
政策推進の全体像」という政府運営方針を閣議決定しました。
この中でも、財源の問題、経済成長戦略の問題は大きく扱われています。

復興の中長期計画を定めるために設置された東日本大震災復興構想会議。
しかしながら、確実に政府の活動として実施していくための、
経済・財政的な肉付けまではできず、建議の内容は宙に浮いたままとなっています。

日本に必要とされる「国家のかたち」を確実に実現していくためには、
再度、経済・財政問題にフォーカスした東日本大震災復興構想会議の検討部会を設置し、
焦点を絞った検討をしてみると良いのではないかと考えます。

※僕の別ブログである「アメリカ・サンダーバードMBA留学ブログ」から転載しました。

今回は、最近、日本でも注目が集まりつつある「社会起業家」と
MBAの関係について、トレンドをお伝えしていきたいと思います。

以前は、「資本主義社会の士官学校」と呼ばれたビジネススクールも
最近はプログラムの種類を増やす動きをとりつつあります。

そして、その中でも一番力を入れているといっても過言ではないのが、
「社会起業家(Social Entrepreneurship)」プログラムの拡充です。

主要な欧米のビジネススクールでは、
プログラムの中に、社会起業家関連の授業を開講したり、
実際に社会起業家のもとでの実務を行う特別プラグラムを開設したり、
社会起業家に関連するカリキュラムを次々と用意をしていっています。

この動きの背景には、学生側と企業側のそれぞれのニーズの変化が、
影響していると考えられます。

まず、学生側のニーズについて考えていきましょう。

以前は、「ビジネススクールを出たら、コンサルティング企業が投資銀行へ」
と言われた時代も大きく変化をしつつあります。

最近では欧米の主要なビジネススクールの卒業生の中には、
NPOや社会的企業と言われる「社会的役割に重視をおいた企業」へ就職したり、
このような企業や組織を卒業後起業する学生が増えてきました。

また、こちらのUS Newsの記事でも紹介さているように、
卒業後の就職先を選ぶ際の軸として、
「社会的貢献性の強い」という要素を挙げる学生も増えてきています。

さらに、多くの学生は、
「環境や社会を意識している企業は高収益である」と考えるように、
なってきているということも併せて報じられています。

このような学生の関心の変化に対応するため、
各ビジネススクールは、
環境や社会などサステイナビリティに関連する履修科目や
開発支援、社会変革などに関するプログラムを拡充しているようです。

さらに、企業側のニーズも変化してきました。

以前、ビジネススクールに期待を寄せてきたのはいわゆる「大手企業」
だったのですが、
最近では、NPOや社会的セクターからの期待もたくさん集まるように
なってきました。

それは、従来は政府やコミュニティーからの財政的支援によって
支えられていたNPOや社会的セクターが、
昨今の政府の財政難を前に、財政的な自立を迫られ、
これまでMBAが提供してきた、マネジメントスキル、財務分析スキル、
組織運営スキル、ITスキルなどを必要とするようになってきたためです。

このような社会起業家教育を求める方々に向けて、
US Newsが全米のビジネススクールの社会起業家教育ランキングと
そのプログラムの内容を発表しています。

1. Yale University (School of Management)

2. University of California-Berkeley (Haas School)

3. Stanford University (Graduate School of Business)

4. Northwestern University (Kellogg School of Management)

5. Harvard Business School

6. University of Michigan (Ross School of Business)

7. Duke University (Fuqua School of Business)

8. University of Pennsylvania (Wharton School)

9. Columbia University (School of Business)

10. New York University (Stern School of Business)

11. Case Western Reserve University (Weatherhead School of Business)

また、アメリカ以外のビジネススクールでは、
University of Oxford (Saïd Business School)の
Skoll Centre for Social Entrepreneurship
が有名です。

このように大きなトレンドになりつつある「社会起業家プログラム」ですが、
個人的には、まだまだ2つの大きな課題があると感じています。

(1) 理論な確立が未整備

多くの日本人の多くは、大学に「理論教育」を求めているように感じています。
しかしながら、社会起業家(Social Entrepreneurship)の分野は、
まだ理論的な裏付けがほとんどなされておらず、
ソーシャルビジネスのマネジメントは、
通常の企業マネジメントとほぼ同様に扱われています。
※同様に扱われていることそのものに大きな問題はないと思います。

ビジネススクールが新たに開設したプログラムの多くは、
「ケーススタディのケースとして、社会的企業を扱う」
「オフキャンパスプログラムとして、社会的企業への訪問を行う」
「社会的企業へのインターンシップ斡旋を行う」
というもので、理論教育ではなく、「自分で体験して学ぶ」ものとなっています。

そのため、何か「理論的に特殊なことを学びたい」と考えている方にとっては、
これらのプログラムは多少物足りないかもしれません。
しかしながら、「そもそも実務家スキルは体験して学ぶものだ」という側面から
考えると、上記のプログラムは実践を体験する良い機会になると思います。

(2) コストパフォーマンス

もう一つの課題は、MBAの高い学費と将来の報酬をいかにペイさせるかという点です。
従来は、MBA取得に多額の資金を投資したとしても、
コンサルティング企業や投資銀行、大手メーカー等への就職から得られる報酬増を
考えると、MBA投資は十分にペイすると言われてきました。

ですが、今回紹介したNPOやソーシャルビジネスの分野は、
一般的にはさほど給与水準の高い「業界」ではありません。

誤解を恐れずに言うと、
資金的にゆとりのある家庭で生まれ育ったり、
なんらか組織的な財政援助を受けられる人でない限り、
社会起業家教育のためにMBAを取得することには大きな覚悟がいります。

ビジネススクール側には、
「顧客(学生)への付加価値をいくらと見積もるのか?」
「教育機会提供のための収益源は授業料だけでよいのか?」
という新たな課題がつきつけられているように感じます。

「資本主義の士官学校」の姿は、徐々に変わりつつあります。

カナダのバンクーバーにあるPakit社が、
これまで開発が困難だった「生分解可能」なパッケージ素材を、
PepsiCo(ペプシコーラのメーカー)と共同で開発しました。
(ニュースはコチラ

Pakit100

この新素材がどれほど画期的なものなのかについて、
今回のブログで解説していきたいと思います。

まず、パッケージが与える地球環境の影響は、ここ数年大きく取り上げられています。
ときには「過剰包装」とも言われる問題は、
現在の消費社会において、プラスチックなどの包装素材「パッケージ」が、
大量生産・大量消費され、省エネに向けての大きなテーマとなっていますし、
また、大量にゴミとして廃棄され、多くの国では深刻な衛生問題ともなっています。

さらに、プラスチックの素材は原油であり、原油枯渇化の面でも、
プラスチックの消費抑制、他の素材への代替化は地球規模の問題となっています。

このプラスチック問題に対しては、主に先進国において、
リサイクルシステムが確立され、無駄の少ない資源利用が追求されてきました。

例えば日本では、2000年代から、ゴミの分別回収や家電リサイクルなどが始まり、
さらに産業界では、プラスチックのゴミを焼却しエネルギーとして活用することが
法制度化され、プラスチックの有効利用を目指してきました。


資料:社団法人プラスチック処理促進協会

例えば、日本で生産されているプラスチック製品約1,400万tのうち、
最終的に21%は再利用され、55%は熱エネルギーとして利用され、
残りの24%が埋め立てられたり、ゴミとして焼却されたりしています。

このリサイクル比率は世界の中でも優等生です。

課題もまだたくさんあります。
廃棄の12%を占める埋め立ては、埋立て地の土地確保問題として顕在化していますし、
リサイクルにかかる膨大な費用も企業の頭を悩ませる要因となっています。
また、このサイクルフローに現れないプラスチックの投棄(山にゴミを捨てるなど)
は、自然破壊の原因ともなっています。

プラスチックゴミの問題は、世界中で深刻になっています。

それは、投棄されたプラスチックは、自然分解されずに、いつまでたっても
ゴミとして残り、さらに有害物質を発生させる危険性があるからです。
この「土に帰らない」というプラスチックの特性が、
プラスチックが根本的に抱える課題です。

そして、特に発展途上国では、ゴミ回収フローが未整備なため、
生活ゴミが慢性的に道路や川や山に投棄され、
深刻な環境・衛生問題を呼び起こしています。

今回、Pakit社が開発した「生分解可能」なパッケージ素材(Patit100)とは、
このプラスチックが抱える「土に帰らない」という課題を、
根本的に解決するものとなっています。

このPakit100は、セルロースという植物素材を活用しているため、
例え投棄されたとしても、短期間で土に帰るのです
そのため、世界のゴミ問題にとって大きな突破口となります。

また、この新素材はほかにも利点があります。

〇ゴミを素材として使える

この新素材は植物素材を原料に使っているため、
「原油消費量が減る一方で、グリーン資源の消費量が増える」という
懸念があります。

しかし、Pakit社は、素材の再利用を活用したり、
農業で生成された「緑のゴミ(枝や葉、皮など)」や枯れ木、
新聞などを原料として活用することを可能としました。
そのため、グリーン資源の消費量が増えるということはありません。
むしろ、緑のゴミを資源として再利用することを可能としています。

〇熱の変化に強い

従来のプラスチックに加え、セルロースの新素材は、
高熱や冷却に強いという特徴をもっています。
そのため、加工食品や医療器具など、幅広く対応できる力をもっています。

〇熱の変化に強い

従来のプラスチックに加え、セルロースの新素材は、
高熱や冷却に強いという特徴をもっています。
そのため、加工食品や医療器具など、幅広く対応できる力をもっています。

〇輸送費が安い

プラスチックの原料は原油のため、プラスチックを生産するためには、
産油国から原料をはるばる輸送してくる必要がありました。

しかし、このPakit100は、身近な「緑のゴミ」や新聞などを
原料とするため、原料調達のための輸送費やエネルギー消費が少なくて
すみます。

さらに、このPakit100は、実用面でも優れています。

〇プラスチックと同様のプリント力をもっている

これまでにもセルロースを用いた素材の開発は進んでいましたが、
実用化のために超えなければならない壁として、
「プラスチックのようにロゴやデザインなどを自由に印刷できない」
「プラスチックのように様々なな形をつくることができない」
という問題がありました。

しかし、Pakit100は、プラスチックと同様に、
様々なプリントを施したり、様々なかたちに加工したりすることが可能です。

この特徴を持つことで、素材面だけではなく、
実用的にもプラスチックを代替することができる力を持っているのです。

この実用的なエコ商品を開発するということは、今後の技術開発に重要となります。
それは、どれほど環境に優れた商品だとしても、
実際のユーザーがそれを使う気にさせることができなければ、
社会を変えることはできないからです。

その点で、Pakit社にとって、PepsiCoとの共同開発は優れた意志決定だといえます。
世界の有数食品メーカーのニーズを十分に把握することで、
実用的な商品を開発することができたからです。
さらに、具体的なユーザーを先に確保することで、
R&Dのための大胆な投資も可能になります。

エコ商品開発のために、開発者とユーザーが協力する枠組みは、
今後ますます増えてくるのでないでしょうか。

6月24日に公布・施行された東日本大震災復興基本法に基づき、東日本大震災復興対策本部が設置されました。

さらに、同日、東日本大震災復興対策本部令(政令182号、全文後述)が公布され、
具体的な組織運営の詳細が定められました。

震災復興を担う、政府の体制は以下の通りとなっています。(敬称略)

東日本大震災復興対策本部

本部長:  菅直人(内閣総理大臣)
副本部長: 枝野幸男(内閣官房長官)
      松本龍→平野達男(復興対策担当大臣)
本部員:  片山善博(総務大臣・内閣府特命担当大臣)
      江田五月(法務大臣・環境大臣)
      松本剛明(外務大臣)
      野田佳彦(財務大臣)
      髙木義明(文部科学大臣)
      細川律夫(厚生労働大臣)
      鹿野道彦(農林水産大臣)
      海江田万里(経済産業大臣)
      大畠章宏(国土交通大臣)
      北澤俊美(防衛大臣)
      中野寛成(国家公安委員会委員長)
      自見庄三郎(内閣府特命担当大臣)
      細野豪志(内閣府特命担当大臣)
      与謝野馨(内閣府特命担当大臣)
      玄葉光一郎(内閣府特命担当大臣)
      仙谷由人(内閣官房副長官)
      福山哲郎(内閣官房副長官)
      瀧野欣彌(内閣官房副長官)
      津川祥吾(岩手現地対策本部長・国土交通大臣政務官)
      末松義規(宮城現地対策本部長・内閣府副大臣)
      吉田泉(福島現地対策本部長・財務大臣政務官)
      山口壯(内閣府副大臣・対策本部本部長補佐)
      阿久津幸彦(内閣府大臣政務官・対策本部本部長補佐)
      松下忠洋(経済産業副大臣)
      浜田和幸(総務大臣政務官)
幹事:   山本庸幸(内閣法制次長)
      浜野潤(内閣府事務次官)
      安藤隆春(警察庁長官)
      三国谷勝範(金融庁長官)
      福嶋浩彦(消費者庁長官)
      岡本保(総務事務次官)
      大野恒太郎(法務事務次官)
      佐々江賢一郎(外務事務次官)
      勝栄二郎(財務事務次官)
      清水潔(文部科学事務次官)
      阿曽沼慎司(厚生労働事務次官)
      町田勝弘(農林水産事務次官)
      松永和夫(経済産業事務次官)
      竹歳誠(国土交通事務次官)
      南川秀樹(環境事務次官)
      中江公人(防衛事務次官)
事務局長: 峰久幸義(内閣官房内閣審議官・元国土交通事務次官)
事務局次長:岡本全勝(内閣官房内閣審議官・前内閣府大臣官房審議官)
      上田健(内閣官房内閣審議官・前国土交通省大臣官房審議官)
      佐川宣寿(内閣官房内閣審議官・前財務省大臣官房審議官)
事務局員: 参事官(25人以内)を含め62人

岩手現地対策本部

本部長:  津川祥吾(国土交通大臣政務官)
本部員:  関係地方行政機関の長
事務局長: 井上明(内閣官房内閣審議官・前水産庁資源管理部長)
事務局員: 常駐4人、非常勤20人

宮城現地対策本部

本部長:  末松義規(内閣府副大臣)
本部員:  関係地方行政機関の長
事務局長: 沢田和宏(内閣官房内閣審議官・前国土交通省東北地方整備局副局長)
事務局員: 常駐4人、非常勤20人

福島現地対策本部

本部長:  吉田泉(財務大臣政務官)
本部員:  関係地方行政機関の長
事務局長: 諸橋省明(内閣官房内閣審議官・前総務省自治財政局公営企業課長)
事務局員: 常駐4人、非常勤20人

東日本大震災復興構想会議

議長:   五百籏頭真(防衛大学校長、神戸大学名誉教授)
議長代理: 安藤忠雄(建築家、東京大学名誉教授)
      御厨貴(東京大学教授)
特別顧問: 梅原猛(哲学者)
委員:   赤坂憲雄(学習院大学教授、福島県立博物館館長)
      内館牧子(脚本家)
      大西隆(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授)
      河田恵昭(関西大学社会安全学部学部長・教授、阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター長)
      玄侑宗久(臨済宗福聚寺住職、作家)
      佐藤雄平(福島県知事)
      清家篤(慶應義塾塾長)
      高成田享(仙台大学教授)
      達増拓也(岩手県知事) 
      中鉢良治(ソニー株式会社代表執行役副会長)
      橋本五郎(読売新聞特別編集委員)
      村井嘉浩(宮城県知事)

東日本大震災復興構想会議・専門委員会

部会長:  飯尾潤(政策研究大学院大学教授))
部会長代理:森民夫(全国市長会会長、長岡市長)
専門委員: 五十嵐敬喜(法政大学法学部教授)
      池田昌弘(東北関東大震災・共同支援ネットワーク事務局長、
       特定非営利活動法人全国コミュニティライフサポートセンター理事長)
      今村文彦(東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センター教授)
      植田和弘(京都大学大学院経済学研究科教授)
      大武健一郎(大塚ホールディングス株式会社代表取締役副会長)
      玄田有史(東京大学社会科学研究所教授)
      河野龍太郎(BNPパリバ証券経済調査本部長・チーフエコノミスト)
      西郷真理子(都市計画家)
      佐々木経世(イーソリューションズ株式会社代表取締役社長)
      荘林幹太郎(学習院女子大学教授)
      白波瀬佐和子(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
      神成淳司(慶応義塾大学環境情報学部准教授)
      竹村真一(京都造形芸術大学教授)
      團野久茂(日本労働組合総連合会副事務局長)
      馬場治(東京海洋大学海洋科学部教授)
      広田純一(岩手大学農学部共生環境課程学系教授)
      藻谷浩介(株式会社日本政策投資銀行地域振興グループ参事役)

この東日本大震災復興対策本部のほかに、
政府のその他2つの対策本部、すなわち、
「緊急災害対策本部」「原子力災害対策本部」があり、
この3つの対策本部で政府の震災対策が実行されています。
(3つの対策本部の守備範囲についてはコチラ及びコチラ

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東日本大震災復興対策本部令(政令182号)

内閣は、東日本大震災復興基本法(平成23年法律第76号)第17条第2項及び第23条の規定に基づき、この政令を制定する。

(現地対策本部の名称、位置及び管轄区域)
第1条 東日本大震災復興対策本部(以下「本部」という。)に置かれる現地対策本部の名称、位置及び管轄区域は、次のとおりとする。
名称 位置 管轄区域
岩手現地対策本部 盛岡市 岩手県
宮城現地対策本部 仙台市 宮城県
福島現地対策本部 福島市 福島県

(東日本大震災復興対策本部長補佐)
第2条 本部に、東日本大震災復興対策本部長補佐(以下「本部長補佐」という。)2人を置く。
2 本部長補佐は、内閣官房副長官又は関係府省の副大臣若しくは大臣政務官たる東日本大震災復興対策本部員のうちから内閣総理大臣が任命する者をもって充てる。
3 本部長補佐は、東日本大震災復興対策本部長(以下「本部長」という。)の命を受け、本部の事務局(以下単に「事務局」という。)の事務の総括及び事務局の職員の指揮監督に係る本部長の職務について本部長を補佐する。

(東日本大震災復興構想会議の議長及び委員の任期等)
第3条 東日本大震災復興構想会議(以下「会議」という。)の議長及び委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の議長又は委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 議長及び委員は、再任されることができる。
3 議長は、会務を総理する。
4 議長及び委員は、非常勤とする。

(会議の議長代理)
第4条 会議に、議長代理2人以内を置き、委員のうちから内閣総理大臣が任命する者をもって充てる。
2 議長代理は、議長を補佐し、議長に事故があるときは、その職務を代理する。議長代理が2人置かれている場合にあっては、あらかじめ議長が定めた順序で、その職務を代理する。

(会議の特別顧問)
第5条 会議に、特別の事項について助言を求めるため必要があるときは、特別顧問1人を置くことができる。
2 特別顧問は、卓越した識見を有する者のうちから内閣総理大臣が任命する。
3 特別顧問は、非常勤とする。

(会議の専門委員会)
第6条 会議は、専門の事項を調査させるため必要があると認めるときは、その議決により、専門委員会を置くことができる。
2 専門委員会は、当該専門の事項に関して優れた識見を有する者のうちから内閣総理大臣が任命する委員20人以内をもって組織する。
3 委員は、非常勤とする。
4 専門委員会に委員長を置き、当該専門委員会の委員のうちから会議の議長が指名する。
5 委員長は、当該専門委員会の事務を掌理する。
6 専門委員会は、その設置に係る調査が終了したときは、廃止されるものとする。

(事務局次長)
第7条 事務局に、事務局次長3人以内を置く。
2 事務局次長は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
3 事務局次長は、事務局長を助け、局務を整理する。

(事務局の参事官)
第8条 事務局に、参事官25人以内を置く。
2 参事官は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
3 参事官は、命を受けて、局務を分掌し、又は局務に関する重要事項の審議に参画する。

(現地対策本部事務局長)
第9条 現地対策本部事務局に、現地対策本部事務局長を置く。
2 現地対策本部事務局長は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
3 現地対策本部事務局長は、当該現地対策本部に係る現地対策本部長の命を受け、当該現地対策本部事務局の局務を掌理する。

(事務局長等の勤務の形態)
第10条 事務局長、事務局次長及び参事官並びに現地対策本部事務局長は、その充てられる者の占める関係のある他の職が非常勤の職であるときは、非常勤とする。

(本部の組織の細目)
第11条 この政令に定めるもののほか、本部の組織に関し必要な細目は、内閣総理大臣が定める。

(本部の運営)
第12条 この政令に定めるもののほか、本部の運営に関し必要な事項は、本部長が本部に諮って定める。

附 則

(施行期日)
第1条 この政令は、公布の日から施行する。

(職員の退職管理に関する政令の一部改正)
第2条 職員の退職管理に関する政令(平成20年政令第389号)の一部を次のように改正する。
別表第1内閣の項中
「国家公務員制度改革推進本部に置かれる事務局」を
「国家公務員制度改革推進本部に置かれる事務局
 東日本大震災復興対策本部に置かれる事務局 」に改める。

イギリス政府の内閣府が、
Open Public Service White Paper“と題するレポートを発表しました。
日本語に直訳すると「開かれた公共サービス白書」となります。

この白書の中で書かれているイギリス政府の狙いは、
これまで中央・地方政府が実施してきた「公共サービス」を、
民間企業が実施していくことができるよう、
政府のあり方や役割を転換をしていくという、
従来の「公共」の考え方を大きく改革していくことにあります。

なぜイギリス政府は、
公共サービスの実施主体を展開してく必要性を感じているのでしょうか。
白書の中で、政府はこう説明しています。

We are opening public services because we believe that giving people more control over the public services they receive, and opening up the delivery of those services to new providers, will lead to better public services for all.

1つ目の理由は、「公共サービスの質の向上」にあります。
公共サービスの提供者が多様になることで、より市民の求める公共サービスが
提供されていくようになるというものです。
競争原理に近い考え方です。

さらに、白書の中で、2つ目の理由についてこう説明しています。

in this economic climate, when times are tight and budgets are being cut to stabilise the economy and reduce our debts, opening public services is more important than ever – if we want to deliver better services for less money, improve public service productivity and stimulate innovation to drive the wider growth of the UK economy.

つまり、2つ目の理由は、「公共サービス提供コストの削減」です。
経済が停滞し、政府予算が厳しくなる中で、競争原理を活用することで、
生産性の向上、新たなサービスの開発などを進めていこうということです。

この動きは、社会の大きな転換を意味していると思います。

従来、公共サービスは政府によって企画・提供されてきました。
そして、人々は、生活や社会に必要だと思うサービスや取り組みを
政府や議会に働きかけて、公共サービスとして制度化してきました。

しかし今回の動きをシンプルに表現すると、
「何か要望がある場合は、政府に働きかけるのではなく、
自分で起業をして公共サービスを提供していってください。」
というものです。

このような新たな社会システムの中で、政府の役割は何か。
白書ではこう説明します。

we will give more freedom and professional discretion to those who deliver them, and provide better value for taxpayers’ money.

「政府は、公共サービス提供者により大きな自由と裁量権を与え、
より価値のあるものに公的資金を投じる」

すなわち、政府の役割を、
市民にとってどのようなサービスが必要かを考え提供することではなく、
市民が自由に公共サービスを考え提供できるように環境を整備すること
と定義しているのです。

さらにこの白書では、この「開かれた公共サービス」を支える仕組みとして、
新たな2つの提案をしています。

■ 委託制度

政府は、公共サービスを「広く社会に開く」としながらも、
市場の公平性やセーフティの観点から、
委託制度を導入するのが良い方策ではないかと提案しています。

■ 互助組織制度

政府は、公務員の社会的起業を促進するため、
従業員が経営と運営を同時に実行する「互助組織制度」を
提案しています。

 

この「委託制度」と「互助組織制度」については、
既存の社会起業家から賛否両論が出ているようです。
(出典はコチラ

委託制度については、政府の管理が厳しくなることに関する懸念。
互助組織制度については、新たなプレーヤーが増え、
市場競争が激しくなることに対する懸念。
特に、互助組織制度については、大手民間企業が、この互助組織制度を
活用して公共サービス市場に参入し、
体力のない既存の社会企業が廃業を余儀なくされることを懸念しているようです。

上記で説明してきた「公共サービスの政府離れ」の背景について、
僕は政府の財政難が大きな影響を及ぼしているのではないかと考えています。
ほぼすべての先進国は、現在深刻な財政難に陥っています。
歳出削減と公共サービスの維持・向上を同時に実現するためには、
公共サービスの運営効率を上げるしかありません。

政府の運営が「非効率」だと言われる中で、
公共サービス主体が政府でなくなっていく流れは、
今後他の国でも大きくなっていくのではと考えています。

7/20, 衆議院本会議で「2011年度第2次補正予算案」が可決されました。
(日経新聞の記事はコチラ

参議院での審議はこれからですが、
参議院での可決も見通されていること、並びに、
憲法上の規定により予算における「衆議院の優越」が認められていることから、
実質的に、衆議院で可決された予算案が成立したことになります。

2次補正予算の総額は1兆9988億円。
東日本大震災の復旧対策に要する予算が盛り込まれました。

財務省の資料によると、1兆9988億円の内訳は以下のようになります。

1.原子力損害賠償法等関係経費            2,754億円

(1) 原子力損害賠償法関係経費             2,474億円
○ 政府補償契約に基づく補償金支払い          1,200億円
○ 原子力損害賠償和解仲介業務経費等            13億円
○ 福島県 原子力被災者・子ども健康基金          962億円
○ 除染ガイドライン作成等事業               2億円
○ 放射能モニタリングの強化               235億円
○ 福島県外も含めた校庭等の放射線低減事業         50億円
○ 東電福島原発における事故調査・検証委員会経費      2億円
○ 「日本ブランド」復活のための対外発信力強化       53億円

(2) 原子力損害賠償支援機構法(仮称)関係経費      280億円
○ 原子力損害賠償支援機構(仮称)への出資金        70億円
○ 交付国債償還財源に係る利子負担            200億円
○ 東京電力に関する経営・財務調査委員会に必要な経費    10億円

2.被災者支援関係経費                3,774億円

(1) 二重債務問題対策                  774億円
○ 中小企業再生支援協議会を核とした相談窓口の体制強化   30億円
○ 中小企業基盤整備機構等が出資する新たな仕組み      1億円
○ 再生可能性を判断する間の利子負担の軽減        184億円
○ 震災により一旦廃業した中小企業者等対象の融資の拡充   10億円
○ 中小企業組合等共同施設等災害復旧事業
 (1次補正において155億円措置)             100億円
○ 被災地域産業地区再整備事業
 (1次補正において10億円措置)             215億円
○ 水産業共同利用施設の機器等(製氷機等)の整備の拡充
 (1次補正において18億円措置)             193億円
○ 木質系震災廃棄物等の活用可能性調査           1億円
○ 再生可能性のある医療・福祉施設に対する貸付債権の
 条件変更を推進するための福祉医療機構の財務基盤強化   40億円

(2) 被災者生活再建支援金補助金             3000億円
今般の東日本大震災に限った特例措置として、既に支給した支援金を
含め補助率(現行50%)を80%へ引上げ(20万世帯に対する支援金支
給に必要な規模)。

3.東日本大震災復旧・復興予備費            8000億円
東日本大震災に係る復旧及び復興に関係する経費であって、予見し難
い予算の不足に緊急に充てるためのもの。

4.地方交付税交付金                  5455億円
東日本大震災に係る被災自治体等の特別な財政需要に対応。その中で
東日本大震災復旧・復興予備費使用に係る地方負担、被災者生活再建
支援制度の地方負担に係る積増し分等にも適切に対応。

合計                        1兆9988億円

この第2次補正予算の財源については、国債を充てずに、
平成22年度(2010年度)決算剰余金により賄うこととされています。

この決算剰余金とは、予算を策定したときの想定と、
実際に予算年度を終えて決算を行った時の差額のことです。

財務省の資料によると、2010年度の決算剰余金は1兆4651億円。
そのうちの1兆4533億円を今回の補正予算のために投入し、
残りの5455億円は地方交付税交付金財源を投入するということです。

また、通常この決算剰余金は、財政法の取り決めにより、
半額以上を公債の償還に充てることが定められています。
今回の決算剰余金の補正予算への活用は、特例法を経て可能となります。
結果として、国債の償還に充てられる額が減少することとなります。
言うなれば、新たな借金はしないものの、
以前借りた借金の返済額が少なくなるということです。

政府を中心に、復興後の日本の未来についての検討が進められていますが、
今回の2次補正予算には長期プランのための予算は盛り込まれていません。

ヨーロッパ各国政府が太陽光発電に対する補助制度を縮小する中、
プライベートエクイティ大手KKRが、太陽光発電分野に大規模投資をする
という報道が、
7/18のFinancial Times紙(Web版)にありました。

KKRはニューヨークに本拠地を置く世界有数のプライベートエクイティー企業。
今回、ドイツの再保険会社Munich Reと共同で、
世界有数の太陽光発電企業のひとつT-Solar Global SA社が保有する
スペインとイタリアの太陽光発電プラント株式の49%を買収するという内容です。
買収される49%のうち、37%をMunich Reが、12%をKKRが保有します。

T-Solarは、イタリアとスペインに42の太陽光発電プラント(合計168MW)を
展開しています。

Broombergの報道によると、今回の買収の背景として、
3社すべてが太陽光発電事業を伸長させる狙いがあることを指摘しています。

T-Solarは、2014年までに太陽光発電量を、3倍の500MWにまで伸ばす計画があり、
今回の株式売却の目的はそのための資金調達をすることにあります。
また、KKRおよびMunich Reは、今後この事業への投資を拡大させる思惑がある
ようです。

特にKKRは、「再生可能エネルギー分野は最も可能性のあるインフラビジネスのひとつだ」
と言明しています。

太陽光発電事業の分野では、政府支援が減退する中、
企業による資金流入という新たな流れが始まってきているようです。